三浦春馬追悼特集『コンフィデンスマンJP』から『君に届け』まで、三浦春馬が輝いている映画5選

PR

©2020「コンフィデンスマンJP」製作委員会

人気俳優の三浦春馬さんが7月18日に急逝し、日本中に悲しみが広がりました。今もなお、様々な記事がアップされていますし、事務所が立ち上げた追悼サイトには、三浦さんの死を悼む多くのファンの方々のメッセージが寄せられているかと思います。

三浦さんの死後、さまざまな著名人から哀悼のコメントが出されましたが、同じ事務所の先輩である福山雅治が「これから春馬くんが発表していくものがありますから、新しい歌、そして、新しい映像作品がありますから、応援してあげてください。今までよりもさらに深く観てあげてください」とラジオで、呼びかけられたのがとても印象的でした。

映像や音源に残っている三浦さんの輝きやみずみずしい存在感は、永遠に色褪せることはありません。実際に、改めて彼の出演作を見直してみると、その類まれな才能にうなるばかりです。そこで今回は、三浦さんの出演映画のなかで、個人的にプッシュしたい5本をまとめてみました。

『コンフィデンスマンJP』で振り切ったイケメン詐欺師役

©2020「コンフィデンスマンJP」製作委員会

やはり最初は、一番鮮度が高い、絶賛公開中の作品から参りましょう。三浦さんの振り切った演技が好評を博している『コンフィデンスマンJP -プリンセス編-』です。

三浦さんがキラキラとしたイケメンオーラを全開させている本作は、公開延期作が多いコロナ禍において、彼の麗しい表情を、スクリーンで堪能できる貴重な1作です。ちなみに、三浦さんの出演作でいえば、このあと『ブレイブ 群青戦記』、『太陽の子』、『天外者』などが待機中となっています。

ご存知、奇想天外な計画で、大金を騙し取る3人組の信用詐欺師“コンフィデンスマン”の活躍を描くシリーズで、三浦さんは、イケメン詐欺師のジェシー役を好演。前作『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』(19)で初めてこの役を演じた時、長澤まさみ、東出昌大、小日向文世が三浦さんについて「キラキラしていた」「オーラがすごかった」と絶賛していました。

確かに、長澤さん演じるダー子が、ジェシーとのラブシーンでらしくないほころびを見せますが、三浦さんが演じるジェシーのキラースマイルには、大いに説得力がありました。

ちょうど三浦さんが亡くなった翌週に、長澤さんたち登壇の初日舞台挨拶が予定どおり開催されましたが、そこは映画の作風を鑑(かんが)みてか、キャスト陣は三浦さんの訃報には敢えて触れず、気丈に最後まで笑顔を通しました。逆に、彼らの明るい表情からは、濃厚な撮影を共にした仲間だからこその強い哀悼や、しっかりと作品を世に送りたいという想いがひしひしと伝わった気もします。

本作では、三浦さんと長澤さんとのラブリーなダンスシーンもあります。大いに笑って、ドキドキハラハラして、最後は思いもよらぬ結末に心を動かされる本作を、ぜひたくさんの方に観てほしいです。

長澤まさみらが『コンフィデンスマンJP 』初日舞台挨拶に登壇「みんなそれぞれ、映画の中で頑張っています!」
コロナ禍で公開が延期されていたフジテレビ月9ドラマの劇場版『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が、ようやく7月23日に公...
『コンフィデンスマンJP プリンセス編』は、7月23日(金)より全国公開
監督:田中亮 脚本:古沢良太健 出演:長澤まさみ、東出昌大、小手伸也/小日向文世、織田梨沙、関水渚、瀧川英次、前田敦子、柴田恭兵、北大路欣也、竹内結子、三浦春馬、広末涼子、江口洋介…ほか
公式HP:https://confidenceman-movie.com/movie/

カモシカのように走るランナー役の『奈緒子』

このあとの4本は、どちらかというとフラットな三浦さんの魅力を堪能したい作品をセレクトしてみました。

三浦さんを、役者としてスターダムに上げた映画は、おそらく2007年度第31回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞した『恋空』(07)ではないかと思います。ケータイ小説を映画化し、大ヒットした本作は、三浦さんの死後、多くの方がチェックされたと思いますので、ここでは敢えて、同年に制作された『奈緒子』(07)をご紹介。

『奈緒子』は、坂田信弘原作・中原裕作画による、高校駅伝がテーマの漫画を実写映画化した作品で、上野樹里との共演作です。

長崎県波切島で、喘息の療養で訪れた12歳の奈緒子は、海が大好きな10歳の少年、雄介と出会います。ある日、海で溺れた奈緒子を助けるために、雄介の父が亡くなってしまうという悲劇が。その6年後、奈緒子(上野樹里)は、高校陸上界のスターとなった雄介(三浦春馬)と、偶然再会します。

互いに過去の葛藤を抱えながらも、惹かれ合う2人。なによりも、カモシカのように走るランナーの三浦さんが、本当にしなやかで美しい! 正直、彼の走りだけで“画”が持ちます。ちなみに、三浦さんは本作で、2009年度 第63回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞を受賞しました。

