梅雨~夏、外遊びが厳しくて体力もてあまし気味…「体も頭も体操できる」優秀絵本を紹介!【育児の悩みは絵本で解決】

子育てのなかのお悩みに、絵本でアプローチしていく企画「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」。今回は、梅雨がはじまり外遊びができないフラストレーションをどう解消すればいい?というお悩み。「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」室長の筆者が、子どもをすっきり発散させる方法となる絵本を紹介します。

Q.外遊び大好きなわが子、雨続きだと体力をもてあましぎみ。どうしよう?

保育園のお迎え後は、必ず公園で1時間は遊ぶ、元気いっぱいの息子がいます。ですが最近は雨続きで、なかなか外遊びができません。そのぶん、家の中でとんだりはねたりしてしまい、寝つきも悪くなっています。

動けないストレスを発散できるような絵本ってないでしょうか?

(4歳男の子ママ)

    A.体と頭、両方を疲れさせる合わせ技で発散させてみましょう。

    ふだん体を動かすことがルーティンになっているお子さんですと、家にこもっているだけでもストレスですよね。雨で空が暗いと、それだけでうつうつとしがちですし、梅雨があけても夏の猛暑が始まってしまい、外遊びが厳しい季節は続きます。

    そうしたとき、いつでもどこでもできる遊びのバリエーションを増やしておけば、天候以外でもお出かけできないときにいろいろ対処することも可能です。

    ですので、「体遊び」の絵本をつかって家の中で楽しく体を動していきましょう。また、家の中で体を動かすにも限界があります。さらに「頭を使って遊ぶ」も組み込むことで、外側と中側から、子どもたちにすっきり疲れてもらいましょう!

    【絵本で体力発散ポイント】

    1.絵本をつかって親子で楽しく体を動かそう!

    2.頭をつかうと、疲労しやすい! 頭の体操絵本で発散しよう!

    1.絵本をつかって親子で楽しく体を動かそう!

    体をつかって親子で楽しく遊べる絵本には、たくさんの種類があります。そのなかから、お子さんの好みに合う絵本を選んでみてください。

    まずは、雨が降って外に遊びに行けず、ごきげんななめになってしまったという、まさにご相談とおなじシチュエーションの絵本がこちらです。

    『ピッツァぼうや』(ウィリアム・スタイグ 作 木坂涼 訳 セーラー出版) 

    外で遊ぼうと思っていたのに雨が降ってきてしまって、ピートはごきげんななめ。ソファーでごろごろ。そんなピートを見て、お父さんは「なにかいい手はないかな」と思います。そして、

    「そうだ ピートでピッツァをつくったら たのしくなるかもしれないぞ」

    と思い立つのです。

    ピッツァとは、あの食べるピザのこと。子どもでどうやってピザを作るのと思いきや、ピートをテーブルに寝かせてピザ生地のようにこね始めるのです。ごきげんなななめだったピートは最初は、ぷいっとされるがままでしたが、ピザ生地がわりに空中で飛ばされたくらいから、なんだか楽しそう。トマト(本当はボードゲームのコマ)やチーズ(本当は紙切れ)をちらされて、ピートもノリノリでピザになっていきます。

    これは、ピートをピザ生地に見立てて想像して遊んでいく、いわゆる“見立て遊び”の絵本ですが、こうして親子で全身を使った想像ごっこは、何かになりきったり見立てたりして想像力も刺激され、おうちならではの楽しい遊びができますよ。

    『パンダおやこたいそう』(いりやまさとし 講談社)

    また、腕をのばしたりぐーんと体をのばしたり、もうちょっとしっかり目に体を使って子どもに「運動した!」というすっきり感を味わってもらいたいときにはこんな絵本をどうぞ。

    こちらは、もふもふのパンダの親子が

    「そらに むかって ぐーんと のびて たけのこの たいそう。」

    だったり、親が子どもをかかえて

    「ゆらゆら ゆらゆら みぎ ひだり。ふりこの たいそう。」

    などなど、親子で身近なもののまねっこをしながら共同で楽しく体操をすることができます。

    こちらは、「パンダたいそう」シリーズとして、ほかにもたくさんの体操があるので1冊では物足りない場合は、何冊か続けて体操を続けたり、「今日はちょっとおかあさん疲れ気味……」という日にはゆったりした『パンダのんびりたいそう』を使ってみたり、その日の状況に合わせていろいろと楽しむことができますよ。

    『パンダのんびりたいそう』は、動きがゆったりとしていてちょっとヨガっぽい動きなので、体操したあとはそのままゆっくりお昼寝に持ち込むにもぴったりですので、いろいろと使い分けてみてください。

    『へんてこたいそう』(新井洋行 小峰書店)

    どんより雨気分から気持ちを上げて楽しくなりたいときは、こんな体操絵本もあります。

    こちらは、町の標識によくある「マーク」が体操を始める絵本です。男性トイレ、女性トイレのマークたちが楽しい動きで、「いっちに いっちに」と手足を動かしたり、緑色の非常口マークさんが走りながらおしりをぷりぷりさせたり、いろんなマークがいきなり変な動きをし始め、思わず笑ってしまいます。見ているだけでも楽しいですが、もちろんいっしょに「いっちに いっちに」と体を動かせば、へんてこな動きで気持ちもアゲアゲです。

    これらのマークは、言語が違ってもぱっと見てすぐに伝わることを目指した「ピクトグラム」という記号で、町のいたるところにあって子どもたちにもなじみ深いので、「あ、あそこで見たあれだね」と、親子で話し合って楽しむこともできますよ。

    2.頭をつかうと、疲労しやすい! 頭の体操絵本で発散しよう!

