1,2,3歳が肝心!幼少期の「子供の味覚」の育て方をフードアナリストが伝授

「1日3食きちんと」と思っていても、なかなか理想通りにはいかないもの。そんな忙しい毎日の中、子どもの味覚を育てるには、どんなことを心がければよいのでしょうか? 無理なく取り組める工夫のポイントをご紹介します!

離乳期・幼児期にいろいろな味を知ろう

赤ちゃんは生きるために必要な甘味や脂肪の味などを「おいしい」と感じ、苦味や酸味は「体に害をもたらす危険な味」と感じて嫌がります。ですが、さまざまな味を味わう経験を重ねるうちに、「この味もおいしいかも」と思えるものが増えていきます。このように、複雑な味のおいしさを知り、大人の豊かな味覚に近づいていくことが「味覚が育つ」ということ。そのためには、離乳期・幼児期のうちから、たくさんの食材の味に親しむことが大切です。

色・におい・食感や食べる環境も大切

おいしさは、食材の色や形、食感などにも左右されます。幼いころからみそ汁を飲む習慣があると、かつおだしのにおいをかぐと安心するというように、心地よい記憶と結びついたにおいがおいしさを引き立たせることも。また、公園で食べるおにぎりはおいしい、食事中に叱られると食欲がなくなるなど、食べる環境が与える影響も大きいといえます。味以外の要素にも気を配り、子どもが食事を「おいしい」「楽しい」と感じられる工夫をしていきましょう

味にはどんな種類がある?

舌で感じる味は、基本的に次の5つに分類されます(国によっては「うま味」の代わりに「辛味」を入れることも)。この5つの味を「五味」といい、子どもは0歳のころからこれらの味のほとんどを識別できるといわれています。

 

甘味

エネルギー源になる「糖分」の存在を知らせる味なので、「体に必要なもの」とポジティブに受け止められます。ただし、とりすぎると、甘味に対する味覚が鈍ってくるので注意。

塩味

血液をはじめとする体液のバランスを取るために必要な「ミネラル」の存在を知らせる味。甘味と同様に、塩辛いものをとるのが習慣になると、塩味に対する味覚が鈍ってきます。

酸味

熟していない果物や腐ったものを食べたときに感じる味なので、「食べられない」という危険信号として受け止められやすいです。おいしく感じるには、さまざまな味に親しむ経験が必要があります。

苦味

毒があるものの多くが苦いことから、子どもは「毒があるかもしれない」という危険を感じやすい味。不快な味だと感じて吐き出すことは、毒から身を守ることにもつながる。

うま味

体をつくる「たんぱく質」の存在を知らせる味。肉・魚・かつお節にはイノシン酸、昆布やチーズにはグルタミン酸、干ししいたけにはグアニル酸といったうま味成分が含まれています。

 

子どもの味覚とよい食習慣を育てる 4つのポイント

1 いろいろな食材の味を経験させる

いつもの味つけで食材を替えてみる

子どもはいろいろな食材の味を経験することで、味覚の幅を広げていきます。無理なく料理のレパートリーを増やすコツは、いつも通りのレシピを違う食材で作ってみること。例えば、肉じゃがを作るなら、じゃがいもの代わりにかぼちゃ、豚肉の代わりに牛肉、玉ねぎの代わりに長ねぎというように使う食材を替えてみると、料理の手間を増やさずにいろいろな食材を食卓に出すことができます。

 

2 和食ベースでなるべく薄味に

かつおだしのうま味を活用しよう

味つけはあまり濃くせずに、薄味にしたほうが食材のもつ本来の味を楽しめます。味つけに悩んだときは和食をベースにして、かつおだしを活用しましょう。かつおだしのうま味は、くり返し味わうことでおいしさがわかるようになります。かつお節を粉状にした「だしパック」を使ってもいいですし、時間に余裕があるときはかつお節と昆布の両方を使ってだしを取ると、うま味の相乗効果が7倍になるといわれています。

 

