発達障害の子どものコミュ力を育てる「アナログゲーム療育」とは?おすすめゲームや癇癪への対応をプロに聞いた

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主に発達障害の子どもたちに向けて、アナログゲームで遊びながらコミュニケーション力を伸ばす「アナログゲーム療育」という活動があります。開発者である松本太一さんに、ゲームをする際の注意点や子どもに合わせたゲームの選び方などを教えてもらいました。

「アナログゲーム療育」とは


アナログゲーム療育とは、主に発達障害のあるお子様や成人の方を対象に、市販されているカードゲームやボードゲームを用いてコミュニケーション力を育てる活動です。200種類以上あるゲームの中から、その人の発達段階に合うものを選び、保護者などが適切な声がけをしてサポートしながらプレイします。

アナログゲームを通じて育まれるものとは


発達障害のある子どもたちに起こりがちなこととして、周りに親や先生など大人しかいなかったり、同年代の人との関わりが少ないことがあります。「コミュニケーション力」は対等な関係の中で相手を気にかけたり、気にかけてもらう中で培われる部分も多く、そのような機微に触れる機会を意識的に整えるツールとしてアナログゲームを使用します。

ゲームを通して、ルールとマナーを守り合うことの成功体験を積んでいきます。その過程の中で、他の子どもたちと調和して仲良くやっていく為のスキルを身に付け、そういうことが自分はできるんだということが自信になり、それが実社会の中で人と関わっていく勇気にも繋がります。

ゲームをするときのサポート法


アナログゲーム療育をする際に知っておきたいシーン別のサポート法について、松本さんに教えてもらいました。

癇癪が起きないように予防する

はじめに、ゲームのレベルを落とし、簡単な設定にしておくことが大切です。癇癪が起きるシチュエーションがあるので、それを分析しサポートしましょう。例えば自分は1位になれると思っていたのに、なぜか負けた。負けて悔しいときは勝ち方がわかっていたときで、負けた理由がわからない、勝ち方がわからないということが癇癪に繋がります。

大人はゲームが難しい方が面白いので、ついレベルを上げてしまいがちですが、その子に合わせたレベルに設定してゲームを進めるようにしましょう。

癇癪を起してしまうとゲームが中断して他の子に迷惑が掛かってしまい、その子たちと関係が悪くなってしまうので癇癪に関しては予防が大切です。癇癪を起しやすい子には、最後までプレイできるようにしてあげることで自信を持ち、癇癪を起しにくくなります。もし、癇癪が起きた場合は、しばらくその子を静かなお部屋に連れて行って落ち着くまで待つということになります。

ゲームを始める段階で輪の中に入れない子の対応

「やりたくない!」と思わせないように、無理に誘わないことが大切です。はじめに近くで、他の子が楽しんでいるところを見てもらい、2回目で誘ってみる。その時のゲームの選び方として見た目にインパクトとがあり、何をするのかわかりやすいゲームがおすすめです。

何度も同じゲームを繰り返す時

大人からすると、分かりきったことを繰り返しているように見えますが、お子さんの中ではそのゲームについてまだわかっていない部分や、スムーズにできない部分があると繰り返し挑戦します。子どもからすると毎回発見があって、ゆっくりゲームを学んでいる過程なのです。本人なりの気づきがあることを知れば、付き合うのにも意味がありまよね。大人は無理のない範囲で付き合ってあげることが大切です。

ゲームのルールを守らなかった時

その場の対応として、怒る・叱るはNG。「ルールと違うからやめてね。もどします」という感じで、さりげなく軌道修正します。ルールを守らないのは、癇癪と同じで理由があって、ゲームのルールがわかってない場合があります。本人としてはよくわからないでやってるのに、叱ってしまうと傷ついてしまう。苦しい、辛い体験で終わらないように進めるようにしましょう。

勝敗を乗り越えるポイント

負けて受け入れられる子はそれでいいのですが、同じ子が負け続ける場合はゲームの設定が間違っていることが考えられます。その場合は、グループでゲームのレベルを合せるようにします。はじめの一回で負けて嫌になる子がいたら、最初だけわざと勝たせてあげます。
最終的にみんなでルールを守って楽しくやるための療育なので、気持ちよくゲームに参加できることが目標です。勝ったり負けたりを繰り返せば、勝敗にこだわりすぎないようになります。勝ち負けに子こだわりが強い子は、みんなで協力してゴールを目指す協力ゲームがおすすめです。