    体を使って発散しても、まだまだ体力のある子は、元気がありあまっていますよね。

    ですので、体操絵本の次は、「頭を使わせる絵本」で心地よく「やりきった!」という疲労感を高めましょう。

    まずは探し絵です。

    『むれ』(ひろたあきら KADOKAWA)

    羊のむれ、魚のむれ、鳥のむれ、などなど細かく描かれた“むれ”の中から一つ、他と違ったものを探していく探し絵絵本です。シンプルな絵柄なので小さな子からも楽しく取り組めますが、なかなかな細かさなので、1ページ1ページ、かなり真剣に取り組むことになります。

    そして、探し絵だけかと思いきや、途中にはちょっと不思議なユーモアがちりばめられていたり「むれ」ってなんなのだろう?というメッセージ性も感じられたり、様々な楽しみ方ができる絵本です。

    『プログラムすごろく アベベのぼうけん』(作 佐藤雅彦・石澤太祥・貝塚智子 絵 ダイスケ・ホンゴリアン 小学館)

    また、4,5歳以降の子ですと、いろいろな方向に頭を使って楽しめるこんな絵本もありますよ。

    アベベは、ドドジ王国の王子。立派な王になるため、父の残した数々のプログラムに挑戦する旅に出ます。その旅は、すごろくのマス目のような道筋をたどっていきます。そして、与えられた条件にしたがってアベベが動いていくと、驚きの物語があらわれてくるのです。

    この作品は、物語を楽しみながらプログラミング的思考が養われるという画期的な絵本。プログラミング絵本というと、なんだか専門的で難しいイメージを持たれるかもしれませんが、小さな子でもわかりやすい条件や説明となっているので、起伏のある物語絵本として楽しむことができます。

    なのに、プログラムを読み解いていくうちに手順やルールを筋道立てて考える力、つまり「プログラミング的思考」が自然と養われていくんです。さらに、プログラミング的思考はもちろんのこと、さまざまな算数の考え方も伝えてくれ、知的好奇心をくすぐる仕掛けも、もりだくさん。様々な方向から頭を刺激してくれます。

    お外に出られない日だからこそ時間をかけて、こうした絵本を楽しんでみてはいかがでしょうか?

    たくさんの“遊び”の選択肢で、パパママのきもちに余裕を。

    気持ちの切り替えって、子どもたちには難しいものです。「外で遊ぼうと思ってたのに!」ということが雨でだめになって、仕方ないこととはわかっていても気持ちがついていかずグズグズになってしまいます。それに正面から言って聞かせることには、けっこうなパワーが必要です。

    家遊びの手段をたくさん持っていれば、「それがだめならこれ、これもだめならあれ!」と次々提案していくうちに、子どもたちの気持ちをグズグズからそらすこともできます。動画やゲームもありですが、昨今子どもの視力低下も言われていることも気になりますし、それ以外の手段をたくさん持っていることがパパママの余裕にもつながります。

    また、最終手段ではありますが、時間も気持ちも余裕のある時でしたら、この絵本のようにがっつり“どろんこ”遊びはいかがでしょうか?

    『どろんこおおかみと7ひきのこやぎ』(文・柴田愛子 絵・あおきひろえ アリス館)

    文の柴田愛子さんは、“子どもの気持ちにより添う保育”を基本姿勢にした「りんごの木こどもクラブ」の園長先生です。このお話は、その保育園で本当に行っている遊びをモチーフにしています。最初は、愛子さんがおおかみとなって、「おおかみと7ひきのこやぎごっこ」をして子どもたちを捕まえようとします。しかし、途中から子どもたちはどんどん遊びをアレンジしていって、最後はどろんこにドボン!

    どろんこ遊びは子どもにはとっても楽しくても、親は、「せんたくがー! どうやって連れて帰ろうー⁉」と気をもんでしまいますよね。ですが、雨続きのなか「たまには、いっか!」と思えたら、親も子もどろどろになってこんな風に楽しむことも、五感から受ける刺激でお互いにすっきり大満足な思い出になりますよ。

    ここ最近は、天候不順だけでなく猛暑や交流量などもあり、子どもたちが気持ちよく外で遊ぶことがなかなか難しい状況もあります。今回ご紹介した絵本を参考にしていただき、「うちの子に向いている発散方法はどれかな?」といろいろ試して楽しんでみてください。

    「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」を1話から読む!

    読み聞かせの時間を作れないのは私の要領が悪いせいですか?新連載【育児の悩みは絵本で解決】vol.1

    【育児の悩みは絵本で解決】連載担当者は……

     
    徳永真紀/「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」室長
    フリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児を相手に「読み聞かせとは何ぞや」を問う日々。最近は幼稚園・小学校でも読み聞かせおばちゃんとして活動中。絵本ナビスタイルにて「絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力」を連載中。

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