調味料を加えるときはひと工夫しょうゆやソースなどは大さじ1に対して大さじ2分の1の水を加え、薄めてから使うと塩分濃度をおさえられます。味つけをマイルドにするには、ドレッシングに油、マヨネーズに無糖ヨーグルト、ケチャップにカットトマトを足すのも効果的です。

 

3栄養バランスは食事+おやつでカバー

調味料も含めて1日25品目を目安に

調味料も1品目と数えると、普段通りの食事でも25品目をクリアできることが多いので、それほど神経質になる必要はありません。ただし、苦手な食材にチャレンジする機会を作れるように、食べないものも調理法を変えてくり返し食卓に出すことを心がけて。栄養バランスは、昼に外食でパスタを食べたなら、家での夕食は野菜や肉がとれるメニューにするというように1日の中で考えれば大丈夫です。おやつは食事で足りない栄養を補うものと考え、食べる時間と量はおうちの方がコントロールしましょう。

 

おすすめのおやつおにぎりなど炭水化物を補えるもののほか、カルシウムがとれるチーズ、ヨーグルト、塩分無添加の煮干しもおすすめです。ゼリーや100%果汁を凍らせたシャーベットなど、「つるん」「シャリシャリ」といった普段の食事では味わいにくい食感のものも取り入れてみましょう。

 

4食事を楽しいと感じられる工夫を

一緒に料理をすると食べる意欲もアップ

食事が楽しい記憶と結びつくと、子どもは食べること自体を好きになります。食事中は楽しい雰囲気づくりを心がけ、苦手なものがある場合も無理強いせずに「一口だけ食べてみよう」とやさしく声をかけましょう。無理のない範囲で料理のお手伝いをお願いすると、苦手な食材に興味がもてることも。「ありがとう」と感謝を伝えると、そのときの達成感がいろいろなものを食べてみようという意欲につながります。

 

子どもと楽しむキッチン食育

1歳から

  • ポリ袋で具材をもむ、混ぜる(ポテトサラダ・たたきキュウリなど)
  • 野菜をちぎる
  • おにぎりを丸める
  • パンやピザをこねる

 

2歳から

  • お米をとぐ
  • 大人が手を添えて包丁で切る
  • ホットケーキの材料を混ぜて焼く

※ごま和えを「和える」など、仕上げの工程を任せると達成感につながる。

 

年齢別食事のときに心がけたいこと

1歳 初めての食材はおうちの方も一緒に

1歳半ごろまではいろいろな味を受け入れやすい時期なので、さまざまな食材を食卓に出し、食べられるものを増やしていきましょう。遊びと食事の区別をつけていくことが大切なので、これまでバウンサーに座って食べていた場合はテーブルで食べることを習慣に。おうちの方が「おいしいね」と言って一緒に食べると、初めての食材もあまり警戒せずに「食べてみよう」と思えるようになります。

2歳 ちょっとした工夫が食べるきっかけに

自我が芽生え、好き嫌いが増え始める時期です。それまで食べていた食材を嫌がるようになることもありますが、「今はそういう時期なんだ」と考えましょう。口に入れてすぐに出してしまう場合は食感が苦手、かんでから吐き出す場合は味が苦手なことが多いです。何を苦手としているのかをよく観察して、食材の切り方や調理法、味つけを変えてみると、食べるきっかけになることもあります

3 かたいものを食べてしっかりかむ習慣を

いちばん奥の第二乳臼歯が生えてきたら、しっかりかんで食べることを習慣に。ごぼうなどの繊維質の野菜や、せんべいなどのかたいものを食べるときには、「かんだときにどんな音がするかな?」とゲーム感覚で質問してみるのも効果的です。自分でできたという経験が自信につながる時期なので、「自分で食べられたね!」「嫌いだったのに食べられたね!」とほめることも心がけましょう。

