「厚生労働省」ってどんな仕事してるの?「厚生」の意味、主な取り組み、シンボルまでを徹底解説!【親子で学ぶ現代社会】

厚生労働省は、生まれてから老後の生活に至るまで、私たちの生活に深く関わっています。理念やキャッチフレーズ、主な取り組みなどを通じ、厚生労働省がどのような役割を担っているのかを理解しましょう。シンボルマークに込められた意味も解説します。

厚生労働省の基礎知識

厚生労働省は、日本の行政機関の一つです。通称は「厚労省」で、厚生と労働に関する行政事務を担当しています。まずは、組織の特徴を押さえましょう。

内閣行政組織における厚生労働省の位置づけ

厚生省と労働省の統合で発足

日本の政治は、行政権を有する「内閣」を複数の省庁が支える形で機能しています。厚生労働省は厚生労働大臣を長とする組織で、2001年の省庁再編時に「厚生省」と「労働省」の統合によって生まれました。

武見敬三 厚生労働大臣(2023年~)[内閣広報室]

組織の内部には大臣官房と11の内部部局があり、国民の健康や福祉、労働などに関わる行政事務を分担しています。また外局には、労働争議の調整や不当労働行為事件の審査などを行う「中央労働委員会」が設置されています。

「厚生」「労働」って何のこと?

厚生労働省の名前にある「厚生」や「労働」には、それぞれ以下のような意味があります。

●厚生:人々の暮らしを健康で豊かなものにすること
●労働:収入を得るために、体を使って働くこと

厚生の語源は、中国の古典「書経(しょきょう)」に出てくる「正徳利用、厚生惟和(徳を正しうして用を利し、生を厚うしてこれ和し)」という一文です。「生を厚くする」とは、「衣食を十分にして、人々の生活を豊かにすること」を意味します。

厚生労働省の英語名は「Ministry of Health, Labour and Welfare」で、略称は「MHLW」です。「Health」は健康、「Labour」は労働、「Welfare」は福祉を指します。

理念とキャッチフレーズ

厚生労働省の理念は、「社会保障政策や労働政策を通じて、国民生活の質の向上と社会経済の発展に寄与すること」です。

「社会保障」とは生活上のセーフティーネットのようなもので、社会保険や社会福祉、保健医療などから成り立っています。人々の病気を予防したり、快適に働ける環境を整備したりして、国民生活をより良くすることが厚生労働省の役割といえるでしょう。

厚生労働省では、「ひと、くらし、みらいのために」というキャッチフレーズを掲げています。職員の公募によって決まったもので、「現在だけでなく、未来にわたって人や暮らしを守る」という意味が込められています。

厚生労働省が関わる分野

厚労省が入居している中央合同庁舎第5号館(東京都千代田区霞が関)

厚生労働省が担当する分野は、どれも私たちの生活に深く関わっています。「健康・医療」「福祉・介護」「雇用・労働」「年金」の各分野において、どのような取り組みを行っているのか詳しく解説します。

健康・医療

健康・医療の分野では主に、疾病や生活衛生、食品および医療品の安全性に関わる政策を行っています。けがや病気をした際、安全で質の高い治療を受けられるのは、医療提供体制が優れているためです。

日本では安い費用で高度な医療を受けられるように、「国民皆保険(こくみんかいほけん)制度」を導入しています。国民全員が何らかの公的医療保険に加入し、一定の保険料を納めることで、互いの医療費負担を支え合う仕組みです。

厚生労働省では制度の整備を通じ、人々が健康で長生きできる社会の実現を目指しています。

福祉・介護

「福祉」とは、公的な支援によって全ての人々が幸せで安定した生活を送ることです。厚生労働省では「障害者福祉」「高齢者福祉」「生活保護・福祉一般」の三つの分野において、社会制度の整備と支援を行っています。

「生活保護」とは、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度です。資産や能力を全て利用しても生活が苦しい人に対しては、自立のサポートと最低生活費の支給を行います。

少子高齢化が進む日本では、次世代を担う子どもたちの数が年々減っているのが実情です。安心して子育てができる社会を目指し、厚生労働省では「子育てに伴う経済的負担の軽減」や、「仕事と家庭の両立が可能な環境の整備」などを行っています。

雇用・労働

雇用・労働の分野では、誰もが自分の能力を発揮して働ける社会を目指しています。特に若者・女性・高齢者・障害者に対しては、ハローワーク事業などを通じてさまざまな就労支援を行っています。

日本では、非正規雇用に占める女性の割合が高いのが現状です。非正規雇用とは、パートやアルバイト、契約社員といった正社員以外の雇用形態を指します。正社員と非正規雇用労働者の間で、不合理な待遇差が生じている職場も少なくありません。