子どものタイプ別おすすめゲーム

アナログゲームを選ぶ際に、子どものタイプ別におすすめの商品を紹介!松本さんのYouTube解説もぜひ、参考にしてみてください。

勝気な子・勝ち負けにこだわる子

【バンディド】

協力型なので勝敗を意識しないで済む!
牢屋のバンディドを逃がさないように、全員の相談協力で1人ずつ通路カードを手札から出して場につなげていきながら、すべての通路の端を行き止まりかループで閉じられるか否かに挑戦するカードゲームです。

対象年齢:6才〜大人
遊べる人数:1〜4人用
プレイ所要時間:15分

【キャプテン・リノ】

負けることを予期しやすい!
ビルを崩さないように、折り曲げたカードを柱にして乗せ、手札から次の床を選んで重ねていきながら、手札を一早く無くすことを目指すゲームです。

対象年齢:5才〜大人
遊べる人数:2〜5人用
プレイ所要時間:10分

ゲームに参加するのが不安な子

【くるりんパニック】

見た目の楽しさでやってみたい気持ちになる。
襲いかかる空賊のヒコーキからニワトリたちを守る、カンタンたのしいアクション・パーティゲーム。

対象年齢:4歳以上
遊べる人数:2〜6人用
プレイ所要時間:5分

【イチゴリラ】

馴染みのある神経衰弱と似たルールなので参加のハードルが低い!
誰もが遊べるペア合わせの神経衰弱に、同じ絵が2枚のペアだけではなく、3枚セットや5枚セットなどが加わり、例えば5枚セットなら5枚を全部見つけなければ取れないため、どれを狙うかが悩ましくて、人の間違いに期待が膨らんで盛り上がるゲームです。

対象年齢:3才〜大人
遊べる人数:2〜6人用
プレイ所要時間:10〜20分

他者の気持ちを想像するのが苦手な子

【かたろーぐ】

他者の好きなものを想像する。
カタログや図鑑などの「品目の一覧」を使い、出題者1人がふきだしコマを置いて示した「順位は秘密だけど好きなもの」を対象に、各順位ごとに他全員で予想してはご褒美のハートコマを集める、わかって・もらって・ココロをつなぐゲームです。

対象年齢:5才〜大人
遊べる人数:2〜8人用
遊べる所要時間:10分〜

【ドラゴンディエゴ】

他者の表情から意図を読み取る。
火炎弾を吐くドラゴンとしてビー玉を転がして的を狙いつつ、他の人はどの的を狙おうとしていたかの予想をして、得点を稼いでいくゲームです。

対象年齢:5才〜大人
遊べる人数:2〜4人用
遊べる所要時間:15分

コミュニケーションが苦手な子

【ドラゴンを探しに】

一人で遊べる絵本形式のゲーム。
ページをめくって物語を読み進めながら、幼い冒険者となって村から旅立ち、状況ごとにときどき迫られる選択と分割ページによってお話が枝分かれし、道具を手に入れたり、怪我をしたりしつつ、守護神として迎えるために崇高なドラゴンを探す、ゲーム絵本シリーズです。

対象年齢:4才〜大人
遊べる人数:1人用
遊べる所要時間:10〜20分

余暇支援にもつながるアナログゲーム

小学生から大人までを対象として、アナログゲーム療育活動をしている松本さん。
「ゲームはルールマナーを守ってまわりと調和していくという点が仕事と類似しているため、就労訓練としても取り入れられています。
アナログゲームは他の療育ツールとは異なり、文化として日常生活や社会生活に存在しているツールなので、社会に出た後も趣味としてその人の人生の一部を支えていくことができるのがすごいところです」

友達作りのツールにもなり、コミュニティに参加するきっかけになるアナログゲーム療育について詳しく知りたい人は公式サイトを確認してみてください!

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お話を伺ったのは……

松本太一さん

東京学芸大学大学院障害児教育専攻卒業教育学修士。大学院在学中は自閉症児療育の「太田ステージ」開発者である太田昌孝医師の指導のもと、東大付属病院や通級指導教室でソーシャル・スキル・トレーニングの実践研究を行う。卒業後、福祉団体や人材紹介会社で成人発達障害者の就労支援に携わった後、放課後等デイサービスの大手FCチェーンに就職。カードゲームやボードゲームなどを使って、発達障害のある子のコミュニケーション力を高める「アナログゲーム療育」を開発する。

現在はフリーランスの療育アドバイザーとして、「アナログゲーム療育」の普及・啓発と療育機関の専門性向上のためのコンサルティングを行っている。

ウェブサイト:アナログゲーム療育のススメ www.gameryouiku.com

文・構成/やまさきけいこ

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