スタンフォード大学へ進学した息子3人を自ら学ぶ子に。アグネス・チャンさんの「愛情たっぷりな戦略的子育て」とは?「勉強は自由を手にするための手段」

教育学博士としても活動している、アグネス・チャンさんに子育てインタビュー続編。前回は、今の時代を生きる子どもたちに必要なことを教えてもらいましたが続編では、小学生の勉強法や思春期の子どもとの付き合い方などについてお話をお伺いしました。

子どものスマホ・ゲームとの付き合い方

__スマホやゲームとの付き合い方で気を付けることはありますか?

アグネスさん:私が子育てをしていたときよりも今はスマホ・ゲーム依存は深刻な問題ですね。依存症にならないように、きちんと子どもに説明することが大切です。

「なんでゲーム中毒になるのか知ってる?興奮することによって脳が気持ち良くなって、また勝ちたいと思うから続けて長時間やってしまうんだよ」と。ゲームで遊ぶのはいいのですが、ゲームに遊ばれないように気を付けないといけません。

ただ説明するだけではなく、代わりに彼らが楽しくなるような活動が必要ですね。私だったら、スマホやゲームよりも面白いことを子どもに提案して、一緒に遊んで忙しくさせます。「近所の公園の池にカエルに卵があったから見に行こうよ」とか、子どもが興味を持ちそうなことがいいですね。

わが家では子どもたちが小さかった頃、紙飛行機を作って飛ばしたり、庭で水風船合戦をしたり、いろいろな遊びを親子で思いっきり楽しみました。

長男は釣りが好きで、部屋を海に見立てて二段ベッドの上から彼は釣り人、私たちは魚役をして遊ぶのもハマっていました。彼が「釣った!」と言うと「なに釣った?」と聞いて、「タコ!」と言われたらタコになりきるんですよ。いろんな海の生き物になりきってあげると、すごく喜ぶんです。

長男との釣りゲームでタコになりきるチャーミングなアグネスチャンさん

また、親子で自作の物語を作って遊んだりもしました。私は『ペンギンの冒険』というお話を作ったんです。お母さんペンギンが子どものペンギンとはぐれ世界中の海を泳いで探しに行くというストーリーです。これには私の下心もあって。子どもたちに地理を覚えさせるというのが目的で、各国の風習などを取り入れながら話していました。

ちなみにお父さんの作った『へったらへったらお』というお話は、子どもたちに大人気。ヘタロウが大きな屁を出して世界を救うストーリーなのですが、踏ん張って屁を出す仕草がおもしろくて私もよく笑いました。

要するに自分の家でしかやらない事をたくさんやっていくと子どもたちは心が充実して、他の雑音も減ってくる。お金が掛からない楽しい時間は、かけがえのない家族の思い出になります。

小学校時代の勉強のサポート法

__子どもが勉強嫌いにならない親のサポート法などがあったら教えてください

アグネスさん:勉強がイヤになるのは、勉強と自分の毎日がつながっていないから。勉強しても意味がないと思ってしまっているんです。先生や親がやれというからやる、だけのものになってしまっているので、勉強をする目的や目標を理解させることが大切です。

今は、パソコンもできないといけないし、さまざまな技術を身に付けないと生きていけない時代です。学校は生きていくうえで最低限必要なことを教えてくれる場所です。将来、自分がやりたいことをやって、自由に楽しく生きていきたいなら勉強が必要になります。いまは勉強することが自由ではないと感じるのかもしれませんけど、勉強は自由を手にするための手段なんです。

なぜ勉強が必要なのかを子どもに説明して

学校生活を送る上で、「あぁ明日テストだ、どうしよう」と日々おびえるより、勉強はできたほうが楽しいでしょ。だから、もし勉強でつまずいているところがあるなら「どこからわからなかった?」と、子どもに確認して、わかるところまで一緒にさかのぼって復習していきましょう。「わからないところがわからない」と答えても、一緒になって根気よく学習したことをさかのぼり、どこからわからないのか一緒に探すといいですよ。自分に自信を付けて「勉強は楽勝!」と思ったとたんに学校、勉強が好きになります。

__息子さんたちは、率先して勉強をする子でしたか?

アグネスさん:私は戦略的に子どもたちが本好きになるように育てました。本を読むのが好きになれば学校の勉強は楽勝です。子どもたちに、勉強しなさいとは言わなかったですね。学校で新しい教科書をもらってきたら、その日のうちに2人で読むんです。この学期は何を学ぶのか、頭に入れて先回りしておくんです。予習しておいて自信を持って学校に行くと学校が好きになります。

また、歴史を学ぶ時は、関連する映画を観たり、博物館に連れて行ったりしました。平べったい勉強を立体化するんです。立体化すると忘れないないんですよね。それを繰り返すことで自分で自ら探究できる子になっていきます。

子育ては先回りして戦略的に!

