あるある勘違い「台風一過」「台風一家」。正しい用法や類語、英語表現までを解説

台風が過ぎ去るとよく耳にする『台風一過』という言葉。今回は、『台風一過』の意味や語源、使い方、関連語等を一挙にお伝えしていきます。

「台風一過」とは?

まずは、『台風一過』の読み方と意味、語源を押さえておきましょう。

読み方と意味

この言葉は、『台風一過』と書いて『たいふういっか』と読みます。「台風が過ぎ去った後に、空が晴れてよい天気になること」を意味する言葉で、「波乱や騒々しい状態が過ぎ去ったあとの、清々しい、もしくは落ち着いた状況」をたとえる際にも用いられます。

由来・語源

この言葉の由来には諸説ありますが、1935年頃に小説家の北条清一が著作『武州このごろ記』の中で使用したことからはじまったという説が有力とされています。

血腥い台風一過、熊谷宿も明治五年には戸長制度に、(略)文明開化に向って進んで来たわけだ

本文中ではこのように使われました。現在と同様の意味で用いられていることがよくわかりますね。

【注意】「台風一家」と表記するのは間違い

『台風一過』の“あるある”な間違いが、『台風一家』と表記してしまうもの。

子どもの中には音だけを聞いて、「どうして家族なんだろう?」と疑問を抱いている子も珍しくありません。お子さんがもしも勘違いしていたら、正しい意味と書き方を教えてあげましょう。ただし、特に創作物のタイトル等では、あえて『台風一家』とシャレとして表記している場合も。

使い方を例文でチェック!

では、実際には『台風一過』という言葉はどのように使うのでしょうか。例文とともにチェックしておきましょう。

昨日は荒天だったが、今日は【台風一過】のおかげで清々しいほどの晴天だった。

まずは、もっとも一般的な、台風後の晴天を指す場合の例文です。台風が過ぎ去った後は、それまでの荒天が嘘のような快晴になることが多いですよね。

子どもたちを寝かしつけた後は、まるで【台風一過】のような気分になる。

このように、にぎやかな状況や騒動が終わって、一息ついた時のことを『台風一過』と例える場合もあります。

11月の半ばから続いた年末進行を終え、社内はまるで【台風一過】のような雰囲気になっている。

『台風一過』という言葉は、このようにビジネスシーンでも使うことができます。忙しい時期や大変なプロジェクトがひと段落した際に使ってみましょう。

類語や言い換え表現は?

では、『台風一過』はどのような言葉で言い換えることができるのでしょうか。ここでは、『台風一過』の類語をご紹介します。

1:雨過天晴(うかてんせい)

「悪かった状況や状態が、好転すること」を意味する『雨過天晴』。物事の好転を、雨が止み空が晴れわたる様にたとえた言葉です。「台風が過ぎ去った後の快晴」の意味を持ち、「トラブルが過ぎ去った後の清々しいさま」などの比喩として用いられる『台風一過』とは似た言葉と言えます。

ただし、『台風一過』は悪かった状況に限らず、にぎやかな・騒々しい状況が過ぎた後に落ち着く様子も言い表すことができるため、『雨過天晴』とまったく同じ意味を持つわけではありません。

2:雨降って地固まる(あめふってじかたまる)

『雨降って地固まる』とは、「悪いことが起こったあとは、基盤がしっかりしてよい状態になること」を、雨が降ったことで地盤が固まる様子にたとえた言葉です。

こちらもまた、まったく同じ意味を持つとは言えませんが、「台風が過ぎ去った後の快晴」の意でありながら、「悪いことが過ぎ去った後に落ち着く様子」などの比喩として用いられる『台風一過』と、使われ方が似ている言葉として覚えておきましょう。

対義語は?

では、『台風一過』の反対の意味を言い表す際には、どのような言葉を使うことができるのでしょうか。明確な対義語は存在しないため、反対に近い意味を持つ言葉を集めました。

覆水盆(ふくすいぼん)に返らず

『覆水盆に返らず』とは、「一度起きたことはもう元に戻すことができないこと」を意味することわざです。

「覆水」とは容れ物をひっくり返してこぼしてしまった水のことなので、こぼれた水はもう元には戻らない様子をたとえに用いた言葉であることがわかりますね。「悪天の後に好転すること」を意味する『台風一過』とは反対の意味のニュアンスを持つ言葉として挙げられるのではないでしょうか。

蟻の穴から堤(つつみ)も崩れる

「蟻の穴だと思って油断していると、頑丈な堤防でも崩れることがある」という意味を持つ『蟻の穴から堤も崩れる』。些細な事柄がきっかけとなって、大事を招くこともあるというたとえとして使われます。大きな台風が過ぎ去ったあとに、むしろ好転したり、清々しい状態になったりする『台風一過』とは反対に近い言葉と言えなくもないでしょう。

英語表現は?

では、『台風一過』は英語ではどのように表現できるのでしょうか。『台風一過』に似たニュアンスを持つ英語表現をご紹介します。

clear weather after a typhoon has passed

“clear weather after a typhoon has passed”という英語表現は、「台風が過ぎた後の快晴」と訳すことができます。“clear weather”は「晴れた天気」、“after a typhoon has passed”は「台風が通り過ぎた後」の意味。日本語よりも少し長い文章になってしまいますが、『台風一過』とほぼ同じニュアンスで使うことができます。

the calm after the storm

“the calm after the storm”は、そのまま『台風の後の穏やかな天気』と訳すことができます。“the storm”を“typhoon”と言い換えてももちろんOK。短くシンプルで、日常的により使いやすい表現ではないでしょうか。

台風一過はなぜ晴れる?

今回は『台風一過』の意味や使い方、関連語をご紹介してきました。

『台風一過』で快晴になる理由は、高気圧を引き寄せながら進む台風が過ぎ去ることで、高気圧だけが残るからなのだとか。高気圧に覆われた場所には、下降気流が起きて雲が発生しにくい状態になるため空がきれいに晴れるのです。台風が過ぎた後に空が晴れていたら、ぜひ『台風一過』という言葉を使ってみてくださいね。

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文・構成/羽吹理美

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