経済産業省って何をするところ?
日本には、「省」と名の付く行政機関が複数あります。その中で「経済産業省」は、どのような役割を担っているのでしょうか?
内閣が管轄する国の行政機関の1つ
経済産業省は、経済産業省設置法に基づいて設置された国の行政機関で、内閣が管轄しています。内閣の下には、内閣府と12の省庁があり、それぞれが国の行政事務を分担管理しています。
「省庁」とは、「省」の付く役所と「庁」の付く役所の総称です。省は庁・委員会・内部部局・審議会などから成り立っており、内閣総理大臣から任命された「国務大臣」が仕事を取りまとめています。
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経済産業省の前身は「通商産業省」で略称で「通産省」と呼ばれていました。中央省庁の再編が行われた2001年1月、通商産業省に科学技術庁の原子力安全部門が加わって、経済産業省が生まれました。
英語名(Ministry of Economy, Trade and Industry)の略称は「METI(メティ)」で、通称は「経産省(けいさんしょう)」です。
経済と産業に関する政策を行う
経済産業省では、経済と産業に関する政策を行っています。「経済」とはお金・物・サービスの流れを指し、「産業」とは物やサービスを提供することを意味します。
経済産業省設置法によると、経済産業省の役割は以下の通りです。貿易の振興やインフラの供給、エネルギー問題の解決などを通じ、日本を元気な国にするのが経済産業省の役割といえるでしょう。
●民間の経済活力を向上させる
●外国との経済関係を円滑にする
●鉱物資源やエネルギーを安定的かつ効率的に供給する
経済産業省のマークは、巴(ともえ)模様に似た正六角形です。自然界の秩序を守りつつ、産業と貿易がバランスを保ちながら発展する様子が描かれています。
出典:経済産業省設置法 第2章 第2条 第2節| e-Gov法令検索
;経済産業省|経済産業省のシンボルマーク
経済産業省の組織図
経済産業省は、複数の内部部局や外局などで構成される大きな組織です。組織図を見れば、経済産業省がどのような役割を担っているかをより深く理解できるでしょう。
経済産業大臣がトップ
2024年度の経済産業省の総定員は、8,080人です。「経済産業大臣」は、約8,000人が働く経済産業省の行政事務を統括しています。
大臣の直属の部下に当たるのは、「副大臣」や「大臣政務官」と呼ばれる役職です。どちらも大臣のリーダーシップを支える立場ですが、大臣不在時に職務を代行する権限があるのは、副大臣のみです。
また、各省には「大臣官房」という組織があり、省内の人事や予算などを所管しています。
経済と産業を支える6つの局
経済産業省には、以下のような内部部局があります。業務範囲は多岐にわたるため、局ごとに業務を分担しているのです。局は、さらに複数の課に分かれています。
●経済産業政策局
●通商政策局
●貿易経済協力局
●産業技術環境局
●製造産業局
●商務情報政策局
例えば「貿易経済協力局」は、通商の振興や経済協力などに関する組織で、「貿易振興課」「通商金融課」「技術・人材協力課」「投資促進課」などの課に分かれています。
「商務情報政策局」は、商業上の情報に関する政策を行う組織です。サイバーセキュリティ対策を担う「サイバーセキュリティ課」や、情報処理分野の技術利用を促進する「情報技術利用促進課」などがあり、それぞれが連携して業務を進めています。
経済産業省の外局
各省に属する組織のうち、内部部局の外にある組織を「外局」といいます。経済産業省の外局は、「中小企業庁」「資源エネルギー庁」「特許庁」の三つです。
中小企業庁
中小企業庁は、中小企業に関する事務や権限を所管する組織です。中小企業の健全な成長と発展を目指し、新たな事業の創出や取引の適正化、資金の供給などに関わる業務を行っています。
中小企業は日本の企業数の99%以上を占めており、日本経済をけん引する存在といっても過言ではありません。近年、経営層の高齢化やIT投資の遅れ、生産性の低迷といった課題を抱える中小企業が増加傾向にあります。こうした課題を解決に導くことが、中小企業庁の役割といえるでしょう。
資源エネルギー庁
資源エネルギー庁は、エネルギーの安定供給や鉱物資源の開発を所管する組織です。具体的には、国のエネルギー計画の策定や省エネの推進、電気・ガスに関する政策などを行っています。
