世界各国で選挙が行われる2024年
2024年が始まりましたが、日本では能登半島を中心とする地震や日航機の事故が発生。世界では米英軍がイエメンを拠点とする親イランの武装勢力へ空爆を行うなど、既に大きな出来事が生じています。そのような中、今年の世界情勢はどう動いていくのでしょうか。
今年は世界各地で選挙が行われる選挙イヤーですが、その先陣を切って台湾では1月13日に次のリーダーを選ぶ総統選挙が行われ、現職の民進党 蔡英文氏の政権で副総統を務める頼清徳氏が勝利しました。今年春に頼新政権が発足しますが、最大の焦点は中国との付き合い方で、その行方を諸外国が注目しています。
頼清徳氏の当選で、中国・台湾関係は緊張
頼清徳氏は蔡英文氏と同じく、自由や民主主義といった価値観のもと米国との関係を重視し、台湾統一を目標に掲げる中国の習政権には屈しない姿勢で対応すると思われます。中国側も台湾民進党を独立勢力と位置づけており、今後4年間は緊張した中台関係が続くことは確実と言えるでしょう。
蔡英文氏は8年間総統を務めましたが、その間幾度となく中国からの圧力に直面してきました。
たとえば、中国は蔡英文政権に経済的圧力を掛けるため、台湾産の柑橘類やパイナップル、高級魚ハタなどの輸入を突然全面的に停止するなどしました。また、中国軍機が両国の事実上の境界線である中台中間線を超えたり、台湾の防空識別圏に侵入したりするなど、中国は軍事的にも台湾へ圧力を加え、こういった軍事的威嚇は現在でも続いています。
中国の圧力により、台湾と国交を持つ国が減少
さらに、最近では南太平洋の島国ナウルという国が、台湾との外交関係の断絶を発表し、新たに中国と国交を結ぶことを発表しました。
この背景には中国がナウルへ経済支援を行うなどお金の流れが大きく影響していますが、これで台湾と国交を持つ国は世界で12カ国にまで減少しました。蔡英文政権の8年間、台湾から中国に外交関係を移す中小国が増えていますが、中国はこういった中小国に“経済的支援を行うから台湾との関係を切れ”と圧力を掛けることで、“台湾は外交関係を持っていないから国ではない”というイメージを作ろうとしています。
台湾有事は発生してしまう?
こういった経済的、軍事的、外交的な圧力が頼政権下でも続くことになります。しかし、頼政権になったからといってすぐに台湾有事が発生するかというと、そうとは限りません。確かに頼政権になったことを中国は面白く思っていませんが、台湾有事は当然ですが中国にとっても極めて重い問題となります。
まず、現時点で中国軍が台湾を簡単に制圧できるかというと、それは極めて難しいというのが専門家でのコンセンサスです。たとえば、台湾本島へ上陸し、島全土を制圧するためには40万人の兵力が必要とも言われていますが、現在の中国軍にそこまでの能力や規模は備わっていません。また、米軍が台湾防衛に関与してくる可能性もありますので、中国側にも多くの被害が出ることは避けられず、習国家主席としても簡単に決断できる選択肢ではありません。
よって、偶発的な軍事衝突などの場合を除き、頼政権の誕生で台湾有事のリスクが飛躍的に高まるというわけではありません。中国は今後頼政権がどのような対中姿勢で臨んでくるか、これを見極めていくことになります。
今後4年の情勢に注視して
まとめ:上述したように、中国による経済的、軍事的、外交的圧力は今後も仕掛けられていきますが、頼政権が蔡政権以上に中国を刺激するような言動や行動を続けると、中国側の対抗もより厳しくなっていくでしょう。
今後も冷え込んだ中台関係が少なくとも4年間は続くことを我々は認識するべきと、覚えていただければと思います。
記事執筆:国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。