「食べない時間」と「食生活の見直し」で幼児のむし歯を防ぐ。仕上げ磨きだけじゃない、口内酸性度コントロール術

生えたてのかわいい乳歯を見ると、むし歯から守ってあげたいと思うもの。まずは食生活を見直すことがむし歯予防の第一歩になります。
1~3歳の歯のケアで注意したいポイントを小児歯科専門医にうかがいました。

乳歯のむし歯を放っておくのは危険!

乳歯は表面のエナメル質が永久歯よりも薄く、むし歯になりやすいのが特徴です。

むし歯がひどくなると、よくかめずにあごの成長に影響が出たり、まわりの歯がかたむいてしまって永久歯の歯並びが悪くなることも。

また、乳歯のむし歯が進行して歯の根元に膿がたまると、その下にある永久歯が曲がって生えたり、弱い歯になったりすることもあるため要注意。むし歯になる前から定期的に歯科に通い、予防を心がけましょう。

歯みがきよりも食生活の見直しが大切

むし歯予防と聞くと歯みがきを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、歯みがきだけでむし歯予防はできません。

重要なのは、食生活を見直すこと。食生活が不規則だと、口の中がむし歯菌の活動しやすい状態になる時間が長くなり、むし歯ができやすくなってしまいます。

次で紹介するポイントを参考に、食事の回数やおやつの内容などを見直しましょう。むし歯になりにくい食生活を習慣化することが、子どもの歯を守ることにつながります。

年齢別 歯の生え方とケアのポイント

※ 上記は一般的な目安であり、歯の生える時期や順番には個人差があります。

1・2・3歳の歯を守る 3つのポイント

食生活の見直しに加えて、仕上げみがきを習慣にしたり、フッ素で歯の質を強くしたりすることで、より効果的なむし歯予防ができます。歯を健康に保つ習慣を幼児にうちに身につけましょう。

食べ方による口の中の変化

口の中の酸性度を示すpH値が5.5以下になると、歯の成分が溶け出します。頻繁に飲食をしているとpH値5.5以下の状態が続き、唾液が歯を修復する時間があまりとれません。

ポイント1 ダラダラ食べはやめて甘いものは控えめにする

何も食べない時間をつくって歯を修復しよう

水や無糖の飲みものを飲んだ場合を除き、口の中に食べものや飲みものが入ると、むし歯菌は糖を分解して酸をつくり、その酸によって歯の成分が溶け出して、むし歯になりやすい状態になります。

その後、しばらく何も食べない時間が続くことで、唾液の働きによって歯の溶けた部分が修復(再石灰化)されます。

ダラダラ食べ続けていると口の中が酸性になる状態が続き、唾液が歯を修復する時間がなくなってしまいます。食事やおやつは時間を決めて食べるようにして、何も食べない時間をつくるようにしましょう。

甘くて歯にくっつく食べ物は要注意

むし歯菌のえさになるのは、食べかすに含まれる糖分です。砂糖を多く含む食べものは控えめにして、歯にくっつきやすいものや口の中に入れている時間が長いものは、なるべく与えないようにしましょう。

同量の甘いものを食べる場合でも、一日に何度も分けて食べるより、おやつの時間にまとめて食べたほうが、むし歯のリスクを減らせます。

スポーツ飲料や果汁にも糖分がたっぷり

スポーツ飲料や乳酸菌飲料のほか、100%の果汁や野菜ジュースにも多くの糖分が含まれています。甘い飲みものは味を覚えるとくり返し欲しがるようになるため、水分補給の際は、水か無糖のお茶を飲むことを習慣に。

チューブ入りのゼリー飲料をくり返し与えたり、哺乳瓶で果汁を飲ませたりすると、むし歯になりやすくなるので注意しましょう。

むし歯になりやすいもの

キャラメル、ソフトキャンディー、あめ、ガム(砂糖入り)、チョコレート、チューブ入りのアイスクリームやゼリー、加糖の炭酸飲料、スポーツ飲料、果汁、乳酸菌飲料

むし歯になりにくいもの

スプーンで食べるタイプのアイスクリームやゼリー・ヨーグルト、プリン、チーズ、小魚、せんべい、バナナ、りんご、干しいも、野菜スティック、水、麦茶、牛乳

ポイント2 仕上げみがきを習慣にする

仕上げみがきをするときは、子どもを仰向けに寝かせて、おうちの方が上からのぞきこむようにすると、口の中が見やすくなります。

むし歯になりやすいところを重点的に

上の前歯が生えてきたら仕上げみがきを習慣にすると、次のポイント3でご説明するフッ素でのホームケアも行いやすくなります。

最初のうちは口の中を軽く刺激するだけでも、唾液が出てむし歯予防効果が期待できます。慣れてきたら、記事下方の図に示した「むし歯になりやすいところ」を重点的にみがくと効果的です。

フロスの正しい使い方は歯科医院で相談してください。ぐずって長時間みがけない場合は、日によってみがき始める場所を変えると、1週間単位ではまんべんなくみがくことができます。

ポイント3 フッ素で歯を強くする

1日2回のホームケアを習慣に

フッ素には、成分が溶け出した歯を修復する唾液の働き(再石灰化)を助け、歯の質を強くする働きがあり、歯が生え始めたときから使用可能です。

うがいができないうちは、1日2回、仕上げみがきの後などにフッ素濃度500ppm程度の市販のジェルを、切った子どもの爪程度(歯ブラシの毛束1本分)のごく少量塗るのが使用の目安です。使用後は口の中に残ったジェルを吐き出させるか、軽く拭き取りましょう。

3~4か月ごとに歯科でもフッ素塗布を

上の前歯が生える1歳ごろを目安にかかりつけの歯科医を見つけ、3~4か月に一度、歯科でフッ素を塗布して歯の状態もチェックしてもらうことを習慣にしましょう。

小児の診察に慣れている小児歯科専門医で受診することもおすすめです。おうちでのフッ素ケアや歯みがきの仕方などについても相談してみるとよいでしょう。

むし歯になりやすいところとみがき方のポイント

〈歯みがき中の事故に注意!〉
歯ブラシをくわえたまま転倒する事故は1~2歳で多発しています。目を離さずにいても転倒することはあるため、子ども自身が歯みがきをするときは必ず座らせてから歯ブラシを持たせ、立つ前に歯ブラシをおうちの方が預かりましょう。

教えてくれたのは

今村由紀先生
小児歯科専門医。がくえんのもり小児歯科院長。NPO 法人歯ぐくみ理事長。0歳からのむし歯予防に取り組み、ママ・パパ向けの情報発信も行う。

『ベビーブック』2022年6月号 イラスト/みや れいこ 文/安永美穂 構成/童夢

小学館の知育雑誌『ベビーブック』は、毎月1日発売。遊び・しつけ・知育が一冊にぎっしりとつまっています!  アンパンマン、きかんしゃトーマス、いないいないばあっ!など人気キャラクターがお子さんの笑顔を引き出します。はってはがせるシール遊びや、しかけ遊びでお子さんも夢中になることまちがいなしです。

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再構成/HugKum編集部

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