「幼稚園で嫌なことがあり、登園を渋るようになりました」【保育経験41年・元園長先生の相談室24】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

 

5歳の男の子ですが、最近、登園を渋るようになりました。理由を聞くと「かけっこでうまく走れず、運動会の練習が嫌だから」と言います。どのように対応したらいいでしょう。

和歌山県 N・Mさん

 

うまく走れないことに不安や緊張が生まれるのは、成長の証しです

年少クラスでかけっこをさせると、子どもたちはお友だちと一緒に走れるのがおもしろく、うれしいと感じます。だから、競技の途中で自分ひとりだけが先を走っているのに気づくと、お友だちのところへ戻ってきてしまう子もいます。それが年中ぐらいになると、保育者が「1
番、2番」と声をかけてあげることで、早く走ることがいいことだと分かってくる。そして、隣の子どもを意識して一歩でも早く走ろうという気持ちが起こってきます。ただ、ゴールまでその気持ちが続かずに終わってしまうことも多いんですね。

相談者のお子さんのような気持ちが生まれるのは、年長ぐらいからです。年長児はさらに視野が広がり、子どもなりにさまざまな面で仲間の力を認めるようになり、それを自分で受け止めたうえで目標を持つようになります。そして、より早く走るにはどうしたらいいのかを考えたり、努力をしたりするのです。ですから、うまく走れないと不安や緊張が高まって、園に行くのが嫌になったりすることもあります。しかし、それは成長のし。お母さんはお子さんのそうした姿をむしろ喜び、その気持ちをしっかり受け止めてあげてほしいと思います。

頑張りを後押し。担任にはありのままの状況を伝える

相談者のお子さんのような悩みを聞いたとき、お母さんは「1番でなくてもいいよ」とか「仕方ないよ」などと言わないように気をつけてください。お子さんを慰めるつもりで言った言葉は、早く走りたいと願っている子どもにとっては救いになりません。お子さんには「じゃあ、お母さんと一緒に走ってみようか」とか「パワーがつくようにお肉を食べようか」などと、お子さんの頑張りを後押しするような言葉がけをして、それを実行してあげてほしいのです。お母さんのそうした言動は、子どもの大きな励みとなり、頑張りを維持することにつながります。

そのうえで、園の先生にはお子さんの今の状況と、それに対して家庭でしていることを伝えておきましょう。保育者は園での子どもの様子を見ながら、何らかの対応策を必ず行っていくと思います。

そうして運動会の前日になったら、「いつも一生懸命なあなたを応援しているよ。あなたのそんな姿を見られるのはうれしいな」と、親として子どもを誇りに思っていることを伝えてください。運動会当日は、会場でお子さんをほめることも忘れずに。「かけっこ頑張ったね」「ダンスがうまかったね」などと、いろんなところに目を向けてほめてあげるといいと思います。そうすることで、たとえかけっこでは結果が出せなくても、お子さんは自分に自信を持ち、生きる力を育むことができます。

運動会に限らず園行事は、当日だけでなく、その前後の子どもの姿をイメージしながら家庭で見守ってあげてほしいですね。私たち保育者は、運動会の前はもちろん、終わったあとも運動会で披露したダンスをしたり、運動会の絵を描く時間を作ったりして、行事のを楽しむ保育をしています。親子でもそんな時間が持てたなら、きっとすてきな思い出になると思います。

 

回答していただいたのは…

田苗孝子先生  宝仙学園幼稚園元園長。1949年広島県生まれ。2007年から20193月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

 

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2015年10月号

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