日本はエネルギーのほとんどを、火力発電によってまかなっている国です。石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を海外から輸入しており、世界情勢が悪化すれば、エネルギーが安定的に得られなくなる恐れがあるでしょう。
資源エネルギー庁では、化石燃料の代替となる再生可能エネルギーや新エネルギーの開発・普及に力を入れています。
特許庁
特許庁は、日本の「産業財産権」を所管する組織です。産業財産権とは、以下の四つの権利を指します。
●特許権:発明を保護する権利
●実用新案権:物の形状・構造・組合せなどの考案を保護する権利
●意匠権:物の形状・模様・色彩といったデザインを保護する権利
●商標権:商品・サービスに使用するマークを独占的に利用できる権利
産業財産権が守られなければ、時間や労力を費やして作った発明品やデザインをすぐに他人にまねされてしまうでしょう。特許庁では、産業財産権の付与や産業財産権に関する施策の企画立案、国際上における制度の調整などを行っています。
特許庁の仕事を詳しく知りたい人は、「こども見学デー」のイベントに参加してみてもよいでしょう。
経済産業省が取り組むプロジェクト
経済産業省では、日本の経済や産業をよりよくするための取り組みを行っています。数あるプロジェクトの中から、代表的なものをピックアップして紹介します。
GENIAC
GENIACは「Generative AI Accelerator Challenge」の略称で、読み方は「ジーニアック」です。日本の生成AI開発を推進するプロジェクトで、生成AIのコア技術である「基盤モデル」の開発に携わる企業を、さまざまな側面からサポートします。
採択事業者に選ばれた場合、生成AIの開発に必要な資源の提供が受けられるほか、海外の有識者によるセミナーや開発者・利用者のマッチングイベントなどに参加できます。
J-Startup
J-Startupは、グローバルに活躍できるスタートアップ企業を育成するプログラムです。潜在力の高い企業を審査によって選抜し、官民一体で集中支援を行います。
また、「Startupビザ」を発行して海外の起業家を日本に招き、国内の「ベンチャーエコシステム」を強化する取り組みも行っています。
ベンチャーエコシステムとは、ベンチャー企業やスタートアップ企業の成長を後押しする環境のことで、アメリカのシリコンバレーや中国の深センが代表的です。企業・研究機関・行政機関などが集まり、創業から成功に至るまでの過程を支援します。
出典:J-Startup
ReAMoプロジェクト
ReAMo(リアモ)は、大型ドローンや空飛ぶクルマといった「次世代空モビリティ」の社会実装を進めるプロジェクトです。空飛ぶクルマが実現すれば、目的地まで最短ルートで飛行でき、渋滞問題が解決できるほか、被災地の支援などがより迅速に行えるようになるでしょう。
経済産業省が発表するロードマップによると、2025年頃から空飛ぶクルマの商用運航が拡大します。2020年代の後半からは自家用運航がスタートするため、空飛ぶクルマで通学・通勤する人も出てくるかもしれません。
プロジェクトは、経済産業省・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)・国土交通省の連携によって進められています。
出典:ReAMo 次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト | Realization of Advanced Air Mobility Project
経済産業省は日本の経済と産業を支える
経済産業省は、日本の経済と産業を支える大きな組織です。内部部局のほかにも外局があり、中小企業の課題解決からエネルギー資源の政策に至るまで、さまざまな領域に関わっています。
「私たちの暮らしに経済産業省がどのように関わっているのか」を、この機会に子どもと話し合ってみるのはいかがでしょうか? また、特許庁をはじめ、経済産業省の関連施設の中には見学が可能なところもあるので、休みの日に親子で足を運んでみてもいいかもしれません。
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構成・文/HugKum編集部