長野を代表する観光名所「善光寺」は何が有名? 歴史や見どころを解説

善光寺は、長野県を代表する観光スポットの一つです。「遠くとも 一度は参れ 善光寺」といわれ、昔から多くの参拝者が訪れてきました。歴史の表舞台にもたびたび登場した善光寺の歴史や見どころ、さらにはおすすめの参拝コースを紹介します。

善光寺とは?

長野県の観光スポットとして、必ず名前が挙がるのが「善光寺(ぜんこうじ)」です。「牛に引かれて善光寺参り」などの故事まで残る善光寺とは、どのようなお寺なのでしょうか?  概要や歴史を見ていきましょう。

長野市に位置する寺院

善光寺は、長野市にある約1400年もの歴史を持つお寺です。境内には、多くの国宝・重要文化財があり、見どころが豊富にあります。

日本最古の仏像といわれる「一光三尊阿弥陀如来(いっこうさんぞんあみだにょらい)」をご本尊に持ちますが、特定の宗派には属していません。無差別平等の救済を説く寺院であることから、あらゆる階層・性別・宗派の人に信仰されてきました。

また善光寺といえば、お堂の地下に下りる「お戒壇巡り(おかいだんめぐり)」もよく知られています。

お戒壇巡りとは、ご本尊の真下を通る真っ暗な回廊を歩いて「極楽の錠前(じょうまえ)」に触れることです。錠前に触れた人には、ご本尊が極楽浄土を約束してくれるといわれています。

参考:善光寺

善光寺の歴史

善光寺のご本尊は、仏教伝来(552年)の際に、百済(くだら)からもたらされた、日本最古の仏像です。

一時は、廃仏派によって廃棄されましたが、大和朝廷の役人といわれる本田善光(ほんだよしみつ)が長野に連れ戻してお祀(まつ)りしました。「善光寺」とは、644(皇極天皇3)年に伽藍(がらん)が造営された際、彼に因(ちな)んで付けられた名前なのです。

時代が進んでも善光寺信仰はあつく、信仰者には、時の権力者も多く含まれています。戦国時代には武田信玄や豊臣秀吉のように、善光寺を組織ごと別の地に移して信仰する者もありました。

甲斐善光寺(山梨県甲府市)。開基は武田信玄。川中島合戦の折、信濃善光寺の消失を恐れた信玄が、1558(永禄元)年に御本尊善光寺如来像など諸仏寺宝類を奉遷したことに始まる。武田氏滅亡後、織田・徳川・豊臣氏を転々としたが、40年後に信濃へ帰座された。

 

善光寺が、現在の場所に戻ったのは1598(慶長3)年のことです。その後、江戸幕府が開府して平安な世の中になったため、より多くの参拝者が訪れるようになります。

「一生に一度は善光寺参り」という言葉からも分かる通り、江戸時代には善光寺参りが一般大衆の間で人気となりました。現在も全国各地から参拝者が集まり、年間参拝者数は700万人にも上るといわれています。

善光寺の山門へ続く「仲見世通り」(長野市)。石畳(いしだたみ)の両脇に商店が並び、食事やお土産を購入できる。この通りから本堂まで続く石畳は、7,777枚あるといわれる。

善光寺の見どころや魅力

善光寺観光は、滅多に見られない国宝や重要文化財を間近に見るチャンスです。子どもに説明してあげられると、歴史に興味を持つきっかけにもなるでしょう。

必見のスポットや、善光寺ならではの魅力を紹介します。

国宝指定の「本堂」

高さ約29m・奥行き約54mの本堂は、東日本最大級の木造建築です。棟の形状は珍しいT字型をしており、「撞木造り(しゅもくづくり)」と呼ばれます。

本堂は度重なる大火で焼失し、そのたびに再建されてきました。現在の本堂は1707(宝永元)年のもので、江戸時代中期を代表する仏教建築として国宝に指定されています。

本堂内部は約150畳の広さがあり、最奥に進めば、ご本尊近くでのお参りが可能です。地下の回廊を歩く「お戒壇巡り」の入り口も、本堂奥にあります。

善光寺「本堂」。国宝に指定されている木造建築としては、日本で4番目の大きさになる。

 

また本堂では「びんずる尊者」の仏像も見逃せません。自身の患部と同じ場所を撫でると癒やしてくれるといわれる仏像なので、気になる部位がある人は一撫でしてみるとよいでしょう。

