生まれたばかりの赤ちゃん、いわゆる新生児がせきをすると心配になるものです。多少の知識や経験があったとしても素人の判断は、赤ちゃんの体を危険にさらすかもしれません。
この記事では、医師監修のもと、新生児のせきについて詳しく解説していきます。音で聞き分ける新生児のせきの原因と対処法をはじめ、その他の症状を伴うせきの原因と対処法、新生児のせきの治療法をチェック。また、赤ちゃんのせきを緩和する自宅でできるケア法もご紹介します。
新生児のせきは心配
新生児とは、生後28日未満の赤ちゃんを指しています。この時期に、特に生まれたての小さな赤ちゃんがせきをしていると心配になるものです。ここではまず、新生児が咳き込んだり、むせたりしやすい理由を解説していきます。
新生児がせき込みやすい、むせやすいのはなぜ?
新生児がせき込みやすかったり、すぐにむせたりてしまうのはなぜなのでしょう?その主な理由は、生まれたばかりで慣れない呼吸や刺激に気道が敏感に反応してしまうことや、食道括約筋といわれる胃と食道をつなぐ部分が未発達だからといわれています。
新生児のせきは特に注意が必要
乳幼児や子どものせきと新生児のせきは、区別しなければいけません。すでに上の子がいたとしても「長男は大丈夫だった」「長女は問題なかった」などと同じように判断するのは、非常に危険です。新生児のせきは、特に注意が必要であることを認識しておきましょう。
音で聞き分ける!新生児のせきの原因と対処法
新生児のせきは、ある程度ならその音で原因を判断することが可能です。ここでは、音で聞き分ける新生児のせきの原因と対処法をご紹介します。ただし、ここでご紹介する以外にも原因が考えられるため、できるだけ早く病院での診察を受けるようにしてください。
コンコンという乾いたせき
空気が乾燥しているときにほこり・チリなどを吸い込み、コンコンという乾いたせきが出ることがあります。この場合、新生児が体調を崩さないように加湿器で室内の湿度を調節する、温度を上げてみるなどしてください。
ゼロゼロ・ゴボゴボという湿ったせき
新生児がゼロゼロ・ゴホゴホという音のせきをする場合、のどに痰(たん)がからんでいる可能性があります。風邪、インフルエンザ、肺炎、喘息性気管支炎(ぜんそく)などが考えられるため、早く病院の診察を受けましょう。
ケンケンというかすれたせき
苦しそうにケンケンというかすれたせきをするときは「急性喉頭炎(クループ症候群)」が疑われます。炎症を起こしたせいで喉が腫れてしまい、呼吸困難を起こす危険があるため、これも早めの受診が必要です。
せき払いをする、たまに咳をする場合は?
唾液の分泌量が多い新生児は、唾液がのどに溜まりやすくなります。そのため唾液がのどや気道を刺激し、せき払いをすることがあります。基本的にはその様子を観察し、食事や睡眠などの生活に支障が出る場合は、病院での診察を受けてください。
その他の症状を伴うせきの原因と対処法
単純にせきをするだけではなく、鼻水やくしゃみといった症状が出る場合もあります。ここからは、他の症状を伴う新生児のせきの原因と対処法を見ていきましょう。
鼻づまりがある、鼻水が出る
鼻づまりや鼻水を伴うせきは、風邪をひいている可能性があります。鼻が詰まりやすくなるため、こまめに鼻づまりを吸い出してあげたり、鼻水をとってあげたりしましょう。この症状の場合、できるだけ早く病院に連れて行くことをおすすめします。
くしゃみをする
新生児がくしゃみをする場合、空気の乾燥や寒さ、太陽光を感じたなど、鼻が敏感なために起こる生理現象が原因といわれています。加湿器をつけ、部屋の温度を調節してあげましょう。また場所を暗所に移動したり、カーテンを閉めたりしてみるのも効果的です。
痰が出る、痰がからんだせきが続く
痰(たん)が出たり、痰がからんだせきが続くようなら、急性気管支炎やRSウィルス感染症が考えられます。コンコンというせきからゼロゼロ・ゴボゴボ、ケンケンという苦しそうなせきに音が変わる恐れがあるため、早く病院で受診してください。
