読書感想文は「本選び」が8割
読書感想文のコツと言われれば、何を思い浮かべますか? まず大前提として押さえておきたいポイントは、本選びの大切さについて。
読書感想文と聞くと、多くの方が「書き方」のようなテクニックを考えてしまうかもしれません。もちろん、そうした技術的な問題も大事です。しかし、その前にじっくり検討したい問題が、実は本選びです。
「本選び」が重要な理由とは
読書感想文において、技術論よりも本選びが大事な理由は、何なのでしょうか? 答えは簡単で、子どもが興味を覚えない本を読ませても、読書そのものが子どもにとって楽しくない経験になってしまうからですね。子どもが興味を覚えない理由は、
・子どもの読解力に合っていない
・子どもの興味関心と大きく外れている
といった原因が挙げられます。「この本について、書きたい!」と子どもが目を輝かせる本を選べるかどうか。この点こそが、読書感想文を上手に仕上げる、最初にして最大のポイントなのです。
「本選び」では大人の物差しを捨てる!
では、どのように子どもの読解力に見合った本、子どもの興味関心に沿った本を選んであげればいいのでしょうか。その問題を考える際には、大人の勝手な物差しで決めないという考え方が大切になります。
普段の本選びでは、もちろん子どもの好みで選ばせている親御さんも多いはずです。しかし、親子で読書感想文用の本を選ぶとなると、つい親も構えてしまい、「こんな本でいいの?」だとか「これは、読書感想文には向いていない」などと、余計な口出しをしてしまいがち。
しかし、何よりも大切にしたいポイントは、子どもが自分で興味関心を示すかどうか。読書感想文の本を選ぶために図書館や本屋に行ったら、まずは子どもが好きなジャンルの本を置いたコーナーへ、連れ出してあげてください。
先入観を捨て、子どもの興味に合わせて本売り場に行き、子どもの目が輝いた本をそのまま選ばせたほうが、子どもにとって書きやすい題材となることも。
感想文では「なぜその本を選んだのか」「本のタイトルのどこに惹かれたのか」を書くだけでも、その子独自の感性を言語化するきっかけになります。
読書感想文の書き方の手順とは
ここまでの段階で、読書感想文は本選びで8割決まると紹介しました。では、読書感想文の出来・不出来を決める残りの2割、書き方の問題については、どう考えればいいのでしょうか。
読書感想文を書くために3日分の時間を用意する
読書感想文に取り組みには、時間の確保の大事さが挙げられます。
単純に考えて、本を読む時間も必要ですし、読んだ内容をまとめて、書く時間も必要です。低学年の読書感想文であっても、読む作業に1日、内容のまとめに1日、書く作業に1日など、最低でも3日はかかります。高学年で分厚い本を選んだとなれば、さらに日数は必要です。
夏休みにはいろいろな宿題が出されるので、読書感想文は後回しになってしまいがちです。最悪、夏休みの最終日に取りかかるお子さんもいるかもしれません。しかし、1日で何とかなると思ったら大間違い。学年に合わせた形で、余裕を持ったスケジュール管理を行いたいところです。
親は子どもより先に本を読んでおく
子どもの読書感想文を助けたい場合には、親自身が該当本に目を通しておく必要があります。特に低学年の場合は、最初の読書を親子で一緒に行います。その作業の前に親としては本を読んでおき、子どもの反応を拾える状態にしておきましょう。
小学生読書感想文コンクール入賞作品を読んでみる
子どもに優れた読書感想文を書かせたいと思ったら、「優れている基準」を親が知らなければいけません。優れていると評価された小学生読書感想文コンクールの入賞作品をチェックしてみましょう。
当然、その手の入賞品には、読書感想文をうまく書くヒントがたくさん隠されています。まねするかどうかは別として、どのような読書感想文が「上手」と評価されるのか、事前に理解した上で、根拠のあるリードをしてあげたいですね。
書き始めるまでの流れ
ステップ1:まずは通読、再読して感想の付せんを張る
本を読む段階になったら、読み進め方にもポイントがあります。まずは一回、本全体を子ども本人に通読させて本全体の流れをつかんだら、再度読み返してみましょう。
その再読の際、子どもが何かを感じた部分に付せんを貼ります。付せんには子どもが感じた気持ちをメモしておくと、後で便利です。
ステップ2:付せんを貼った場所を親子で振り返り、感想を少し長いメモ書きに膨らませる
次は貼りつけた付せんを基に、親子でディスカッションしましょう。親が子どもに「インタビュー」をして、付せんにメモされた気持ちを掘り下げればいいのですね。「インタビュー」で出てきた気持ちを、今度は大きなサイズの付せんにあらためて書き記します。
ステップ3:構成を考えて、メモ書きを並べ替える
何枚かのメモが出来たら、今度はそれらを並べ替えます。並べ替える基準については後述しますが、基本的には学年別で読書感想文に求められる内容を漏れなく盛り込めるように工夫したいです。
原稿用紙の書き方をおさらいしてみる
