「幼稚園でお友だちともめたとき、嚙む癖があり困っています」【保育経験41年・元園長先生の相談室28】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

 

3歳の男の子です。幼稚園でお友だちともめたとき、嚙む癖があります。先日もお友だちを嚙んでしまい、そのおうちの方に謝ったばかり。どうしたらやめさせることができるでしょうか。

長崎県 Y・Mさん

 

そのときどきで適切な行動を具体的に繰り返し伝えましょう

イヌやネコは赤ちゃんのころ、じゃれるときには甘嚙みをしたり、怒ったときには強く嚙んだりすることで気持ちを伝えます。人間も、0歳児から何でもモノを口に入れて、それがどういったものなのかを確かめようとします。こうしたことから考えると、口というのは本能的に働く器官なのだと思います。

しかし、人が動物と異なるのは、成長とともに言葉を覚えて、嚙まずに自分の気持ちを言葉で主張できるようになる点です。また、人と触れ合う中で社会性を身につけて、腹が立ったり悔しくても、自分の気持ちをコントロールして、ある程度我慢ができるようになるのも、人間だからこそできる点だと思います。

そのように、人が人になるためには、1歳を過ぎたあたりから、おうちの方がお子さんに、どう行動すべきかを日々の生活の中で繰り返し伝えていくことが必要です。相談者のお子さんのように嚙み癖があるのなら、自分の思うようにならないとき、どうしたらいいのかを、いろいろな場面で具体的に教えてあげましょう。

例えば、家でお母さんや兄弟を嚙むようなことがあったなら、まず「どうしたの? 何がしたかったの?」と子どもの気持ちをきちんと聞いてあげましょう。そうして子どもの気持ちをある程度落ち着かせたら、「そういうときはこう言えばいいのよ」と、そのときどきのシーンでとるべき行動を教えて、手を出さないことの重要性を伝えてあげてください。「だめでしょ」と一喝して、子どもの気持ちを押さえ込んでしまうのは禁物です。

繰り返しきちんと諭していくことで、気持ちを言葉で伝える生活習慣が、子どもにじわじわとしみ込んで、やがて噛まないようになると思います。

集団生活では友だちとのトラブルは避けられない。お互いさまの精神で

園でのこうしたトラブルに対しては、嚙んだほうも嚙まれたほうのお母さんも悩むことが多いですね。しかし、幼稚園や保育園での集団生活は、子ども同士が関わり合い、さまざまな体験をすることに意義があります。園生活の中で失敗や挫折を経験し、それを乗り越えることで、子どもは心身ともにたくましく成長していくのです。トラブルは前向きにとらえて、そこから子どもが何を学んだのかを考えてみてください。

トラブルが起きた際、園ではまず双方のおうちの方に謝罪をしたうえで、その原因やふたりの子どもの状況説明をし、どのような指導をしたのか、これからどんな指導をしていくのかを伝えます。

嚙んだ子どもはすでに園で厳しく指導を受けていますので、お母さんは家でさらに叱ったりせずに、その子を温かく見守ってください。また、嚙まれた子どものお母さんは「お互いさま」の気持ちでのぞみ、「痛かったね」と言って、子どもの気持ちに寄り添ったうえで「でも、あなたはしないのよ」と一言添えましょう。幼いころにお友だちともめたり、をするのは、人生を上手に生きる力を育むうえで、必要な体験です。その際、どう行動すべきかをしっかりと教えることが重要で、それが大人の大事な役目だと思います。

 

回答していただいたのは…

田苗孝子先生  宝仙学園幼稚園元園長。1949年広島県生まれ。2007年から20193月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2016年4月号

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