秋に控える米国大統領選挙はバイデン大統領とトランプ氏の一騎打ち?
今年は秋に米国で大統領選挙が行われますが、現在のところ、現職のバイデン大統領とその前に大統領を務めたドナルド・トランプ氏の戦いになる可能性が非常に高いです。バイデン大統領は民主党で、トランプ氏は共和党ですが、共和党の支持者の中でトランプ氏の人気は絶大で、共和党の他の候補者たちはなす術がない状況です。最近も米国オハイオ州やニューハンプシャー州では、バイデン大統領に挑む共和党の候補者を選ぶ選挙が行われましたが、トランプ氏が圧倒的勝利を収めました。
トランプ氏はどんな人?
トランプ氏とはどのような人物なのでしょうか。簡単に説明すると、トランプ氏は1946年6月にニューヨークで生まれ、ニューヨークで育ったバリバリのニューヨーカーで、大学を卒業後、1971年に父親の不動産業を受け継ぎ、その後高層ビルやホテル、カジノなどの建設を次々に手がけ、いつの間にか不動産王と呼ばれるまでの大富豪となりました。そして、その勢いのまま今後は政治の世界に殴り込みし、2016年の大統領選挙でヒラリークリントン氏(夫も以前は米国大統領)に勝利し、第45代米国大統領に就任しました。ヒラリークリントン氏は夫婦そろっての米国大統領を狙っていたはずですが、それはトランプ氏によって阻止されました。
アメリカファーストを推し進める
トランプ氏は政治経験が全くない初めての米国大統領となりましたが、その後世界はトランプ氏の行動に驚くことになりました。トランプ氏は、「米国の雇用や経済、安全を守る」というスローガン(アメリカファースト)を強く掲げ、米国の利益にならないとするパリ協定(温暖化対策を世界各国がどのように進めていくかの指針)から離脱するなど、国際社会、国際協力から背を向ける行動を取り続け、英国やフランス、ドイツなど本来は仲良しな国とも疎遠な関係になっていきました。
また、大統領に就任直後から、トランプ氏は北朝鮮の指導者である金正恩氏をロケットマン(北朝鮮がミサイルを繰り返し発射することから)などと挑発したことから、2017年には朝鮮半島危機が生じ、米国と北朝鮮との間で本当に戦争が始まるのかと緊張が高まりました。
大胆なトランプ氏、支持される理由は2つ
では、なぜこのような大胆な行動を取るトランプ氏が人気あるのでしょうか。日本ではバイデン大統領は落ち着きのある人、トランプ氏は過激な人と思う方々が多いかもしれませんが、米国民の間で支持される理由は主に2つあると思います。
1つは、使う言葉や話す内容が単純に分かりやすく、しかもクリアーだからです。日本の政治家は、難しい言葉を使ったりと、国民がすぐに理解できないことが多いので関心を引き寄せにくいのです。NHKニュースでは時々、各政党の支持率を報道していますが、最も多いのは“支持政党は特にない”です。
それと比べ、過激な発言はたびたび問題となりますが、トランプ氏は「米国第一だ」、「米国民の雇用を守る」などと非常に分かりやすい内容、クリアーな発言をするので、米国民からは理解しやすい候補者となるわけです。
2つ目は、1つ目とも関連しますが、やはり米国を守るという強い意思です。トランプ氏は「ウクライナへの支援を停止する」、「外国の紛争に介入しない」、「中国製品から米国を守る」など、国家の安全と繁栄を守ることを誰よりも強くアピールしています。
危機感と不安が相まっている中、明確に「米国を守る」と発言し行動するトランプ氏は強く支持される
今日の米国は、昔のように世界で圧倒的な力を持っていた米国とは違います。中国やインドなど多くの経済大国が台頭し、米国の1人勝ちの時代ではありません。米国民もそれをよく理解していて、「なんで米国が外国の紛争に関与するのか理解できない」、「外国のことよりまずは米国のことだ」などの考え方は米市民の間でも広がっていて、正にトランプ氏の考え方は今日の米市民と重なるのです。
この記事のPOINT
①この秋の米国選挙はバイデン氏とトランプ氏が一騎打ちになる可能性が高まっている。
②トランプ氏の掲げる政策は、「米国を守る」という意思がはっきりとしていて、国民が理解しやすい。
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
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構成/HugKum編集部