神木隆之介主演のコメディ時代劇『大名倒産』が痛快!朝ドラ「らんまん」との共通点もあり

朝ドラ「らんまん」が絶好調の神木隆之介の最新主演映画『大名倒産』。両作とも笑いあり感動ありの娯楽作品ですが、いくつかの共通点もありました!今回は「らんまん」を絡めつつ、『大名倒産』の魅力をたっぷりとお届けします。

浅田次郎の人気時代小説を神木隆之介主演で映画化

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

6月23日(金)より公開される『大名倒産』は、浅田次郎の傑作時代小説を、神木隆之介主演で実写映画化した話題作です。ご存知、連続テレビ小説「らんまん」で名実ともに国民的俳優となった神木さん。演じているのは高知県出身の植物学者・牧野富太郎をモデルにした槙野万太郎役ですが、純粋なひたむきさや明るい笑顔に、朝から元気をもらっている方も多いのでは?

映画『大名倒産』で神⽊さんが扮するのは、庶民からある日突然、殿になったかと思いきや、多額の借⾦を背負わされるという主人公の松平⼩四郎役。「らんまん」では植物学をとことん追求し、多くの人々を巻き込んでいく万太郎ですが、本作ではあれよあれよという間に、大騒動に巻き込まれていく役どころとなります。

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

一見、「らんまん」とは真逆の構図に思えますが、共通点はたくさんあるこの2作。出会う人々を惹きつけてやまない神木さんの座長力もしかり、何事も前向きに考え、いろんなハードルを頑張って乗り越えていくという希望にあふれたキャラクターもしかり。なんていうか、両作の主人公や神木さんはとてもチャーミングで、見ていてついついサポートしたくなるような庇護欲をそそられます。これぞ、究極の人間力ではないかと。

さらに、『大名倒産』では⼩四郎の母親・なつ役を宮崎あおいが演じていますが、「らんまん」と同様に、同作でもナレーションを務めています。

人を巻き込んでいく人間力がカギとなるコミカルな時代劇

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

神木さん演じる⼩四郎は、もともと越後・丹生山藩の鮭役人の子・間垣小四郎として育ちました。ところがある日、父・作兵衛(小日向文世)の口から、実は小四郎が、徳川家康の血を引く、丹生山藩主の跡継ぎ「松平小四郎」だという衝撃の事実を告げられます!

寝耳に水状態の小四郎でしたが、実の父・一狐斎(佐藤浩市)に会ったあとはトントン拍子で話が進み、丹生山藩主となりました。ところが蓋を開けてみると、丹生山藩は25万両(およそ100億円)もの借金を抱えた火の車状態であり、返済できなければ⾃分が切腹させられてしまうという、崖っぷちに追い込まれます。

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

そんな中、すでに隠居している一狐斎から、借金返済日に藩の倒産を宣言して、借金を踏み倒すという「大名倒産」をするようにと命じられます!そこから、⼩四郎は幼馴染のさよ(杉咲花)や、家来の平⼋郎(浅野忠信)らとともに、「借⾦返済⼤作戦」を開始していきます!

「らんまん」の万太郎が、長屋や東京大学植物教室のみんなをどんどん味方につけていったように、小四郎も「借⾦返済」という大義を果たすべく、仲間を増やしていきます。いつしか向かい風も追い風となっていき、小四郎が少しずつ頼もしい藩主に成長していくドラマがなんとも胸熱です。

そう、本来なら“巻き込まれプリンス”だったはずなのに、逆にいろいろな人を巻き込んでいく側となる小四郎。万太郎と同様に、見ていてエールを贈りたくなるし、実際にだんだん小四郎を助けたいと思う人たちの輪が広がっていくことに。

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

個性あふれるオールスターキャストの本作は、隅々まで行き届いていますが、特に、うつけ者なのに心優しい小四郎の兄・松平新次郎役を演じた松山ケンイチの“はなたれ小僧”ぶりが出色!

また、遊び心あふれる台詞回しや演出も実に愉快。メガホンをとったのは『そして、バトンは渡された』(21)などの前田哲監督ですが、ユーモアを散りばめた作風にも定評があります。小四郎があみだす節約の知恵は、リサイクルやシェアハウス、サブスクリプションなど、現代社会にも通じる内容となっていますが、そこの解説もわかりやすくてナイスです!

命を大切さを伝えるメッセージが心に染みる

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

また、「らんまん」ともう1点共通するポイントは、命の大切さ、生きることの尊さを伝えるメッセージが、脈々と根底に流れているところです。「らんまん」では万太郎の生き様はもちろん、植物を通して生命の輝きを伝えてくれていますが、本作もしかり。

宮崎さん演じる母なつが、小四郎に武士道を説く際に「命を大切にし、毎日を一生懸命生きること」が一番大切だと伝えます。その言葉が、窮地に立たされた小四郎を奮い立たせ、前へ進む一歩をうながしてくれるし、死に急ぐ人を改心させることも。

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

特に、小四郎の生きている時代は、武士が自分のやらかしたとんでもない大失態に対してけじめをつける際に「切腹」という手段に走りがち。劇中でも、何度かそういうくだりのシーンが登場しますが、その度に小四郎は母の言葉を反芻することに。いつの時代も、一番大切なのは「命」なんだなと、当たり前のことを再確認させられそう。そして、そこを味わい深く伝える神木さんの深みのある表情にもご注目。


途中で涙腺を刺激されつつも、後半はたたみかけるような展開となり思わずニヤリ。クライマックスの痛快な流れに心が躍り、観終わったあと、実にスカッと爽やかな気分になれそう。おっと、言い忘れていましたが、ラストシーンはとびきり楽しいエンドクレジットのあとに登場するので、最後までどうか席をたたないでほしいです!

本当にポジティブで、エンターテインメントに振り切った最高の時代劇コメディなので、これぞ親子で観るにぴったりな快作ではないかと。ぜひとも、この週末に、お子さんと映画館でご覧いただきたいです。

『⼤名倒産』は6月23日(金)より全国公開
原作:浅⽥次郎「⼤名倒産」(⽂春⽂庫刊)監督:前⽥哲
出演:神⽊隆之介、杉咲花、松⼭ケンイチ、⼩⽇向⽂世、⼩⼿伸也、桜⽥通、宮崎あおい、浅野忠信、佐藤浩市…ほか
公式サイト:movies.shochiku.co.jp/daimyo-tosan/

文/山崎伸子

©2023映画『⼤名倒産』製作委員会

※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」が正式表記

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