「困った!」を解決 食事のお悩みQ&A

Q:食事中の立歩きや遊び食べが続いて困っています・・・。

A:食事時間は20~30分を目安に、全体の3分の2程度を食べていれば、遊び始めた時点で切り上げてかまいません。海苔やしらすなどを加えたり、おうちの方が座る位置を変えたりすると、気持ちが切り替わって食べられることも。食事中は椅子に取りつけるベルトを使うと、座って食べる習慣が身につきやすくなります。

 

Q:他の子より小食で、食べる量がなかなか増えません。

A:食べる量には個人差があるので、健診で発達について特別な指摘がなければ、他の子と比べて心配する必要はありません。盛りつけは少なめにして、「あと一口だけがんばろう」という声かけをくり返しましょう。具だくさんのハンバーグやスープなど、一品でたくさんの食材がとれるメニューにすると栄養が偏るのを防げます。

 

Q:ピーマンが苦手で、見るだけで嫌がります。細かく刻んで食べさせるべき?

A:苦手なものを細かく刻むのは、見た目や食感を変えるうえで効果的な方法です。大切なのは、「おいしくなかった」という不快な経験を、快感と結びついた新しい経験で塗りかえること。細かく刻んで食べられたら、「ピーマンが入っていたのに食べられたね!」とほめて、「食べられた!」という自信につなげていきましょう。

 

Q:魚をもっと食べさせたいのですが、よい方法はありますか?

A:魚のくさみを取るには、塩をふってペーパーでふき取ってから調理を。焼き魚のパサパサ感が苦手なら、薄めた煮汁で5分ほど煮て、汁ごといただくと魚の栄養がしっかりとれます。食感が肉に似ているカジキをステーキ風に焼くのもおすすめ。鮭や白身魚は、ごはんなどをつなぎに使ってハンバーグにするとモチモチ感が出て食べやすくなります。

 

Q:夫が濃いものやジャンクフードが好きで、子どもへの影響が心配です。

A:大人は味の好き嫌いのほかに、「これはこういう理由で体によい」といった情報も参考にして食べるものを選ぶ傾向があります。「好みだから仕方ない」とあきらめずに、薄味やヘルシーフードのよさをくり返し伝えていきましょう。すぐにジャンクフードがやめられない場合も、子どもの前では食べないことを約束してもらえるといいですね。

 

Q:朝はパンなので、洋食になりがち。どうすれば和食メニューを増やせますか?

A:食材や調理方法は普段と変えずに、コンソメの代わりにかつおだしで味つけをしてみましょう。だしを煮出すのが大変なときは、お茶パックに入れたかつお節や昆布を水につけて冷蔵庫で一晩寝かせる「水出し」にすると手間を省けます。みそ汁は和風パスタやパンのメニューとも合わせやすいので、スープをみそ汁に替えることから始めるのも一つの方法です。

 

Q:子ども用の食器はどんなものを選べばいい?

A:底が丸いとスプーンですくいにくいので、底が角になっていて、深さは2㎝程度あるものを選びましょう。陶器など重いもののほうが安定しやすいです。プラスチックの食器を使うときは、すべらないように食器の下に敷くマットも用意して。食が細い子は、好きなキャラクターの食器で食事の楽しみを増やすのもいいですね。

 

Q:お惣菜を買うときや外食で気をつけることは?

A:一般的にお惣菜や外食は味つけが濃いので、塩分濃度を下げることを心がけて。お惣菜は、煮汁を捨てる、洗う、水で薄めるほか、豆腐・蒸し野菜・タレなしの納豆などを混ぜると薄味になって栄養価もアップ。外食は行きつけのお店をつくって「油や塩は控えめで」とお願いできるとベストです。

 

 

とけいじ 千絵先生

1級フードアナリスト◯(日本フードアナリスト協会認定講師)。「味覚」に特化した食育に取り組み、「子どもの味覚の育て方」の講座などを開催。

 

 

 

イラスト/ヤマムラ エツコ デザイン/平野 晶 取材・文/安永美穂 構成/童夢 ベビーブック 2018年10月号

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