「上梓」とは?
「上梓」はなんと読むかわかりますか? 普段の生活では聞き慣れない言葉のため、読み方や意味さえわからない方もいるはず。そこで今回は、「上梓」の読み方から意味、類語、英語表現まで詳しく解説します。
読み方と意味
「上梓」の読み方は、「じょうし」。「じょうすい」「じょうさい」などと間違って読んでしまうこともあるので、正しい読み方を覚えておきましょう。
意味は2つあり、「文字を版木に刻むこと」「書物を出版すること」です。1つ目の意味で出てくる版木とは、文字や絵などを刻んだ木板のこと。昔は、絵や文字などを木の板に反対向きに刻んで印刷をしており、このことを「上梓」と言っていました。
2つ目の意味である「書物を出版すること」は、小説や漫画、写真集、図鑑などの冊子を出版することをさします。なお、電子書籍の出版に対しても「上梓」を使うことが可能です。ポイントとしては、「上梓」は冊子に対して使うこと。そのため、新聞や広告、チラシなどの印刷物に対しては、「上梓」を使いません。
由来・語源
では、なぜ「上梓」という言葉ができたのでしょうか?
先ほど説明した通り、以前は版木に文字を刻んで印刷を行っていました。昔の中国で、この版木に梓(あずさ)の木を使用していたことが「上梓」の由来だそう。「梓に上げる」という表現で、「文字を版木に刻むこと」という意味だったのでしょう。これが「上梓」の由来です。
使い方を例文でチェック!
続いて、「上梓」を使った例文を紹介します。「上梓」という言葉自体は、ややかたい表現ではありますが、日常生活でも使える言葉ですよ。例文を見ながら、使用シーンを具体的に思い浮かべてみてくださいね。
1:来年の春、自費出版ではありますが、小説を上梓することになりました。
「上梓する」とは、「本などを出版する」という意味です。「上梓」は、出版社や作家が使うことが多かった言葉。ですが、現在では電子書籍の普及により自費出版をする人も増えましたよね。もし自分で製作した小説や絵本、写真集などを出版する際には、「上梓する」を使ってみましょう。
なお、もし知り合いなどから「本を上梓します」という連絡をもらった時、その返事として「上梓おめでとうございます」「ご上梓おめでとうございます」と言いたくなりますよね。しかし、これらの表現はあまり使われないようです。「上梓」の連絡をもらったら、「出版おめでとうございます」「ご出版おめでとうございます」と言うほうがいいでしょう。
2:五十年も前に上梓された本に、子どもがハマっている。
「上梓」は、「上梓される」という表現でも使うことが可能です。「上梓される」で、漫画や雑誌、書籍などが出版されることをさします。この場合「上梓され」たのは作者ではなく、本や原稿そのものを指します。
類語や言い換え表現は?
「上梓」の類義語としては、「出版」「発行」「リリース」などがあります。それぞれ、言葉の意味や例文を紹介しましょう。
1:出版
「出版(しゅっぱん)」とは、「書籍や雑誌、デジタルデータなどを印刷・製作・販売すること」。「出版」は、デジタルデータに対しても使えるので、「電子書籍を出版した」という表現も可能です。「上梓」とほとんど同じ意味の言葉と考えていいでしょう。
例文:電子書籍の出版は年々増加しているようだ。
2:発行
「発行(はっこう)」とは、「雑誌や新聞、図書などを印刷して、世に出すこと」。制作物を世に広めるという点では、「上梓」や「出版」とほとんど同じ意味といえるでしょう。ただし、「発行」は、書籍などの冊子というよりは、新聞などの印刷物に対して使われることが多いようです。
例文:付録付きの雑誌が次々に発行されている。
3:リリース
「リリース」とは、「新商品や作品などを公開、発表、発売すること」。「解放する」「手放す」などの意味を持つ英語の「release」が語源です。書籍や写真集などのほか、新曲やアプリケーション、情報、ニュースなど、さまざまなものに対して使えます。
例文:大人気推理小説の続編がとうとう来週リリースされる。
対義語は?
ここでは、「上梓」と反対の意味を持つ言葉を紹介します。
1:絶版
「絶版(ぜっぱん)」とは、「出版物の印刷、販売をやめること」、もしくは「そのような状態にある本」のことをさします。もともとは、印刷のもとになる原稿などを破棄し、再び発行をしなくなることをさしました。しかし現在では、増刷の時期が未定の場合にも使うことができます。
2:廃刊
「廃刊(はいかん)」とは、「新聞や雑誌など定期刊行物の出版をやめること」。単発の刊行物に対しては使われないということがポイントです。なお、もし「休刊」であれば「復刊」の可能性もありますが、「廃刊」であれば「復刊」の可能性はほとんどありません。
英語表現は?
「上梓」の「書物を出版すること」を英語で言いたい場合には、「issue」「publish」。「文字を版木に刻むこと」を言いたい場合には、「wood-block printing」を使ってみましょう。それぞれ例文も合わせて紹介しますので、チェックしてみてください。
1:issue
「issue」は、「刊行する」「出版する」「発行する」などの意味を持つ単語です。また、名詞としても使え、その場合は「発行」「発行物」などの意味になります。
例文:This newspaper is issued every day.(この新聞は毎日発行されている)
2:publish
「publish」も「issue」と同じような意味を持つ英語で、「出版する」「発行する」「発表する」などの意味を持ちます。
例文:When was her new novel published?(彼女の新作小説はいつ出版されたのですか?)
3:wood-block printing
「文字を版木に刻むこと」という意味を表現したい場合には、「wood-block printing」を使ってみましょう。「wood-block」は「木版」、「printing」は「印刷」という意味です。この2つを合わせて、「木版に印刷する」、つまり「上梓」を表現することができます。
例文:This is a book printed by the wood block printing method.(これは版木で印刷した本だ)
最後に
「文字を版木に刻むこと」「書物を出版すること」という意味の「上梓」について、さまざまな角度から解説しました。もともと梓の木に文字や絵を刻んでいたことが、「上梓」の由来だったとは面白い発見でしたね。
すこし難しく思える言葉も、由来を知ると言葉への理解がより深まるでしょう。ぜひこれを機会に、「上梓」の使い方をマスターしてみてください。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)