知的障害を伴う自閉症スペクトラムのとんちゃんとの暮らし。夫を亡くしシングルマザーとして障害と向き合うママが、「ありのままの彼」をInstagramで発信する理由

重度知的障害を伴う自閉症スペクトラムのとんちゃんこと、高橋朋央(ともひさ)くん。SNSで発信される日常に、多くの共感が集まっています。この記事では、とんちゃんのお母さまに、自閉症児の子育てや、接し方の工夫について伺いました。

ハイハイに違和感、2歳半で自閉症と診断

―とんちゃんは重度知的を伴う自閉症障害ということですが、気が付いたのはいつ頃ですか?

生まれてすぐは他の子と変わらない様子で、生後6か月でハイハイを始めました。しかし、上の子の時は目標物をめがけて前進をしてましたが、とんちゃんは輪を描くようにぐるぐると回っています。これが最初の違和感で、明らかに上の子と違うことに胸騒ぎがしたのを覚えています。市の保健師さんに自宅訪問をしていただき相談しましたが「まだ小さいので様子を見ましょう」とのことでした。

母子手帳に、月齢ごとの発育の特徴について「はい・いいえ」で答えるページがありますが、コミュニケーションに関する質問に対して「いいえ」が増えていきました。 声をかけても反応がなかったり、突然笑いだしたり。「もしかしてこの子は自閉症なのではないか…?」と思い始めていました。

産まれたころのとんちゃん。6カ月頃までは特に気になることはありませんでした。

1歳半検診の時、周りの子が我が子よりもしっかりしていることに愕然としました。例えば、周りの子は「えーん」「ままー」「やだー」と泣いているのに対し、我が子は「おぎゃー」と泣いています。 そのころを境に我が子がまわりの子と違うことに不安と引け目、様々なショックを感じ、集団での健康診断に足が遠のいてしまいました。

―その後、自閉症障害と診断されたのですね。

市の窓口や児童相談所などに電話相談をし、「児童発達支援センター」をご紹介いだだきました。児童発達支援センターでやさしく話を聞いていただくと、切羽詰まっていた私はその場で泣いてしまいました。その児童発達支援センターから紹介を受けた病院で、2歳半の時に自閉症と診断を受けました。

他の子がうらやましく、卑屈に感じてしまう日々

―児童発達支援センターではどんな様子でしたか?

児童発達支援センターは、保育園のように遊ばせてくれ、給食や運動会などの行事もあるのですが、とんちゃんは人が集まるところが苦手。教室になかなか入れず、指示も全く通らずで、やっと遊び始めた頃に終了の時間。そして、遊びのやめ時もわからず、走り回っていました。発達支援センターに集う親子の中でも、一番何もできない我が子。まるで宇宙人のような姿を見ていると、他の親子がうらやましくなってしまって、最初は卑屈な気持ちで逃げ帰っていましたね。ですが、少しずつ慣れていき、みんなと同じスペースにいられるようになっていきました。

不安でいっぱいだった、1歳7カ月頃の写真

「しつけができていない」「変な子」と言われることも

―周りから見えづらい障害で、大変なのはどんな時ですか?

場所見知り、人見知りが激しいとんちゃんは、コミュニケーションを取るのが難しいですし、突発的な行動をとってしまうこともあります。ただ、黙っている時は健常児と見分けがつきにくいので、しつけができていない子と見られることがあります。

例えば列に並ぶことが難しい時もありますし、つらい時には大声を上げる時もあります。そんな時「変な子」「通るからどいてよ」と言われてしまったことがあります。もちろんすぐに謝りますが、あとから思い返してまた辛くなることもありましたね。

最近では、周りの方に「すみません、自閉症なんです」と笑顔で伝えるようにしています。そうすることで「頑張って」と言ってくださることも増えました。

発達支援センターの卒園式で

命を落とす危機に瀕し、周囲に障害を知ってもらう大切さを痛感

―周りからの理解も大事ですね。

小学一年生の時に自宅から靴下のまま庭へ出て、そのまま道路へ出てしまい、行方不明になったことがありました。当時、末期の癌で自宅療養中だった夫に気を取られていたわずかな時間でした。幸い、大通りを靴下で歩く息子を見かけた優しいご夫婦が保護、警察に連絡してくださいましたが、バイパスに出ていたら命を落としていたかもしれません。

この時から、息子が重度の知的障害を伴う自閉症で、会話ができず、危険の認知もできないという事をご近所様にお伝えするようになりました。もしものために周りの方にお知らせしておくことは大切なこと。首の後ろには名前のシールを貼り、ヘルプマークも身に着けるようにしています。このご時世、知らない子どもには声をかけにくいと思いますが、障害のある子どもは、周囲の大人の助けが必要だと感じています。

心がけているのは、本人が真似しやすいコミュニケーション

―コミュニケーションを取るのが難しいということですが、どんな工夫をしていますか?

