永瀬のヒーローぶりを際立たせるヒール神木の魅力
山下智久が絶対に嘘のつけない正直過ぎる不動産営業マン・永瀬財地役を演じるお仕事コメディのシーズン2「正直不動産2」（総合毎週火曜夜10時～）。クライマックスに向けてドラマも大いに盛り上がってきましたが、明日放送される最終回では、いろいろな勝負に決着がつくことになるのでしょうか？
そんな中で、前9話では、遂に最強ヒールであるディーン・フジオカ演じる神木涼真の過去が明かされました。原作ファンはこの日を、固唾を呑んでスタンバイしていたのではないかと。それでも、彼の壮絶な過去は、見ていて胸をしめつけられましたよね。
「正直不動産」の永瀬は、令和に輝く市民のヒーローだと思います。人間はこんなふうに正直であってほしいという希望の象徴ですが、そのヒーローは、敵対する悪の闇が深ければ深いほど輝きを増しますね。そう思った前回を早速振り返っていきましょう。
神木が命懸けでナンバー1に執着する理由に涙する
第9話で描かれたのは、「サブリース」（又貸し、転貸）の解約にまつわるエピソードでした。例によって、営業成績ナンバーワンに異常なまでに執着する神木が、サブリース契約を結んでいるオーナーたちから違法スレスレのやり方で、利益を得ようとします。
神木のあまりにも手段を選ばないやり方に危うさを感じた同じミネルヴァ不動産で働く花澤涼子（倉科カナ）は、神木の悪行を止めようと立ち上がり、協力をお願いしたのは、なんとライバル会社である登坂不動産の月下咲良（福原遥）でした。今や盟友となった2人が、神木の悪行を阻止すべく彼の弱点を探していきます。
この回では、ミネルヴァ不動産とサブリース契約を結ぶ「エクセレントヒルズ カモガワ」のオーナー・鴨川鈴鹿（高畑淳子）と神木との駆け引きに圧倒されました。ナンバー1を取るために手段を選ばない神木は、まさに命懸けの行為に出たのです。
神木のキャラクターはすでにわかっていても、さすがに視聴者もおののいたのではないでしょうか。やはり神木は狂っている！と再確認したあとで、彼がナンバー1に執着する理由が、登坂不動産の登坂社長（草刈正雄）の口から語られます。それは、神木がある日突然、交通事故によって愛する妻と息子を失ったという痛ましい過去でした。
漫画を読んでない視聴者の方々も、これまでにいくつかの伏線が用意されていたので、何かを察していたのではないかと思います。事故直後、現場に居合わせた神木の絶望ぶりに、言葉を失いました。
また、映像化されたドラマを見て「こんなふうに描かれたのか」と感心させられたのは、神木が家族の亡くなったあとも、ずっと妻と息子の幻影を見ているというなんとも悲痛なシーンです。
かなり現実離れした設定で、漫画だとすんなり入り込めたのですが、これをどうやって映像化するのだろう？と思っていました。放送回を見たら、そこを映像で盛りすぎず、かといって幻であることがわかるような演出にされていて、心に染みました。
特筆すべきは、ディーンさんが“ダサくて生真面目だった頃”の神木を作り込んでいた点でしょうか。なんともいえない哀愁が漂っていました。「バットマン」におけるジョーカーのように、ヒールに暗いバックグラウンドはつきものですが、悲しい過去と比例して、キャラクターとしての魅力がより増していくなと感じています。
また、神木が軽快に踏む悪魔のタップも、息子のために神木が習い始めたものだったとわかり、思わず涙。最終回にも見せ場があるに違いない神木なので、最後までしっかりと見届けたいと思います。
最終回「正直不動産よ、永遠に」はハンカチ必携で臨みたい
遂に迎える最終回は、大規模な土地開発プロジェクトについてのエピソードが描かれます。タイトルは「正直不動産よ、永遠に」ということで、すでに涙腺スイッチをスタンバイしております（笑）。
数年越しの大規模開発プロジェクトが間もなく成立する段階となり、上機嫌の永瀬ですが、地権者の狭山（野間口徹）が突然、契約を解除すると言いだしました。実はプロジェクトの情報を聞きつけた神木が裏で妨害工作をしていたらしいのです。
永瀬や月下たち登坂不動産のメンバーは、プロジェクトを成立させるべく一致団結して動き出します。その一方で、永瀬は美波（泉里香）との将来を真剣に考え始めていました！果たして2人はゴールインするのでしょうか？ 最終回の放送が待ち遠しいです。
文/山崎伸子
「正直不動産」毎週火曜日、夜10時からNHK総合にて放送
見逃し配信はNHKプラスで！（放送後、最新話が公開されます）
前回レビュー（第8回）はこちらから
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