日食と月食、2023年はいつ見られる? 観察ポイントや現象の仕組みを紹介

丸い太陽や月が、見えなくなったり、一部が欠けて見えたりすることがあります。それらは「日食」「月食」と呼ばれる現象です。
2023年に日食と月食はいつ、何回見られるのでしょうか。それぞれどのような現象なのか詳しく説明し、「皆既日食」や「金環日食」などの種類とともにチェックしてみましょう。

2023年の日食・月食はいつ?

「日食(にっしょく)」や「月食(げっしょく)」は、太陽や月が見えなくなったり、丸い形の一部が欠けて見えたりする現象をいいます。

日本の天文学の中核を担う国立天文台は、毎年2月に翌年の「暦要項(れきようこう)」を発表。国際的に採用されている基準暦にもとづいて、太陽、月、惑星などの視位置を推算して、国民の祝日、二十四節気、東京の日出入などがいつなのか掲載しているのです。その中に、日食と月食がいつ起こるかについても記載されています。

では、2023年の日食と月食がそれぞれいつなのか、見ていきましょう。

2023年の日食は4月20日で1回見られる

2023年は、日食が2回起こります。1回目は4月20日で、2回目は10月15日。

4月20日の日食は、「金環皆既日食」と呼ばれるもので(詳しくは後述)、東南アジアやオーストラリアなどで見られます。日本では南西諸島・九州地方南部・四国地方南部・近畿地方南部から関東地方南部にかけての地域・伊豆諸島・小笠原諸島で観察できます。

一方、2回目の10月15日の日食は金環日食と呼ばれるもので、北中米、ブラジルなどで見られます。残念ながら、日本からはまったく見ることができません。

つまり、2023年に日本で見られる日食は、4月20日の1回のみということです。

2023年の月食は10月29日で1回見られる

月食についてはどうでしょうか。2023年に起こる月食は、10月29日の部分月食です。部分月食については、どのようなものか後ほど詳しくご説明します。

この日の部分月食は日本全国から見ることができます。小笠原諸島等では月食の途中で月の入りとなります。つまり2023年に起こる月食は10月29日の1回のみで、その1回を日本で見ることができるのです。

半分欠けた状態の月食

日食とは?

日食とは、どのような現象なのでしょうか。日食や月食を理解するためには、地球と月、太陽の位置関係を理解していくことが必要です。

日食とは月が太陽を隠す現象

日食を簡単に言うと、月が太陽の一部または全部を隠す現象を言います。日食が起きるのは、「太陽―月―地球」が、この順でほぼ一直線上に並んだとき。

一直線上に並んでいないときは、太陽の光が地球にそのまま届きますが、太陽と地球の間に月があると、地球から太陽を見たときに太陽が月によって隠されてしまうことがあります。これが日食という現象です。

日食の種類

日食には、「部分日食」「皆既日食」「金環日食」の3つがあります。

「部分日食」は、太陽の一部分が月によって隠される現象。日食が起きるときに、ほとんどの地域で見られるのがこの部分日食です。一方、「皆既日食」と「金環日食」は、太陽、月、地球の中心がほぼ重なる特別なときに見えるもの。

「皆既日食」は、月が太陽より地球から大きく見えるときの月食で、太陽が月にすべて隠されてしまい見えなくなります。昼間であっても周囲が暗くなり、太陽のまわりの「コロナ」と呼ばれるガス層を見ることができます。

皆既日食

「金環日食」は月が太陽より地球から小さく見える場合の月食で、太陽の光がリング状に輝いて見えます。

金環日食

また珍しいタイプの「金環皆既日食」もあります。これは、ある地点では皆既日食が見られ、別の地点では金環日食が見られるもの。ハイブリッド日食などと呼ばれています。

月食とは?

月食も、日食と同様に、太陽、月、地球の位置が重要になります。

月食とは地球の影が月を隠す現象

月食は、「太陽―地球―月」がこの順でほぼ一直線上に並んだときにおこります。

ふだん私たちが月を見ることができるのは、太陽の光が反射して光っているから。しかし太陽と月の間に地球が横切ると、地球が影となって、月に太陽の光が届かなくなります。そして光が届かなくなった部分は、月が欠けたように見えるのです。月が暗く見えなくなったり、一部分が欠けて見えたりする現象が月食です。

月食の種類

月食は「半影食」と「本影食」に分けられます。

「半影食」は、太陽の光が一部届いている状態で、薄い影のようになり、見た目だけでは月が欠けているかわかりにくい状態です。「本影食」は太陽の光がほとんど届かない状態で、影が濃く見えるため月が欠けているのがはっきりとわかります。一般に「月食」というときは、この本影食のことを指します。

さらに本影食は、「部分月食」と「皆既月食」の2つの種類があります。「部分月食」は月の一部が欠けて見える状態で、「皆既月食」は月が完全に影に隠れる状態を言います。

皆既月食では、月が赤味がかった赤胴(しゃくどう)色に見えます。これは、夕陽が赤く見えるのと同じ「散乱」という現象が関係しているから。

太陽の光は大気を通過するときに、青い光(波長の短い光)は空気の粒によって散乱しますが、赤い光(波長の長い光)は、弱まりながらも通過できるのです。そのため、太陽の光のうち波長の長い赤い光がわずかだけ届いて、月を赤く照らすのです。

皆既月食で月が赤く見えるのは、そのためです。大気中にチリが少なければ、通り抜ける赤い光が多くなり、月が明るいオレンジ色に見えますし、逆にチリが多いと通り抜ける赤い光が少なくなって月は黒っぽく見えます。

月がオレンジ色に見える皆既月食

▼月食についてはこちらもチェック

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日食・月食の観察ポイント

日食と月食を観察するとき、どんなことに気を付けたり知っておいたりするといいでしょうか。

日食は直接観察しない

日食は太陽を観察することになります。でも太陽は強力な明るさの光を放っているため、肉眼で見ると目にダメージをもたらします。

太陽の一部が隠れる日食であっても、太陽の強い光が届くことに変わりはありません。まぶしさを感じなくても、短時間であっても、肉眼で直接見ることはやめましょう。サングラスやゴーグルをかけるのもNGです。

国立天文台でおすすめしている安全な観察方法は、厚紙などに小さな穴を開けたピンホールを利用するもの。麦わら帽子や木漏れ日のように、小さな隙間から太陽を見る原理です。また市販されている日食専用グラスや遮光板などもいいでしょう。

月食は肉眼の観察でもOK

日食とは違い、月食は肉眼でも十分に観察できます。月が欠けてからだと、どこに月があるのか探しにくくなりますので、早めに月の位置を確認しておくといいでしょう。双眼鏡や望遠鏡を使えば、さらにじっくり観察できるでしょう。

部分食が始まる前と終わった後は「半影食」になり、肉眼ではわかりづらいですが、双眼鏡などを使うと薄い影も見えやすくなります。

観察の様子を記録しよう

日食や月食を観察するときは、ただ空を眺めるだけではなく、どのように見えて変化していったのか観察した記録を残すのもおすすめです。何時何分に太陽や月がどんな状態だったか、スケッチをとったり記録したりすると、どのように変化していくかよりわかりやすくなります。

日食・月食を見よう

2023年に日本で見られる日食は4月20日で、月食は10月29日です。太陽や月などの天体について観察し、科学に興味を持つきっかけになるかもしれません。誰でも気軽にできる天体観察なので、この機会をぜひ利用して、親子で観察してみてはいかがでしょうか。

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