メガホンをとったのは、現在公開中の工藤遥の主演映画『のぼる小寺さん』の古厩智之監督。この監督は、みずみずしくも生々しい青春のもがきを、決してこねくりまわしたりせずに、鮮度のいいまま、上手に切り取れるんです。

長澤まさみ主演の『ロボコン』(03)や、成海璃子、北乃きい共演の『武士道シックスティーン』(10)などもそうですが、青春期真っ只中の新進スターから、もぎたての果実のようなフレッシュな魅力を引き出せる名手だと思います。

笑顔の出血大サービス映画『君に届け』

次にご紹介するのは、椎名軽穂の人気コミックを実写映画化した『君に届け』です。本作で三浦さんが演じているのは、みんなに愛される超イケメンで、しかも性格もいいという非の打ち所がない美少年、風早翔太役。本作は、三浦さんの笑顔の出血大サービス映画なので、ファンの方は必見です。

本作は、風早くんと、性格は良いけど地味で暗いヒロイン、黒沼爽子(多部未華子)の恋を描く、胸キュンラブストーリーですが、二次元でしか成立しそうにない物語に、リアリティーを与えたのは、三浦さんと、このあとも2度の共演を果たす多部未華子のスペシャルタッグならでは。

メガホンをとった熊澤尚人監督は、撮影当時、三浦さんの印象について「控えめでシャイな面と、清々しい男らしさを兼ね備えた俳優」と称し「相当プレッシャーを感じていたはずですが、現場ではまったくそんなそぶりを見せませんでした」と言っていました。常に周りを心配させないように気遣える三浦さんらしいふるまいですね。

きっと、原作ファンもきっと太鼓判を押したであろう、風早くん。本当にキラキラと星が瞳で瞬いているような三浦さんの笑顔は、見ていて心が洗われます。

繊細なアンサンブル演技が最高の『東京公園』

続いて、第53回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞した『 EUREKA(ユリイカ)』(00)などの青山真治監督作『東京公園』(11)をご紹介。本作では、三浦さんと、榮倉奈々、小西真奈美、井川遥らが、とても繊細なアンサンブルを繰り広げています。

三浦さんはカメラマン志望の光司役。彼の幼なじみで親友の元カノ・富永役を榮倉さんが、義理の姉・美咲役を小西さんが、光司の被写体となる謎の女性を井川さんが演じています。1つの出来事をきっかけにして物語が動き出しますが、それぞれに揺れ動く心のひだが、とてもナイーブに切り取られていきます。

4人とも、仰々しい大げさな演技は皆無で、実にナチュラルに見えますが、そこは、人間を生々しく描ける青山監督の成せる技です。とにかく4人とも見入ってしまうほどすてき。三浦さんは3人の魅惑的な女優陣と、確かな演技力でわたり合い、無防備でありつつも、エモーショナルな表情を魅せています。

コロナ禍で観ると心に響く『アイネクライネナハトムジーク』

最後にご紹介するのは、伊坂幸太郎にとって初の恋愛小説となった同名連作短編集を映画化した『アイネクライネナハトムジーク』(19)です。この映画は、『君に届け』以来、3度目の共演となった多部未華子との共演作です。多部さんとは4年ごとの共演だったので「まるでオリンピックのような関係」だと、三浦さんは舞台挨拶で話していました。

三浦さんが演じたのは、劇的な出会いを夢見る、平凡な草食系の青年、佐藤。多部さん演じる本間紗季と偶然出会い、恋に落ちるという役どころです。三浦さんは当時、「僕も佐藤のようにわりと穏やかなほうだし、人の話を最後まで聞くタイプだと思うので、すごく共感できました」と、共通点を見出しながら、演じたことをインタビューで明かしていました。

本作は、2人の恋を軸に、思いがけない巡り会いの連鎖が10年にわたって描かれる群像劇です。見終わると、普段の何気ない日常が、なんと尊いものなのかと思わずにはいられません。特に、コロナ禍において観てみると、すぐそばにある当たり前の幸せを大事にしたいと痛感させられます。

ちなみに、メガホンをとった今泉力哉監督は、三浦さんの急逝にショックを受け、「弱音を吐かない人のそばにいてあげてください。弱音を吐ける人はまだ大丈夫かもしれない」と、日々頑張りすぎている人に寄り添うよう、警鐘を鳴らしました。やはり、この現場でも、三浦さんはなに1つ、不安な胸の内を漏らすことはなく、与えられた役柄に対して真摯に向き合っていたんだと思います。

言うまでもなく、本当にすばらしいスターだった三浦さん。亡くなったあと、彼の優しくて懐の深いお人柄が忍ばれるエピソードも次から次へと出てきました。

いまは、ただ、心から三浦さんのご冥福をお祈りしつつ、やはり彼が残した、すばらしい作品を心から堪能してほしいです。

文/山崎伸子

編集部おすすめ

関連記事