背骨がねじれる「思春期特発性側弯症(AIS)」患者の9割近くが10歳以上の女児。悪化を防ぐには家庭での早期発見が肝要

背骨が過度に曲がる思春期特発性側弯症(AIS=Adolescent Idiopathic Scoliosis)。AISは、クラスに1人はいる可能性があるといわれる疾患で、早期発見・早期治療をしないと、症状が進行して背骨がさらに曲がってしまう可能性が。
医療、スポーツなどの分野で人々の身体活動を支援する日本シグマックスは、2023年12月8日、思春期特発性側弯症の実態と最新の治療について会見しました。その中で、福島県立医科大学会津医療センター整形外科・脊椎外科学講座主任教授 白土修先生が解説した、思春期特発性側弯症の特徴や治療法、家庭で早期発見するポイントなどを紹介します。

側弯症の80%は原因不明

側弯症(そくわんしょう)は、背骨のねじれを伴う三次元的変形が特徴です。側弯症はいくつか種類がありますが、10歳以降に発症する思春期特発性側弯症(以下AIS)は、80~90%は女児に見られ、家族歴は約36%。生まれつき背骨が曲がっている先天性側弯症、神経や筋の異常が原因で起こる症候性側弯症などが原因のこともありますが、側弯症の80%は原因不明です。

AISの早期発見には、家庭での定期的なチェックがカギ

AISは早期発見・早期治療がカギとなります。受診のきっかけは「学校の健康診断で発見された」が約68.5%ですが、学校の健康診断は衣服を着用したまま行うため見落とされるケースも少なくありません。また痛みなどの症状がないため、発見が遅れやすい傾向があります。

そのためお風呂に入るときなど裸になったときに、子どもの状態をよく見てください。チェックの仕方は次の通りです。家庭でのチェックを習慣にしましょう。

 【家庭でのチェックの仕方】

チェックは、上半身裸でまっすぐに立った状態で行います。1つでも該当したときは、整形外科を受診しましょう。

□左右の肩の高さが違う

□左右のウエストの位置が違う

□左右の肩甲骨の位置が違う

□前屈をして左右の背中の高さを確認する

 

AISは、骨が成長する20歳ぐらいまで進行しやすい

AISは、症状が進行しやすい特徴があります。とくに注意が必要なのは、骨が成長する20歳ぐらいまでです。悪化すると見た目の問題だけではなく、将来、腰痛や坐骨神経痛などを発症し、日常生活に支障をきたすこともあります。

AISは、背骨の弯曲の角度などによって治療方針が決まる

AISは、Cobb(コブ)角の大きさや骨年齢、初潮の有無などで治療方針が決まります。Cobb角とは背骨の湾曲の角度です。Cobb角が小さい場合は、定期的に受診して症状が進行していないか確認します。

Cobb角が2040°の場合は装具療法。40°以上の場合は手術が必要です。

AISは、マッサージや整体などでは治りません。

AISの手術は、背骨にボルトを入れて弯曲を矯正する大きな手術です。そのため早期発見して装具療法で進行を抑えることが理想です。

「体幹装具SF用パーツ」の誕生で、AISの装具療法は大きく前進

AISの装具は、以前はかさばって目立つものが主流でした。長時間装着するほど効果は高いのですが、苦しくて着け心地が悪いため治療を断念する子も多くいました。友だちにからかわれるなどの問題もありました。

しかし日本シグマックスが「体幹装具SF用パーツ」を開発したことで、AISの装具療法は大きく前進しました。子どもでも装着しやすく、服を着ていると目立たないので「恥ずかしい」など精神的な負担も軽減できます。

▲「体幹装具SF用パーツ」を組み合わせた装具。ダイヤルを回して、子どもでも締め具合の調整ができる。

初期平均矯正率は腰椎カーブ49%、胸椎カーブ32

装具療法の目的は、症状を進行させないことですが、下の表のように初期平均矯正率は全体42%、腰椎カーブ49%、胸椎カーブ32%という結果も出ています。

▲第 56 回日本側彎症学会学術集会 思春期特発性側弯症に対する新しい装具の中期治療成績;多施設共同研究/対象:思春期特発性側弯症患児 59 名(10-15 歳)より

▲「体幹装具SF用パーツ」を使った11歳女子の矯正効果。治療開始から1年後、装具なしでは10°、装具ありでは22°も背骨の湾曲が矯正された。

AISは、まれな疾患ではありません。クラスに1人はいる可能性があるとも言われています。「子どもの姿勢が気になる」というときは、早めに整形外科を受診しましょう。側弯専門医、脊椎外科専門医がいる医療機関だとより詳しい検査・診察が受けられます。

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記事監修

白土修先生|福島県立医科大学会津医療センター 整形外科・脊椎外科学講座 主任教授
医学博士。北海道大学医学部医学科卒。米国・Johns Hopkins University整形外科留学、2004年埼玉医科大学整形外科学講座准教授などを経て現職。著書に『15分の「腰みがき体操」で腰痛をすっきり改善!』(SBクリエイティブ)ほか。

協力/日本シグマックス(株) 取材・構成/麻生珠恵

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