年末年始子どもが発熱!インフル?コロナ?迷ったときの対処法を小児感染症専門医に聞きました

冬になり、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行が懸念されています。年末年始は、休診となる医療機関が多いのですが、もし子どもが急に熱を出したり、咳き込んだりしたときは、どのように対応したらよいのでしょうか。聖マリアンナ医科大学病院 小児科 勝田友博先生に適切な対処法を教えてもらいました。勝田先生は、小児感染症の専門医です。

熱が高くても基礎疾患がなくて元気ならば、すぐに受診しなくてもOK

3ヶ月未満の赤ちゃんは発熱したら迷わず受診を

生後03ヵ月未満の赤ちゃんは、発熱したらインフルエンザや新型コロナウイルス感染症(以下 新型コロナ)以外でも、大きな病気の可能性があるのですぐに受診が必要です。

しかしそれ以外の子で、基礎疾患がなければ発熱したからといって至急、受診が必要とは限りません。38度以上など、熱が高いときも同様です。

年末年始でかかりつけの小児科が休診の場合は、まずは子どもの様子をよく見てください。基礎疾患がなくて、熱が高くても元気で水分補給ができていれば、すぐに受診する必要はありません。

水分補給のポイントは、脱水を防ぐために水やお茶だけを与えないことです。なるべく経口補水液を飲ませて、電解質と糖分を補うことを意識してください。経口補水液が飲めないときは、ジュースやスープ類でも構いません。乳児は母乳、ミルクが飲めていれば、経口補水液を与えなくても大丈夫です。

呼吸が苦しそう、顔色が悪い、水分が摂れないときなどは、すぐに受診を

ただし次のような様子があるときは、すぐに医療機関を受診しましょう。

□呼吸が苦しそう(ハーハー、ゼーゼーしたり、呼吸のたびに肩を動かすなど)

□顔色が悪い

□ぐったりしている、意識がはっきりしない(目が合わない、呼びかけても反応が鈍いなど)

□水分が摂れない

□嘔吐を繰り返す

□けいれん

犬が鳴くような「ケーンケーン」という甲高い咳やオットセイが鳴くような咳をする

□重症化リスクがある

受診したほうがよいか迷ったときは♯8000に相談

受診したほうがよいか迷ったときは、「こども医療でんわ相談♯8000」に電話をして相談してもよいでしょう。♯8000は、小児科医や看護師が受診などのアドバイスをしてくれます。受付時間は都道府県によって異なるので、厚生労働省のHPで確認してください。

03歳は、クループ症候群に要注意

基礎疾患がなくても、新型コロナに感染して亡くなった子がいます。

原因の1つとして考えられるのはクループ症候群です。クループ症候群は、ウイルス感染によって咽頭や気管に炎症が起きる呼吸器疾患で、とくに0~3歳児は注意が必要です。

犬が鳴くような「ケーンケーン」という甲高い咳やオットセイが鳴くような咳が出たら、診察時間外でもすぐに受診してください。いつもの咳とは違うので、ママやパパも気づきやすいと思います。クループ症候群は急変することがあり、重症化すると呼吸困難を引き起こすこともあります。

子どもは約70%感染経路がわかる! 23日前の行動をさかのぼって考えて

子どもが発熱すると「インフルエンザか新型コロナか知りたい!」と思うママやパパもいるでしょう。一般的には新型コロナよりインフルエンザのほうが熱が高く、倦怠感は強いのですが、症状だけで見極めるのは困難です。

また、市販の検査キットは、検査するタイミングによっては偽陽性、偽陰性もあり得るので、あくまでも参考程度と考えてください。確定診断ではありません。

行動範囲が広い大人は感染経路不明ということが多いのですが、子どもは行動範囲が狭いので約70%は感染経路がわかります。そのため熱が出たりしたときは、23日前の行動をさかのぼってみましょう。保育園、幼稚園、小学校、習い事などの感染状況を振り返ってみてください。心当たりがあれば、受診時、医師に伝えると診断の助けになります。

具合の悪い子にマスクは着用させないで! 大人が中心になって予防しよう

具合が悪い子どもにマスクを着けさせるのはNG

子どもが熱を出したり、咳き込んだりしてインフルエンザや新型コロナが疑われる場合は、小学生以上で元気があって「水分が欲しい」など自分で意思表示できるならば、別室で隔離してもよいでしょう。ただし、こまめに子どもの様子は見に行ってください。

乳幼児、未就学児の場合は、隔離はやめましょう。子どもと少し距離をとることは構いませんが、急に吐いたり、けいれんを起こしたりしたとき、すぐに気づける距離にママやパパはいてください。

また具合が悪い子どもにマスクを着けさせるのもやめましょう。マスクをしていると呼吸がしづらいうえ、顔色が悪くなったり、嘔吐したりしても気づきにくいです。

家庭内感染を防ぐには、大人が中心になって予防することが基本です。大人が、手洗いや手指消毒、マスクの着用などを徹底し、寒くてもできるだけこまめに換気をしてください。

帰省中、子どもの具合が悪くなったら、重症化リスクがある人とは部屋を分けて

年末年始、実家に帰省しているときに、子どもの具合が悪くなるということもあるでしょうが、そうしたときも隔離の考え方は同様です。ただし高齢者や基礎疾患があるなど重症化しやすい人とは、すぐに部屋を分けてください。「せっかく帰省したのに…」と思うかもしれませんが、感染対策を第一に考えましょう。

解熱剤は、上の子の処方薬を下の子に服用させるのはNG

子どもが急に発熱すると、以前、処方してもらった解熱剤を使うママ、パパもいるかも知れませんが、処方薬は子どもの体重や年齢を目安に処方します。そのため上の子の解熱剤を安易に下の子に服用させるのはやめましょう。またシロップの解熱剤は、使い切りなので飲み残しは服用させないでください。坐薬は、処方日から半年~1年程度は使えます。

年末年始、何時間も診察を待つことがリスクになることも

病院で何時間も診察を待つことで体力が奪われ、かえって具合が悪くなってしまうことも

7波がピークのときは医療機関がひっ迫し、診察まで外で何時間も待たせれたというケースもありました。

年末年始は休診の医療機関が多く、休日診療をしている限られた医療機関に殺到してしまうと、第7波と同じようなことが起こり得ます。年末年始、子どもが発熱したら「病院で診てもらいたい」というママやパパの気持ちも十分理解できますが、基礎疾患がなくて、熱があっても元気な場合は、何時間も診察を待つことで体力が奪われて、かえって具合が悪くなってしまうこともあります。

また、本当は風邪だったのに医療機関でインフルエンザや新型コロナに感染するリスクもあります。そのため“すぐに受診が必要か!?”冷静に判断してほしいと思います。

 

記事監修

勝田友博先生|聖マリアンナ医科大学病院

聖マリアンナ医科大学 小児科 准教授。専門は小児感染症。日本小児科学会専門医・指導医、日本感染症学会専門医・指導医、日本小児感染症学会暫定指導医。

取材・構成/麻生珠恵

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