メモの並べ替えによって大まかな構成が決まったら、書き始める前に一度、原稿用紙の正しい書き方を復習しておきましょう。確認しておきたい点は以下です。
<題名は2〜3字空けてから>
<段落の最初は1文字空けて>
<句読点やかっこは、行頭につけない>
書き出しの一文はインパクトある内容に
構成を考え、原稿用紙の書き方をおさらいしたら、書き出しの一文を工夫します。
<問いかけや会話文、印象に残った登場人物のセリフなどからはじめる>
<ダイレクトに自分の読後感を1行で表す>
<本を読んで、いちばん印象に残ったことから書き出す。他に、本を選んだ理由や読む前と読んだ後の印象の違いから入るのもOK>
といったテクニックが、これまでのHugKumの取材でも明らかになっています。
この書き出しについては、上で紹介した「小学生読書感想文コンクール入賞作品を読んでみる」の経験も生きてきます。書き出しに困ったら、過去の入賞作品を参考にしながら、いいアイデアを考えたいですね。
何を書けばいいのか。学年別・構成のポイント
上では構成を考える場面で、大きめの付せんを並べ替える作業を紹介しました。その並べ替えの作業(構成を考える)場面では、「この学年ならこの程度の内容は入れこみたいよね」といったポイントがあります。その内容を漏れなく盛り込めるように工夫してください。
1年生・2年生が読書感想文に盛り込みたい内容
1年生、2年生(低学年)の読書感想文に入れたいポイントとしては、以下の点が挙げられています。
・この本を選んだ理由
・本を読んでどんなところがおもしろかったか
・自分が主人公だったらどうするか
・自分の考え
この4つの要素を「始め」「中」「終わり」のまとまりに整理し、漏れなく書き進めていきましょう。
3年生・4年生が読書感想文に盛り込みたい内容
中学年(3、4年生)の場合は、以下のポイントを意識してください。
・この本を読む前の印象(タイトルからどう思ったかなど)
・読み終わって感じたこと、思ったこと
・いいと思ったところ(感動したところ)
・嫌い、悪いと思ったところ
これら4つのポイントを漏れなく盛り込みつつ、全体を「始め」「中」「終わり」のまとまりで並べて、スムーズに文章が流れるように調整してください。
5年生・6年生が読書感想文に盛り込みたい内容
高学年(5、6年生)の場合は、以下の点を盛り込む必要があります。
・疑問の提示
・本を読んでどう感じたか
・本の内容とリンクする自分の体験やエピソード
・自分の考え
これら4つの内容を、低学年、中学年のように「始め」「中」「終わり」でまとめてもいいですし、高学年の場合は「起承転結」の構成でまとめてもいいです。
さらにこの学年になると、読んだ本を褒めるばかりではなく、逆に面白くないと思ったり、期待外れに感じた理由を挙げてもOKです。
第68回青少年読書感想文全国コンクール(2022年)の課題図書
読書感想文では、子どもの好きな本を選んだ方がいいと冒頭で紹介しました。しかし、選択肢が多すぎて、子どもが決められない場合もあるかもしれません。
そんなときは、青少年読書感想文全国コンクールで出される課題図書から、読書感想文の題材を選んでみましょう。
例えば第68回青少年読書感想文全国コンクール(2022年)の課題図書を、幾つかピックアップしてみます。
小学校低学年の部
作・いとうみく、絵・丹地陽子『つくしちゃんとおねえちゃん』(福音館書店)
作・ミゲル・タンコ、訳・福本友美子『すうがくでせかいをみるの』(ほるぷ出版)
小学校中学年の部
作・村上しいこ、絵・中田いくみ『みんなのためいき図鑑』(童心社)
作・パトリック・スキーン・キャトリング、訳・佐藤淑子、絵・伊津野果地『チョコレートタッチ』(文研出版)
小学校高学年の部
作・大谷美和子、絵・白石ゆか『りんごの木を植えて』(ポプラ社)
著・井出留美『捨てないパン屋の挑戦:しあわせのレシピ』(あかね書房)
読書感想文の書き方まとめ
最後にもう一度、読書感想文の書き方をあらためて整理してみましょう。まずは大事なポイントとして、
・最初の本選びが大切
という考え方がありました。親の価値観で本選びに口出しをするのではなく、できるだけ子どもの興味がある本を選ばせてください。学校からの規定がなければ、物語でなく絵本や科学ものなど広いジャンルから選んでみましょう。
書く前の準備としては
・時間に余裕を持って始める
・親が事前に扱う本や、読書感想文コンクールの入賞作品を読んでおく
といったことをおすすめしました。そして実際に書く段階になったら、
・最初は通して読み、再読で子どもの心が動いた場所に付せんを貼らせる
・付せんの内容を基に感想を膨らませる
・感想のメモ書きを構成上の内容に応じて並べ替える
といった流れで取り組んでみます。
せっかくの機会ですから、子どもの大きな学びになるように、親子で読書感想文に楽しんで取り組めたらいいですね。
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構成・文/坂本正敬