毎日の仕上げみがきを親子のコミュニケーションタイムに
歯が生える時期や順序には個人差がありますが、2~4歳であれば、乳歯がほぼ生えそろっている子もいるでしょう。乳歯はいずれ永久歯に生えかわる「子どもの歯」ですが、だからといってケアに手抜きは禁物。乳歯には、子どもの成長に深く関わる大切な役割があるからです。
ひとつめが「かむ力」を育てること。歯の成長に合わせて「かんで食べる」経験を重ねることで、口を動かす筋肉が発達し、何でもおいしく食べられるようになります。
ふたつめが発音を助けること。たとえば前歯がなければ、「た行」「さ行」などを正しく発音することはできません。
みっつめが、永久歯のための場所取り。永久歯が生えるより早いタイミングで乳歯が抜けたり、虫歯になって歯が小さくなったりすると、奥の歯が前へずれていきます。その結果、永久歯が生えてくる際、歯並びが乱れてしまうことがあるのです。
乳歯を守る基本は、正しい&賢い歯みがきです。子どもの「自分みがき」の後に、保護者が「仕上げみがき」を。上手な仕上げみがきは、親子のスキンシップにもなります。子ども自身が歯みがきの楽しさや気持ちよさを感じることができれば、「食べたら歯みがき」の習慣も自然に身についていきます。
また、仕上げみがきは毎食後しなくても大丈夫。口の中の細菌などがプラーク(歯垢)にかわるには約24時間かかります。1日1回、すみずみまで仕上げみがきをしていれば、虫歯のリスクは下がるのです。
乳歯のおもな役割
①しっかりかんで、おいしく食べる力とあごを育てる
②正しい発音を助ける
③永久歯に必要なスペースを確保する
④かわいい表情をつくる
子どもの歯 元気度check
当てはまるものが多いほど、虫歯に注意!
☑部分的に白くてツヤのないところがある
☑黄色っぽい汚れがついている
☑歯みがきをいやがる
☑仕上げみがきをしない日がある
☑間食が多い
子どもがみがく自分みがき
食事の後は、子どもが自分で歯みがきを。めばえっ子なら、上手にみがけないのが当たりまえ。「歯みがきができた」だけで合格です。
「自分みがき」は必ず座って!
歯ブラシを口に入れたまま転んだり、人やものにぶつかったりすると大きなけがにつながることがあります。こうした「歯みがき事故」を防ぐため、歯みがきは必ず座って行う習慣をつけてください。子どもは大人を見て学ぶので、まずは保護者が座って歯みがきをする姿を見せましょう。
事故防止に役立つ歯ブラシを選べば、より安心!
歯みがきに慣れるまでは、ストッパー付きの歯ブラシを使うのもよい方法。万が一の場合も歯ブラシがのどまで入らないように設計されているので安心です。
歯ブラシはしっかり握ってよい
子どもは握る力が弱いので、歯ブラシはぎゅっと握るようにもって(パームグリップ)使います。
食べたらみがく&できたらほめる
めばえっ子の目標は、「食べたら歯みがき」を習慣にすること。「きれいにみがく」のはまだ保護者の役目なので、「ここがみがけていないでしょ!」などとしかるのはやめましょう。子どものモチベーションアップに役立つのは、歯みがきをしたらほめること!
日頃から保護者が楽しそうに歯みがきをし、「口の中がさっぱりして気持ちいい!」などと言ってみせることも効果的です。さらに動機づけが必要なら、「歯みがきしたらシールを1 枚」などの「ごほうび作戦」も!
