食中毒は冬でも発生!寒い時期に多いのはノロなどのウイルスによる食中毒。餅、みかんはカビを取り除いても乳幼児には食べさせないで!

昨年の「食品添加物不使用」を謳ったマフィンによる食中毒事故、弁当による集団食中毒などが立て続けに起こった報道は記憶に新しいところです。食中毒というと、梅雨時や夏に発生するイメージがあるママ・パパも多いかもしれませんが、実は冬も食中毒は発生します。寒い季節に注意したい家庭での食中毒について、川崎医科大学附属病院 小児科 中野貴司先生に聞きました。

夏に多い細菌による食中毒は、冬にも発生! 「寒いから大丈夫」とは考えないで

 

冬に特に多いのは、ノロなどのウイルスによる食中毒

梅雨時や夏に特に多いのは、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌O157、サルモネラ菌などの細菌による食中毒です。原因食品は、加熱不十分な肉や細菌を含んだ水などさまざまです。

冬に特に多いのは、ノロなどのウイルスによる食中毒です。ノロウイルスの原因食品はカキを含む2枚貝が多く報告されています。しかし寒い時期でも細菌による食中毒は発生していて、食中毒も季節性がなくなってきています。

厚生労働省が発表した2022年食中毒発生状況によると、細菌による食中毒は258件で、その中で最も多いのはカンピロバクターの185件でした。ウイルスによる食中毒は63件で、すべてノロウイルスによるものでした。

食中毒 – 統計資料, 厚生労働省|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

202312月にも飲食店で細菌による食中毒が発生

  • 2023年11月に起こったイベントで販売されたマフィンの食中毒事件をはじめ、12月には、兵庫県の2軒の飲食店で次のような食中毒が発生しました。
  • ・牛のレバ刺しや魚介類の刺身などを食べた4人が発熱や下痢などの症状を訴えた。検査の結果、カンピロバクターが検出された。牛の生レバーは現在、提供が禁止されているが、この店では常連客に提供していたと見られている。
  • ・クリームシチューや豚肉の香草パン粉焼きなどを食べた18人が、腹痛や下痢などを発症。検査の結果、食中毒を引き起こすウエルシュ菌が検出された。

家庭でも注意しなければ、食中毒は起きる

このように12月になっても細菌による食中毒は発生しています。加えてウイルスによる食中毒も発生しやすいです。

そのため「寒い時期だから大丈夫」と考えるのはNGです。また食中毒というと、飲食店や施設などで発生するイメージがあるかもしれませんが、家庭でも注意をしていなければ食中毒は起きます。前述の厚生労働省の発表では、2022年家庭で起きた食中毒は130件にのぼり、飲食店、不明の次に多いです。家庭の場合は、食中毒が起きても報道されないので目立たないだけです。

家庭で家族と同じ料理を食べて、複数人に下痢、腹痛、嘔吐、発熱などの症状があるときは食中毒も疑いましょう。

乳幼児に脱水のサインが見られたら、すぐに受診

食中毒で特に注意してほしいのは、乳幼児です。乳幼児は脱水症になりやすいので、下痢や嘔吐が続くと大人以上に衰弱しやすいのです。

嘔吐・下痢が続いて、次のような症状が見られるときは、すぐに受診してください。

乳幼児がすぐに受診した方がいい症状

1)いつもよりおしっこの量が少ない

2)唇がカサカサしている

3)母乳、ミルク、水分を受けつけない・いつもより飲まない(飲んでもすぐに吐く)

4)目がうつろ・目が合わない

5)意識がはっきりしない

6)興奮している

おっぱい、ミルク、水分をいつもより飲まないけれど、比較的元気なときは乳幼児用の経口補水液を飲ませると体調が回復することもあります。万一に備えて、ストックしておいてもいいでしょう。

食中毒を防ぐ7つのポイント

食中毒は、細菌やウイルスで汚染された食物を食べることで発症します。予防には次のことを心がけましょう。

ポイント1 新鮮な食材を購入し、購入後は冬でも早く冷蔵庫・冷凍庫に入れて保存する。

ポイント2 肉や魚はほかの食材に肉汁などが付着しないように、個別にラップをしたり、容器に入れて保存する。

ポイント3 調理前・食事の前には、しっかり手を洗う。

ポイント4 生の肉や魚を切った包丁、まな板は食器用洗剤で洗い、流水でしっかり洗い流してから、次の食材を調理する。

ポイント5 加熱が必要な食材は、しっかり加熱する。

ポイント6 残った食材・食品は、容器に入れて早く冷蔵保存する。時間が経ったものは処分する。

ポイント7 焼肉やバーベキューで生肉を焼くときはトングを使う。

(*生肉に触れた食具が感染源になることもある。生肉を取ったり、肉をひっくり返したりするのはトング。両面が焼けた肉を取るのは箸にして、生の肉に付着している菌が焼けた肉に付かないようにする)

バーベキューなど屋外での食事は、より一層注意を

上記の予防ポイントは、家庭では比較的実行しやすいと思います。しかしアウトドアなど屋外では、生の肉などを適切な温度で管理できなかったり、まな板、包丁などを流水で十分に洗い流せないなど、食中毒のリスクが上がりやすくなります。

2023年11月、茨城県のりんご園で試食用のりんごを食べた客12人が体調不良を訴え、検査の結果O157の集団食中毒と判明しました。

また20238月には、石川県の流しそうめん店でカンピロバクターによる食中毒が発生し、患者数は892人にのぼりました。

りんごもそうめんも、食材自体は食中毒のリスクはありません。しかし、流しそうめんは使っていた湧き水からカンピロバクターが検出されていて、そこから食中毒が広がりました。

バーベキューなど屋外での食事は、より一層注意が必要です。

餅、みかんなどは、カビを取り除いても乳幼児には食べさせないで!

取り除けば安全だと思いがちな餅のカビ。乳幼児に与えるのはNGです。

餅、みかんなどにカビが生えたときは、基本的には処分しましょう。少しのカビだと、カビの部分を取り除いて食べる家庭もありますが、目には見えなくてもカビで汚染されていることがあります。とくに抵抗力が弱い、乳幼児には食べさせないでください。

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記事監修

中野貴司先生|川崎医科大学附属病院 小児科
部長・教授。専門は小児科、感染症、予防接種、国際保健。日本小児科学会小児科専門医、日本感染症学会専門医・指導医。

取材・構成/麻生珠恵

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