原作の連載開始から50年を迎えた『ドラえもん』。親子二代はもちろん、三代にわたって楽しんでいる家庭も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する本は、そんな読み継がれているドラえもんのコミックスから著名人10人がもっとも影響を受けた作品を紹介する「おとなになるのび太たちへ ~人生を変える『ドラえもん』セレクション~」。ドラえもんが大好きなキッズや今でもドラえもんが大好きな大人にもオススメの1冊です。
登場するのは夢を叶えた10人の大人たち
この本に登場するのは、思春期の子どもたちが憧れる職業についた10人。俳優の菅田将暉さん、宇宙飛行士の向井千秋さん、声優の梶 裕貴さん……。夢を叶えた人たちの人生や大切な体験を、たくさんのドラえもん作品の中から選んだ1話を通して伝えてくれます。
著名人10人と、選んだドラえもん作品は?
・猪子寿之さん/アート集団チームラボ代表「アスレチック・ハウス」
・梅原大吾さん/eスポーツプレイヤー「あやとり世界」
・梶 裕貴さん/声優「さようなら、ドラえもん」
・亀山達矢さん(tupera tupera)/絵本作家「オモイコミン」
・菅田将暉さん/俳優「サンタメール」
・田村 優さん/プロラグビー選手「なかまいりせんこう」
・辻村深月さん/小説家「ぼくよりダメなやつがきた」
・なかしましほさん/お菓子研究家「だいこんダンスパーティー」
・はなおさん(はなおでんがん)/YouTuber「思い出せ!あの日の感動」
・向井千秋さん/宇宙飛行士「野比家が無重力」
それぞれの著名人のエピソードを読み、普段、何気なく子どもたちが見ているドラえもんに、こんなにもたくさんの大切なことが隠れているんだ!と気づかされ、驚きました。
心にすごく刺さったエピソード
筆者は、YouTuber「はなおでんがん」のはなおさんの選んだ『思い出せ!あの日の感動』というお話に特にグッときました。
『思い出せ!あの日の感動』のストーリー
何事にもやる気が出なくなってしまい、学校を退学すると言い出したのび太。それを心配したドラえもんが「ハジメテン」という、みることなすことが、まるで初めての経験のように感動できる薬をのび太に飲ませます。
これをきっかけに「最初はどんなことでも新鮮な感動があったのだな」と改めて思い出し、のび太は次の日「ハジメテン」の力を頼ることなく、自分の意志で学校に行く、という前向きなお話です。
同じことの繰り返しの日々を変えるには?
この話を例えに、はなおさんは、今、自分が生きている大人の生活は「今日あったことのほとんどが昨日あったことと同じことの繰り返し」で、成長とともにいろんなことを経験していくことは素晴らしいことだけれど、逆に新しく知ることがどんどん少なくなってしまうと語っています。
大切にしていることは「子どもでいること」
YouTuberというのは、見る人を楽しませるために、自分が1番楽しんでいないといけない職業。昨日と同じことの繰り返しのありきたりの生活を送ることとは真逆の仕事です。
だからこそ、はなおさんは、「子どもでいること」を常に大事にしているそうです。つまり、子どものように好奇心旺盛で、いつでも新鮮な気持ちを忘れないでいることは、まさに「ハジメテン」を飲んだときののび太の気持ちを大人になっても保ち続けているってことですよね!
私だって、今からでも遅くない!
私も、1日があっという間で、同じような毎日を7回繰り返すことで1週間になり、それを4回繰り返して1か月。
追われるように過ごすルーティーンのような日々だったので、はなおさんの言葉が胸に刺さりました。漫画の中ののび太のように、ドラえもんに「ハジメテン」を貰うことはできないけれど、せめて自分の生き方によって、「ハジメテン」を飲んだときのような「感動を持ち続ける心を持つ努力」をしながら生きることができたら、もっと毎日が楽しくなるのではないかなと思うことができました。今からでも遅くない!日々輝かしてやる~!
「いいのび太」を育てるには?
筆者は、子育てで、ついつい「勉強しなさい」「いつまでゲームしているの!」など型にはまった注意をしてしまいます。もちろん子どもたちの為に注意しているつもり。
しかし、この本で紹介されているいろんな職業の方の幼少時代や、どのようにしてその職業なるに至ったかなどのエピソードを知ると、私の子どもたちへの声のかけ方は「いいのび太」を育てることができているのだろうか?と顧みるきっかけになりました。
のび太を育てる側の人たちへのメッセージもある
子どもの興味や、何かをやりたいと思う心をできるだけ摘まない声掛けをすることが、思いがけない将来の夢に花を咲かせるのでしょう。
昔は、YouTuberやプロゲーマーなんていう職業は想像もできなかったですよね。10年後に今では想像もつかない職業が爆誕していても不思議ではありません。
そんなことを考えるきっかけにもなった『おとなになるのび太たちへ』は、夢と希望に満ち溢れた、これからおとなになるのび太たちはもちろん、のび太を育てる側の人たちにも手に取っていただきたい1冊だなと思います。
はなおさん以外の方々のお話も、思わず、ちぎれそうなほど首を縦にふってしまいそうなエピソードばかり。また、子どもの頃みた、懐かしい作品もたくさん登場するのでノスタルジックな気分にも浸れますよ。
子どもたちが憧れる職業についた10人のおとなが、てんとう虫コミックス『ドラえもん』から、選りすぐりの1話をレコメンド!
夢をかなえるために、人生で必要なことを教えてくれます。
【オマケ】おとなになるのび太にインタビューしてみた(笑)
筆者の息子は、中学生になった今も毎週録画してドラえもんを見ている大のドラえもん好き! この機会に、「一番好きな話は?」「その理由は?」とまさに、おとなになるのび太へインタビューしてみました。
息子が一番好きな話は『おせじ口紅・悪口紅』
息子は『おせじ口紅・悪口紅』のお話が一番好きだそうです。
おせじ口紅は、塗ると口が上手になって周りの人を喜ばせ、悪口紅はその反対。塗るとついつい相手の悪口を口走ってしまうという道具。
その理由は「相手を気持ちよくさせたいから」
なぜその話が好きなのか、と聞いてみると、知らずに悪口紅を塗ったママがパパにケチョンケチョンの悪口をいってしまう、その悪口のセリフがめちゃくちゃ面白かったからだそう(苦笑)。
息子は、「ボクはあまり積極的に相手に飛び込んでいける性格ではないから……。おせじ口紅があれば、相手を気持ちよくさせてあげることができ、将来ハッピーに仕事をすることができると思う」
なるほど……!
やはり『ドラえもん』は、そのほのぼのとした作風の裏に子どもの夢や希望を育てるメッセージが隠された素敵な作品なんだなと改めて実感しました。
内緒にしていましたが、筆者も、30年前はしっかり、ドラえもん大好きな「おとなになるのび太」だったんです(笑)
30年後、大人になった息子が自分の子どもとこんな話をしているのでしょうか。タイムマシンがあったら見に行ってみたいものです。
文/ふじおなおこ