めばえっ子の自分みがきは 「あー」 →「いー」 でOK
「あー」→上2カ所+下2カ所
「あ」の形に口を大きく開け、上下の奥歯の「かむところ」をブラッシングします。
「いー」 →上3カ所+下3カ所
「い」の形に唇を横に引き、上下の前歯の外側と、左右の奥歯の外側をブラッシングします。
歯の裏側などは、「仕上げみがき」で。めばえっ子はまだ自分でやらなくてOKです。成長に合わせて「自分みがき」するところを増やしましょう。
保護者がみがく仕上げみがき
1 日に1 回は保護者が「仕上げみがき」を。1日3 回、雑に行うより、1 日1 回ていねいにみがいたほうが虫歯予防効果が高まります。
仕上げみがきは寝かせて行う
「仕上げみがき」は、子どもを仰向けに寝かせて行います。ポイントは、みがくところをきちんと見ながら行うこと。感覚を頼りにするとみがき残しをしたり、必要以上にこすりすぎて痛い思いをさせてしまったりします。できればブラッシングの後、デンタルフロスで歯間の掃除もしましょう。
仕上げみがきは大人の手に合う歯ブラシで
仕上げみがきには、「自分みがき」用とは違う歯ブラシを使います。口の大きさなどに合う「子ども用」の歯ブラシを選び、えんぴつのようにもちます(ペングリップ)。子どもが「気持ちいい」と思えるよう、力を入れすぎないように注意。やさしく話しかけたり、歌を歌ったりしながら行いましょう。
歯の間や裏側までていねいにみがく
「あー」と「いー」で行う「自分みがき」では、歯の裏側には歯ブラシを当てません。また、歯と歯の間などもみがけていないでしょう。左手(歯ブラシを持ってないほうの手)を上手に使ってくちびるや頬の内側と歯の間にすき間をつくり、歯ブラシが当たっている部分を見ながらていねいにみがいていきます。
磨くところに直角に当て10回こする
プラークは歯の表面にこびりついているので、しっかりこすらないと落ちません。歯ブラシは歯に直角に当て、1 カ所につき10 回を目安に小刻みにこすりましょう。
みがきにくい歯の外側は「左手づかい」がポイント
下の奥歯の外側
指先に力を入れて引っ張ると、子どもが痛がるので注意! 「あー」と口を開けた状態で左手の人さし指を歯と頬の間に入れ、指の腹で頬を斜め下へ引き下げます。
上の奥歯の外側
軽く「いー」をした状態で左手の人さし指を歯と頬の間に入れ、指の腹で頬を斜め上へ引き上げます。
上の前歯の外側
下の前歯は、同様に指を当てて唇を押し下げます。軽く「いー」をした状態で左手の人さし指を前歯と平行に当て、指の腹で唇を上へ押し上げます。
おすすめの歯ブラシ
ヘッドのサイズは奥歯2 本分を目安に
■ブラシにコシがある
■ヘッドが薄い
■柄がまっすぐ
歯のケアのギモンQ&A
歯のケアのギモンについてお答えします!
Q.歯みがき剤って、何を選ぶ?
虫歯予防には、「フッ化物」が配合された歯みがき剤が有効です。食事の後、口の中は酸性に。歯の表面の成分が溶け、虫歯リスクが高まります。フッ化物には溶け出した成分を補う働きなどがあるため、虫歯予防に役立つのです。フッ化物は年齢によって使用量が決められているので、表示をよく見て年齢に合ったものを選び、用法・用量を守って使いましょう。
Q.間食が多いと虫歯になりやすい?
ものを食べると口の中が「虫歯になりやすい環境(酸性)」になり、通常の状態に戻るまでには約40分かかります。つまり1日の中でものを食べる回数が多いほど、虫歯になりやすい時間も増えるということ。そのため、甘いおやつの「ダラダラ食べ」や甘い飲料の「ちょこちょこ飲み」をすると虫歯になりやすいのです。
Q.歯医者さんでできる虫歯予防って?
まずはかかりつけ歯科医をもち、歯みがき指導や定期検診を受けましょう。虫歯予防のためには3~4か月に1回、フッ化物の塗布(費用の補助を行っている自治体もある)をするのがおすすめ。虫歯になりやすい奥歯の溝を樹脂で埋める「シーラント」という処置も予防に有効です。
Q.歯みがきは感染症の予防にも有効?
歯みがきの効果は、虫歯を予防することだけではありません。細菌などを取り除くことで、口の中全体が清潔になります。口の中を覆っている粘膜には、ウイルスなどが体内に侵入するのを防ぐ「バリア機能」があります。口内環境がよい状態に保たれていると、粘膜も健康に。バリア機能も高まるため、感染症の予防にもつながることが期待できます。
教えてくれたのは
浜野美幸さん
千葉歯科医院院長。日本小児歯科学会認定専門医指導医、常務
理事。著書に『子どもの口腔機能を育てる本』(医歯薬出版)な
ど。「歯みがきは“気持ちいいこと”。子どもが歯みがきを楽し
めるような働きかけも大切です」
『めばえ』2021年12月号 イラスト/岡本典子 構成/野口久美子
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。
再構成/HugKum編集部