新生児のせきの治療法
ここからは、新生児のせきが酷い場合に、病院での診察に伴ういくつかの治療法をご紹介します。せきを引き起こす原因によってそれぞれ治療法も異なりますが、症状によっては、新生児でも投薬することがあります。
内服薬
病院ではせきの原因(症状)を診察し、場合によっては新生児にも内服薬を使うことがあります。風邪をひいているようであれば咳止めや解熱剤などを使い、必要に応じては、抗生物質を投与することもあります。自宅の場合、授乳時に合わせて処方された薬を飲ませます。
鼻腔吸引
鼻水や鼻づまりが原因となるせきに対しては、鼻腔吸引を行います。鼻腔吸引とは、鼻の中に詰まった鼻水を鼻水吸引器を使い、吸い出してあげる治療法です。特に鼻づまりにはこの鼻腔吸引が効果的であり、ポピュラーな治療とされています。
つらいせきを緩和!自宅でできるケア法
新生児のせきは、治るまでに時間がかかることもあります。鼻水やくしゃみを伴うせきや痰がからむなどのせきのほか、夜にだけせきが出続けるケースも。ここでは、そんな赤ちゃんを少しでも楽にしてあげるため、自宅でできるせきのケア法をご紹介します。
空気の管理
新生児のせきを緩和するため、空気の温度・湿度・換気の管理に注意する必要があります。室温は25度~28度ほどの一定温度を保ってください。室内が乾燥すれば、赤ちゃんのデリケートな気道も乾燥してしまい、せきが出やすくなってしまいます。加湿器などを使い、室内の湿度を60%以上にすることが好ましいでしょう。また、常に新鮮な空気で呼吸できるように換気を怠らないようにしてください。
体勢を変えてあげる
赤ちゃんの体勢を変えてあげることも、せきを緩和するために効果的なケア法です。睡眠中にせき込む場合、上半身が高くなるように寝かせてあげてください。また激しく咳込む場合、体を起こしたり、たてに抱いてあげましょう。衣類をゆるめ、ゆっくりと背中をさすったり、優しくトントンとタッピングしてあげたりすれば、赤ちゃんの呼吸が楽になります。
こまめな水分補給
こまめな水分補給も、せき込む新生児に対して自宅でしてあげられる大切なケア法のひとつです。水分をたっぷりと与えることにより、せきの原因になる痰がきれやすくなります。そして気道の粘膜がうるおえば、せき込みも治まりやすくなるでしょう。また脱水状態を避けるため、授乳の間隔に気を配ることを忘れてはいけません。
元気があれば沐浴を
新生児の体力に問題がなければ、沐浴(もくよく)がおすすめです。鼻づまりが原因のせきには、効果があるといわれています。沐浴は1日に1回が基本ですが、排便や汗などで汚れた場合は1日に数回行ってもかまいません。ポイントは、毎日ある程度決まった時間に沐浴させること。38℃以上の発熱がある場合は、沐浴を止めるようにしてください。
新生児のせき、気になるときは早めに受診を
生まれたばかりの新生児は、体が敏感なうえに未発達のため、せき込みやすくむせやすい状態です。ある程度なら、せきの音を聞き分けることで、その原因や対処法を探ることができます。また空気管理の徹底やこまめな水分補給、体勢を変えてあげることにより、せきの症状を緩和することも可能です。しかし素人の判断やインターネットで飛び交う信憑性のない情報に惑わされると、赤ちゃんを危険にさらすことにつながりかねません。気になるときは、できるだけ早めの受診を心がけるようにしましょう。
記事監修
野尻 紀代美
産業医としては、労働衛生コンサルタントとして10社のクライアントを定期訪問。労働安全衛生上のリスクマネジメントや講演、ストレス・マネジメント講座などを行う。京都大学と共同でのベンチャー起業者に対するメンタルヘルスチェックや講義も、年に4回行っている。
〈資格〉
日本内科学会所属、内科認定医、日本呼吸器内科学会所属、日本産業衛生学会所蔵、労働衛生コンサルタント(産業医)
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文・構成/HugKum編集部