思春期の女子に多い「脊柱側わん症」って?やせ型で高身長なら要注意!早期発見と治療について専門医が解説

脊柱側わん症は、脊柱(背骨)が何らかの原因で曲がる病気です。100人に1人の割合で発症し、とくに12歳前後のやせ型・高身長の女の子に多い傾向があります。脊柱側わん症に詳しい、北里大学医学部 整形外科学主任教授 髙相晶士先生に、原因や予防、早期発見の大切さについて教えてもらいました。

脊柱側わん症は100人に1人。80%が特発性側わん症

脊柱側わん症は総称で、生まれつき背骨などに異常がある「先天性側わん症」、神経・筋肉の疾患に伴い発症する「神経筋性側わん症」などいくつか種類があります。最も多いのが「特発性側わん症」で、脊柱側わん症の約80%を占めます。

脊柱側わん症は100人に1人の割合で発症し、女の子にいたっては50人に1人の割合といわれています。

特発性側わん症は遺伝性以外、原因は不明

 

特発性側わん症の原因は、遺伝性ということはわかっていますが、そのほかは不明なことが多いです。両親が脊柱側わん症だと、子どもの発症率は20~30倍になるというデータもあります。

なかには「動画を見たり、ゲームばかりしていて姿勢が悪いから背骨が曲がるのでは?」と思うママ・パパもいるかも知れませんが、今のところ、そうしたライフスタイルとの関係は明らかになっていません。

また、①背が高くてやせ型の女の子に多い、②12歳前後で発症・進行しやすいという傾向があります。12歳前後といえば、女の子の成長期に当たります。そのため女の子に多いのではないかと考えられています。

一方、男の子の発症率は女の子の約1/10です。男の子は女の子に比べて成長期が遅いため、発症率が低いのではないかといわれています。

成長期なら、半年に1回は家庭でチェックをして早期発見を

脊柱側わん症は早期発見が大切ですが、親子で一緒にお風呂に入ったりしていないと気づきにくいです。そのため子どもが成長期なら、半年に1回は家庭で次のチェックを行ってください。また遺伝性のため、家族に脊柱側わん症の方がいる場合は、成長期に関わらずチェックを行いましょう。

子どもにまっすぐ立ってもらってチェックすることがポイントです。

【家庭でできる脊柱側わん症のチェック】

.肩の高さに左右差がある

2.背中の肩甲骨の出っぱりに左右差がある

3.腰の高さに左右差がある

4.前屈姿勢で背中を見ると、背中の高さに左右差がある

 

1つでも該当したときは、早めに整形外科で診てもらいましょう。

また小・中学校の健康診断で異常が発見されることもあります。その場合は、必ず整形外科を受診してください。

写真は、軽度の脊柱側わん症。肩甲骨の骨の出っぱりが左右で異なっている。

進行する子は約30%。医師の指示に従い必ず受診

脊柱側わん症が疑われると、整形外科でCobb(コブ)角を計測します。

Cobb角が25度以下だと経過観察となります。装具療法などが必要となるのは、Cobb角が26度以上からです。

経過観察は、程度によって4ヵ月に1回、6カ月に1回など受診の頻度が異なりますが、必ず診察を受けてください。症状が進行する子が約30%います。脊柱側わん症は軽度でも、完全に治ることはありません。悪化させないことが大切です。

進行している症例

以下の写真は、脊柱側わん症の進行の様子。成長に伴い、背骨が曲がっていくことがわかる。

・6歳

・8歳

・9歳

・10歳(初潮以降)

 

予防と悪化防止には、適度な運動と早寝・早起き

スイミングは、筋肉をつける運動として最適

 

脊柱側わん症の予防と悪化を防ぐには、適度に運動をして筋肉をつけることが有効です。脊柱側わん症の傾向として、先ほど背が高くてやせ型の女の子に多いと言いましたが、そうした子はやはり十分に筋肉がついていません。筋肉をつけるためには、とくにスイミングがおすすめです。

また早寝・早起きの規則正しい生活も大切です。夜型で睡眠不足の子にも、脊柱側わん症は多い傾向が見られます。

コンプレックスやストレスから、子どもを守って

脊柱側わん症になると姿勢が悪くなり、子ども自身、コンプレックスを抱くようになります。またママやパパから「姿勢が悪いよ」と注意を受けることが増えれば、ストレスも増します。

もし脊柱側わん症と診断された場合は、

①医師の指示に従い、必ず受診をする

②適度に運動をして筋肉をつける

③早寝・早起きの習慣をつける

この3点を守ることを心がけて、子どもには過度なストレスを与えないようにしましょう。

 

記事監修

髙相晶士先生|北里大学医学部 整形外科学 主任教授
医学博士。国立千葉東病院医長、北里大学医学部整形外科学講師などを経て現職。専門は、脊柱側わん症、脊柱変形。日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会認定指導医などを務める。

症例写真提供/髙相晶士先生 取材・構成/麻生珠恵

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