厚生労働省では不公平な待遇の差をなくすため、事業者に対して「同一労働同一賃金」のガイドラインを提示しています。

公的年金

公的年金とは、国民の老後を支える公的年金制度のことです。日本の公的年金制度は、「国民年金」と「厚生年金保険」の2階建て構造です。

国民年金には20歳以上・60歳未満の全国民が加入し、会社員・公務員などは、さらに厚生年金保険に加入します。納付期間に応じて給付額が決まり、原則として65歳から年金を受け取れます。

元々は厚生労働省の外局である「社会保険庁」が年金業務を担っていましたが、社会保険庁の廃止に伴い、非公務員型の公法人「日本年金機構」が設立されました。現在は、国(厚生労働大臣)が日本年金機構に年金業務の一部を委託しています。

厚生労働省が推進する主な取り組み

国民生活をより良いものにするため、厚生労働省ではどのような取り組みを行っているのでしょうか?  主な取り組みの例を紹介します。

各分野における研究事業

厚生労働省の担当分野の中でも、医療・福祉・労働には数多くの課題があります。課題を解決に導くためには、科学的な根拠に基づいた政策を講じなければなりません。厚生労働省では各分野での研究事業を推進し、研究成果を行政に反映する取り組みを行っています。

厚労省の管轄で高度専門医療を研究する国立国際医療研究センター(東京都新宿区戸山)

具体的な研究事業の例を挙げると、2022年度は「女性の健康の包括的支援政策研究事業」が行われました。

女性は女性ホルモンの影響で、ライフステージごとに健康状態が大きく変わります。しかし生涯にわたる総合的な支援は十分とはいえず、健康施策も少ない傾向があります。

女性の健康に関する実態を把握し、より良い相談体制を築くため、研究事業の一環として女性の健康に関するウェブサイトの構築や情報発信、アクセス解析などが実施されました。

出典:厚生労働科学研究の成果のまとめ(令和4年度) 

性的マイノリティーに対する理解の促進

性的マイノリティーは「LGBT」とも呼ばれ、主に以下のような人々を指します。

●L(レズビアン):女性の同性愛者
●G(ゲイ):男性の同性愛者
●B(バイセクシュアル):男性と女性の両方の性に魅力を感じる人
●T(トランスジェンダー):生物学的な性別と自分が認識する性が一致しない人

日本は海外に比べ、性的マイノリティーへの法的整備が進んでいません。「自分の周りに、性的マイノリティーはいない」という人もいますが、ただ単に本人が言えないだけの可能性があります。

厚生労働省では相談窓口の設置や、ハラスメント防止のパンフレット作成などを通じ、性的マイノリティーへの理解を促す取り組みを行っています。

厚生労働省についてのQ&A

シンボルマークの意味や1年間に使われる予算など、気になる疑問をQ&A方式でまとめました。厚生労働省について、もう一歩理解を深めましょう。

シンボルマークの意味は?

画像引用:厚生労働省公式HP|シンボルマークとキャッチフレーズについて

厚生労働省のシンボルマークには、「国民が手を取り合って幸福を目指す」という意味が込められています。国民(老若男女)が喜ぶ姿がモチーフで、手を取り合う2人の間には、幸せの象徴であるハートマークが隠されています。

このマークを手掛けたのは、大阪府豊中市のグラフィックデザイナー・日高美明(ひだかよしあき)氏です。2008年に「厚生労働省をイメージできるもの」としてマークの一般公募が行われ、最優秀賞に輝き採用されました。

予算はどれくらい?

国の施策は国民の税金によって賄われているため、どれくらいのお金が使われているのか気になる人も多いでしょう。

国の1年間の収支計画は、予算と呼ばれます。国の会計には一般会計と特別会計があり、国の行政事業は一般会計でやりくりされます。

「令和6年度予算案の概要」によると、2024年度における厚生労働省の一般会計予算は33兆8,191億円です。うち33兆5,046億円が「社会保障関連費」で、その大部分は年金と医療に使われます。

出典:令和6年度予算案の概要

厚生労働省は暮らしの安心・安全に関わる

厚生労働省は、国民生活を支える縁の下の力持ちです。人々のあらゆるライフステージに関わり、必要な支援を切れ目なく行っています。私たちが健康で安全な生活を送れるのも、厚生労働省の働きがあってこそといえるでしょう。

日本には、医療・福祉・労働に関連する社会課題が数多く存在します。近年は性的マイノリティーを自認する人が増え、多様な性のあり方を社会にどう浸透させていくかが課題となっています。厚生労働省の今後の政策に注目しましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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