とんちゃんは、相手の話すことは理解できるので「とんちゃんお出かけするよ」と言うと自分から玄関に行きます。感情を表すことが苦手なので反応はあまりありません。

何かを食べたい時は「パンを食べたい」と言うことはできませんが、「パン」「りんご」と単語で伝えることはできます。ですので、なるべくとんちゃんのやりたいことや感情を、わかりやすい言葉にしてあげるように工夫しています。例えば「パンをください、だよ」と、短く二語文にし、本人が真似をしやすいように伝えることで、少しずつコミュニケーションがとれるようになってきました。

とんちゃんは感情を表に出すことが苦手で、悲しくても困っていてもなぜか微笑んでいるように見える時もありますし、母親である私でも何を考えているのかわからないこともあります。なので感情を伝える時には表情をしっかりつけながら「怒っているよ」「嬉しい気分だよ」と言葉にして伝えるようにしています。

また、とんちゃんは絵を描いたり字を書いたりすることが好きなのですが、「上手だね」と言われると、表情は変わらないものの、ほんの少し嬉しそうにするんです。それが、コミュニケーションのきっかけになったらいいなと思っていますね。

10歳の時、図工の時間に作った作品

汚れたり小傷がついたりしても、好きなことはどんどんやらせてあげたい

―とんちゃんとの接し方で心がけていることを教えてください。

「自閉症には好きをさせろ」という言葉を聞いたことがあるんです。やってはいけないこと、危険なことはもちろん教えながらも、好きなことはどんどんやらせてあげたいなと思っています。多少汚れても小傷がついても、目をつぶって好きなことを見守るようにしています。

小石を並べて文字を作るのが好きで、寒空のもと、暗くなるまで延々やっていたこともありました。一度ハマると繰り返してしまうので、付き合うのは大変なこともありますが、できる限りやらせてあげるようにしています。

小石を並べはじめると、時間を忘れてしまいます

過去には消えてなくなりたいと思ったことも…

―お父様との別れを、とんちゃんはどう受け止めているのでしょうか。

イギリス人の夫は2021年(とんちゃんが7歳の時)に病気で他界しました。多分、とんちゃんも理解しているんじゃないかなと思います。街で外国人の方が英語を話しているのを聞くと、じーっと見ていることがあって。「ダディかな?」「ダディの喋っていた英語だ」と思って聞いているのかもしれません。何を考えているのかは分かりませんが、はっとさせられますね。

大好きなダディと思い出の一枚。

―シングルマザーとして働きながら障害のある子どもを育てるのはご苦労があるのでは。

仕事はやりがいがありますし、とんちゃんとの毎日はとても楽しいんですよ。でも過去には「なぜ大変な障害をもって生まれてきてしまったんだろう、私のせいかな」と思い、自分が消えてなくなりたいと思ったこともありました。

しかし、SNSを始めたことで同じ境遇のお母さまとの交流が生まれ、「そういうことあるよね、大変だよね、わかるよ」と支え合えることで、自分の気持ちを上げることができています。

また、とんちゃんとは年の離れた21歳の長女がいるのですが、娘は心が優しく、何でも話せる相手。娘から学ぶこともたくさんあり、いてくれてどんなに救われたことか…。感謝しかありません。とんちゃんにとっても、お姉ちゃんは何をしても許してくれる存在。大好きで、よく甘えています。

大変さもありますが、とんちゃんの寝顔を見るとかわいいなとほっとして、いてくれてよかったなと思います。

自閉症を知らない方に伝えたい

―とんちゃんは今どのような生活を送っていますか?

発達支援センターを卒園したのち、特別支援学校へ入学して春から5年生です。

毎朝とんちゃんはスクールバスで特別支援学校へ登校し、国語、算数、音楽、図工、体育、生活、クラブ活動など時間割に沿って授業を受けています。入学当初は着席もできませんでしたが、今はウソのように落ち着いて着席できています。私が仕事をしているので、毎日学校が終わると放課後デイサービスのお迎えに来て、夕方仕事帰りに迎えに行くという毎日です。今では放課後デイサービスにも慣れて、第二の我が家のように過ごしています。

この春から5年生になりました。

―とんちゃんはタレント活動もしていますよね。きっかけは何ですか?

アメブロで、ダウン症のアイアン君のブログを見たことがきっかけです。お母さまがダウン症を広く伝えるために活動しているのを拝見し、その熱意や日々の育児の大変さ、アイアン君の周りの暖かい人たちに感銘を受けました。私たち親子も、自閉症を知らない方に伝えられることがあるのではないかと思い、アイアン君の所属する障がい・難病のあるタレント専門芸能プロダクション「ココダイバーシティ・エンターテイメント」のオーディションに応募しました。

Instagramではとんちゃんの日常を発信されていますね。

人は、知らないものごとを怖いと感じるものです。だから「自閉症って怖くないんだよ、ちょっとこだわりが強くて難しいところもあるけど、こだわりは誰も持っているもので、みんなと変わらないんだよ」ということを知ってほしいと思って発信しています。身近に障害のある人はいないけれど「とんちゃんがかわいい」と見てくださっている方もいれば、「うちの子も自閉症です」と共感してくださる方もいて、いろいろなお声をいただくようになりました。

―中には100万回再生を超えている動画もありますね。

インスタグラムのリール動画では「ありのままの僕」をテーマにしているのですが、不思議と再生数が伸びたのは、とんちゃんがポテトチップスの販売機でじゃんけんゲームをしている動画です。とんちゃんは食べ物のこだわりが強く、フルーツとチョコパン、唐揚げと白米とトマトしか食べられないため、動画には「楽しそうにお菓子を買っていますが、食べることはできません」とコメントを入れました。すると「なぜ食べられないのか?」という質問をたくさんいただき、多くの方から反応をいただけたことが嬉しかったです。自閉症といっても人それぞれで、特性はバラバラ。似た特性をお持ちの親御様からもコメントをいただき、自閉症あるあるとして話が広がるなど、発信したからこその喜びがありました。

「一人じゃない」声を掛け合いながら歩みたい

―今後チャレンジしていきたいことを教えてください。

今後もブログやインスタグラムでの発信を継続し、YouTubeにもチャレンジしてみたいと思っています。

自閉症の育児は、時には孤独で辛く悲しくなったりもしますが、自分は一人ではありません。そんな時こそつながりをもった同士の方々と一緒に、声を掛け合いながら歩んでいけたらいいなと思っています。

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取材・文/酒井千佳

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