アグネスさん:本はただ読むだけではなく、子どもに「パパはこの物語を知らないから教えてあげて」と声を掛けたりして、本の内容を他の人に話すということをよくさせていました。これが大切なんです!「読む」、「理解する」、「自分の言葉で伝える」ことができるようになります。

また、わが家では、大人の話、子どもの話と分けないで必ず一緒に話をしていました。大人の会話を聞かせるんです。そして会話をしている時に、「で、君はどう思う?」と突然子どもに意見を求めるんです。興味がない、自分に関係がないことでも人の話を聞いて、自分なりに理解して、自分がどう思うか考えることを習慣にさせました。

これはなんの訓練かと言うと、学校でもおんなじ状況になるわけです。先生の話を聞く、聞いた時に理解し、自分はどう思うかなと考え、自分の意見を伝える。

このコミュニケーションのプロセスを訓練すると授業中に先生に意見を求められても戸惑いません。習慣的に行うことで思考力も育まれます。

思春期の子どもとの付き合い方

__子どもがイライラしやすい思春期の子育てで気を付けることはありますか?

アグネスさん:思春期はホルモンの関係で体や心がものすごくコントロールしにくくなります。攻撃的になったり、イライラしたり、落ち込みやすくなったり。この仕組みを子どもにきちんと教えないといけないんです。

思春期のホルモンは二つの役目を持っています。一つは「体が大人に変わる」ため、もう一つは「親離れしやすくする」ためです。子どもがイライラして扱いにくい存在になるから、大人も親離れするときにつらくない、という自然の仕組みなのですが、人間は進化して、なかなか親離れ・子離れできなくなりました。そのため、反抗期と言う言葉が出てきたりしましたが、この時期、必ずしも子どもが反抗するとは限らないですから、反抗期というものはないんです。

「すべてはホルモンのせい」と子どもにしっかりと伝えて

私は子どもに、「これはホルモンのせいだからね、ママのせいじゃないよ。パパのせいでも、君のせいでも、社会のせいでもない。ホルモンのせいだからね。イライラしたらホルモンのせいだと思えばいいんだよ」と話しました。

きちんと説明しておかないと、子どもは「最近親がうるさくなったなぁ、俺の友達が嫌いなのかな、成績が良くないのかな、もう俺のこと大事にしてないんだな・・・」と勝手に悪い方に想像してしまうんです。それで、家族でのケンカが増えてどんどん悪循環になってしまいます。

反抗期ではなくホルモンをコントロールできないだけと分かれば、家族は「ホルモンのせいか」と理解すればいいし、子どもは自分が「さっきは言い過ぎた」と思ったときは気分が落ち着けば謝ってきます。兄がイライラして弟に怒って、下の子が泣いて私のところに来た時も、「ほらっ、ホルモンのせいって言ったでしょ」って。「またホルモンかー!」って言いながらみんなで笑って乗り越えました。

__思春期のお子さんとの接し方で気を付けたことはありますか?

アグネスさん:接し方というよりは、思春期の子は親や社会よりも「友達」が大切になってきます。そういうときに信頼できる友達がいると安心ですよね。

次男がやんちゃで、友達と一緒に悪いことをしたことがありました。そのときに、良い友達と悪い友達の違いについて話をしました。

友達が悪いことをしようとしたときに止められないのは、その子にとってあなたは良い友達じゃない。ちゃんと言えるのが良い友達。あなたと遊んでいると友達はどんどん悪いことをしてしまう。止められない君のせい。ちゃんと言える関係の友達と一緒にいたほうがその子もあなたもお互いに倍楽しくなると思うよ」と。

友達を否定するのではなく、「相手にとって自分は良い友達なのかどうか」をよく考えるように伝えました。

子育てママへの応援メッセージ

__子育て中のママへのメッセージをお願いします

我が子の「愛する力」を伸ばしてあげて

アグネスさん:まず、お母さんは生んだだけで偉い!自分を褒めよう!

そして、この時間を大切に悩みすぎないでエンジョイして欲しいですね。せっかく天使が来てくれたんですから。子育てという限りある時間を大事にしましょう。そして、あともう少しだけ自分を信じよう!自分が信じられなかったら本を読んだり、勉強したりして知識を得て、想定外のことを想定内にできるようにしよう。

子育ては、結果をすぐに求めようと思わないでプロセスを大事にして楽しんでいって欲しいです。完璧な子なんていないから、成績が良くても悪くても大人になって食べていければいい。人を愛すること、人から愛されること、たくさんの人ではなくてもいいから1人だけでもその子を愛してくれるような人間に育てることが大切です。

愛することは、人間の一番大きな力です。その力は筋肉と同じで使えば使うほど強くなるんですよ。ぜひ我が子の「愛する力」を伸ばしてあげてほしいです。

 

前回の記事では、子どもの自己肯定力を育むことが大切だというお話がありましたが、親である私たち自身も自己肯定感を高めることが大切だということを教えてくれました。失敗することもたくさんあるけれど自分を褒めて、子どもと一緒に過ごす時間を大切に子育てを楽しんでいきたいですね。

子どもの自己肯定感の育み方を聞いた前回の記事はこちら!

【アグネス・チャンさん】「AI時代は、とんがっている人間を育てることが大切。まわりから非難されたり比べられても、ユーモアでかわして」子どもの好きを伸ばすアグネス流子育て流儀とは
AI時代を生きる子どもたちの教育で必要なこと __今を生きる子どもたちに必要な力とはどんな力でしょうか? アグネスさん:どの時代でも...

プロフィール

アグネスチャン|歌手・エッセイスト・教育学博士
1955年香港生まれ。72年、日本歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。85年に結婚、翌年の86年に長男を出産。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。留学中の89年に次男を出産。94年同大で教育博士号(Ph.D)取得。96年に三男を出産。息子3人全員がスタンフォード大学に合格したことでも話題に。ユニセフ・アジア親善大使、日本対がん協「ほほえみ大使」など芸能界のみならず幅広く活躍。

 

撮影/五十嵐美弥 取材・文/やまさきけいこ

編集部おすすめ

関連記事