子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。
子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!
年中の男の子です。最近、朝起こすと機嫌が悪く、ぐずぐずしています。着替えや食事、登園の準備などもスムーズにいかず、親子関係が険悪になりがちです。どうしたらいいでしょう。(愛媛県 S・Sさん)
朝起きたとき、子どもの機嫌がすぐれずに、ぐずぐずするのには、さまざまな原因が考えられます。まず考えられるのが寝不足です。最近、お子さんは十分に睡眠をとっているでしょうか。眠り足りないうちに朝起こされると、大人でも辛くて機嫌が悪くなるものです。また、寝る直前に食事やスイーツなどを食べていないか、振り返ってみることも必要です。食事をとってからすぐに寝てしまうと、それが胃腸の負担となって、すっきり目覚めることができなくなるからです。
以上のような点に、もし心当たりがあったなら、まず生活リズムの改善から始めてみてください。生活習慣が見直され、体調よく目覚められるようになれば、お子さんの機嫌も自然に良くなって、スムーズに朝の支度ができるようになると思います。
少しずつ心身を目覚めさせる時間を持つ
生活習慣に問題点がなく、しっかり睡眠をとっていても朝すっきり起きられない子どもの場合は、起床してから心身が少しずつ目覚める時間を作ってあげてみてください。たとえば、目覚めたら、「おはよう」と声掛けをして抱っこをしてあげる。好きなテレビ番組を付けておき、それをしばらく観ながら気分転換をさせてあげる。親子でふざけっこをして体を動かすのもいいと思います。
くれぐれも「早くしなさい」とか「ちゃんと支度して」というような声掛けはしないこと。5分でもいいので、お子さんがうきうきするような親子が触れ合う時間を持つことが大事です。そうすることで、子どもの心も体も目覚めて、積極的に行動できるようになると思います。
園での出来事が原因の場合は子どもの心に寄り添う
このほかに子どもが朝ぐずぐずするのは、園生活の中で起きた出来事が原因の場合もあります。たとえばお友だちとうまくいかなかったり、お絵かきやお遊戯など何か挑戦していることがうまくいかなかったりしていると、気が重くなり行動が遅くなることがあります。そんな心配がないか、まずは園の担任に聞いてみてください。そして、もし問題があったなら、おうちの方はお子さんの気持ちに寄り添う配慮をしていただきたいと思います。
たとえば入浴中や寝る前の布団の中で、子どもの愚痴を聞いてあげ、「大変だったね」と気持ちを受け止めてあげてください。「よし、じゃあママが元気になるエネルギーを入れてあげる」などと言ってあげるのも、子どもにとっては励ましとなり、心が和むと思います。
それでも、もし気持ちの落ち込みが激しくて身支度が進まない場合は、園に遅刻してもいいと思います。親子で十分に触れ合い、子どもの気持ちを整えてからの登園を試みてください。自分は家族に支えられているのだとしっかり実感できれば、やがて前向きに行動するようになるでしょう。
回答していただいたのは…
宝仙学園幼稚園元園長。2007年から2019年3月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。
構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2018年5月号