重要文化財の「山門」

山門は1750(寛延3)年に建立されたもので、国の重要文化財です。2002~2007年に大規模修理が行われ、建築当初の栩葺(とちぶき)屋根が復元されています。これにより山門は、国内に現存する最大の栩葺建造物となりました。

また山門には、畳約3畳分もの大きさがある「善光寺」と書かれた額が掲げられています。額の文字は「鳩字(はとじ)」と呼ばれ、5羽の鳩が隠れていることで有名です。

さらに「善」の文字が「牛の顔」に見えるともいわれています。鳩が描かれている理由は不明ですが、「牛」は「牛に引かれて善光寺参り」の故事に因んでいるそうです。

7年ごとに行われる「御開帳」

御開帳(ごかいちょう)は数え年で7年に一度、ご本尊を一般公開する行事です。ただし「一光三尊阿弥陀如来」は絶対秘仏とされており、たとえ僧侶でも、その姿を見ることはできません。公開されるのは一光三尊阿弥陀如来を模した「前立(まえだち)本尊」です。

直近では、2022(令和4)年の4月3日~6月29日に開催予定で、期間中は本堂前に回向柱(えこうばしら)が立てられます。この柱は「善の綱」で前立本尊と結ばれており、柱に触れるだけで本尊に触れるのと同様の功徳(くどく)を得られるそうです。

その他、華やかな装束に身を包んだ稚児(ちご)や僧侶たちが、雅楽の演奏とともに練り歩き、回向柱の前で法要を行う「中日庭儀大法要(ちゅうにちていぎだいほうよう)」など、御開帳の時期だけのさまざまな儀式が行われます。

参考:善光寺御開帳│令和4年4月3日(日)-6月29日(水)

種類の豊富な「御朱印」や「お守り」

善光寺の御朱印所は、「本堂前」と「本堂内(土・日・祝日のみ)」の2カ所です。

また、本堂・山門・経蔵・忠霊殿・雲上殿にも限定の御朱印があり、すべて並べると境内図が完成するようにデザインされています。期間限定の御朱印もあるので、ぜひチェックしてみましょう。

さらに、お守りの種類も厄除け・縁結び・交通安全などと豊富です。善光寺と縁の深い「牛」に因んだお守りや、ペット用のお守りなどもあり、幅広い願い事をカバーしてくれるでしょう。

善光寺の参拝方法

長い歴史を持つ善光寺は、重要文化財・国宝など、見どころがたくさんあるため、効率よく見てまわるためには、あらかじめ参拝ルートを決めておくのがおすすめです。時間限定の法要もあるので、参拝のタイミングを見計らって出掛けましょう。

善光寺参拝のポイントを紹介します。

参拝コースやおすすめの時間帯

善光寺交差点から真っすぐの道が、善光寺参りのルートです。仁王門をくぐると山門が見え、にぎやかな仲見世通りが続きます。

山門に到着したら、以下のルートで巡るのがおすすめです。

1.山門で「鳩の額」をチェック
2.大香炉で煙を浴びて、ご利益を身にまとう
3.国宝の本堂でお参り
4.お戒壇巡り
5.経蔵でお参り

経蔵には、すべての経文をまとめた一切経が収められた「八角の輪蔵(りんぞう)」が設置されています。輪蔵は腕木で回すことができるようになっており、それを押し回すとすべての経文を読んだのと同じ功徳が得られるそうです。

また、善光寺の功徳をしっかりと得たい人は、早朝からの参拝がおすすめです。日の出とともに始まる朝の法要「お朝事(あさじ)」や、住職が数珠(じゅず)で頭を撫でてくれる「お数珠頂戴」などがあり、善光寺ならではの体験ができます。

善光寺「宿坊」。善光寺は、大勧進・大本願の下に39の寺院があり、院と付くのが天台宗、坊と付くのが浄土宗のお寺となる。これらの寺院は、参拝者や信徒が宿泊できる宿坊で、参道を取り囲むように立ち並んでいる。

善光寺で身も心も清めよう

「遠くとも 一度は詣(まい)れ 善光寺」といわれた善光寺は、国宝や重要文化財を備えた見どころ満載のお寺です。本堂で手を合わせたりお戒壇巡りをしたりして、たくさんの功徳をいただきましょう。

また早朝に行われる法要は、善光寺ならではの荘厳な雰囲気を体験できる絶好のチャンスです。僧侶の読経の声に耳を澄ませば、身も心も清められていく感覚を味わえることでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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