世界的な選挙イヤーの2024年。注目は11月の米大統領選挙
今年に入って既に台湾で総統選挙が実施されましたが、今後はインドやインドネシア、ロシアや韓国、メキシコや米国など各国で大統領選挙や議会選挙が行われる選挙イヤーです。どの選挙も世界情勢の今後にとっては目が離せない選挙ですが、最大のポイントは11月に行われる米大統領選挙の行方。これは今後の世界の行方を大きく左右する可能性があり、これまでの米大統領選の中でも特に注目されます。
バイデンVSトランプが再び!?
なぜ、そこまで関心を寄せるのかと言えば、あのトランプ氏が再び共和党候補になる可能性が極めて濃厚だからです。そして、11月の本選に向けての戦いは既に始まっています。
米中西部アイオワ州では1月15日、米大統領選に向けた共和党候補指名争いの初戦となる党員集会が行われ、トランプ氏が圧倒的大差で勝利しました。オハイオ州の地元紙「デモイン・レジスター」が直前に発表した世論調査では、党員集会参加者の48%がトランプ支持者で、2位のヘイリー氏が20%、デサンティス氏が16%、ラマスワミー氏が8%となり、既に共和党候補はトランプで事実上決まりという状況になっています。
そして、民主党ではバイデン大統領が再選を目指しており、秋の本選は4年前のバイデンVSトランプの再戦が濃厚。しかし、ここでバイデンが連勝できるかというと、そうとも限りません。現在バイデン大統領の支持率は33%あまりで高くはなく、両者の比較ではトランプ有利とのメディア報告もあります。
トランプ氏の勝利で影響を受けるウクライナ情勢
では、仮にトランプ氏が勝利することになれば、世界情勢はどのように変化する可能性があるのでしょうか。
まず、大きな影響を受けそうなのがウクライナ情勢です。トランプ氏は昨年春、大統領に返り咲けば最優先でウクライナへの支援を停止すると言及しました。もし、仮にそうなれば侵攻を続けるロシアの勢いが強まることになり、ウクライナでの戦況はいっそう厳しいものになるでしょう。
それに続きますが、米国と欧州との関係は再び悪化していくことになります。欧州ではロシアと距離が近い東欧の国々を中心にロシアへの警戒感が強く、ウクライナから離反した米国への不信感が広がることになります。また、トランプ氏は以前からNATOからの脱退をちらつかせるなど、英国やフランス、ドイツなどとの関係も急激に冷え込んだことから、欧州主要国も今年の大統領選の行方を注視しています。
今日、世界では欧米や日本などを中心とする民主主義陣営と、中国やロシアなどの権威主義との間で対立が深まっていますが、トランプ氏の復権は民主主義陣営の中での分断を深め、それが中国やロシアに利する可能性があるのです。ロシアがウクライナ侵攻をエスカレートさせたり、中国の台湾侵攻のハードルが下がったりと多くのリスクが考えられます。
米中の貿易摩擦が悪化し世界経済に影響を及ぼす可能性も
また、中国との間では再び貿易摩擦が激化することになるでしょう。トランプ氏は大統領だった時、米国の雇用や利益が中国によって奪い取られているとの認識から、中国への輸出入規制や関税引き上げなどを連発し、米中の間では貿易摩擦が拡大し、世界経済に大きな影響を与えました。バイデン政権下でも半導体を巡って中国への輸出規制が強化されましたが、トランプ氏の復権は再び米中の貿易摩擦を激しくさせることになります。
トランプ氏の勝利は米国民の決定であり、我々はそれを尊重する必要があります。そしてそれも1つの民主主義であり、米国の1つの姿とも言えます。しかし、トランプ氏の復権は今日の世界情勢を大きく変化させる可能性があり、我々は今のうちからトランプ勝利による変化を考えておく必要があります。
この記事のPOINT
トランプ氏が復権すると起きる可能性があるものは?
ウクライナへの支援を停止する
米国と欧州の関係が悪化する
欧米や日本などを中心とする民主主義陣営と、中国やロシアなどの権威主義との間で対立が深まる可能性がある
米中で貿易摩擦が激化する
記事執筆:国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。