「身も蓋もない」とは?
まずは『身も蓋もない』の読み方や意味、語源を押さえておきましょう。
読み方と意味
この言葉は『身も蓋もない』と書いて、「みもふたもない」と読みます。
「表現が露骨すぎて、風情も情緒も感じられない」といった意味を持つ言葉です。あまりにも率直なことを言われて、それ以上会話をする意味を感じられなくなるような時に使われます。
『<実>も蓋もない』と漢字の誤表記が多い言葉ですが、正しくは『<身>も蓋もない』です。以下でご紹介する語源とともに、「身(=容器)」であることを覚えておきましょう。
由来・語源
この言葉は、蓋が付いた容器が語源になっていると考えられています。「なにも隠されていない/丸出し」な状態を、「物を入れる容器本体(身)も、それを閉じる蓋も何もない」ことに喩えたことから生まれ、使われるようになったと言われます。
「元も子もない」との混同に注意!
『身も蓋もない』は、語感が似ていることから『元も子もない(もともこもない)』と混同されやすい言葉です。
『元も子もない』とは、「元金も利息も失くした状態=損をしてなにもかも失った状態」を指し、「せっかく努力してきたのに、最後で失敗したら【元も子もない】」といった使い方がされます。
語感は確かに似ていますが、意味は大きく異なるため、混同しないように注意しましょう。
使い方を例文でチェック!
では、具体的に『身も蓋もない』はどのように使うことができるのでしょうか。例文とともにチェックしていきましょう。
1:「どうせ腹に入ってしまうので、盛り付けになんてこだわる必要はない」と発言したら、「【身も蓋もない】ことを言うな」と非難された。
『身も蓋もない』はこのように、風情がない・味わいがない発言に対して、非難のニュアンスで用いることができます。
2:あまり【身も蓋もない】ことを言わないでくれ。
日常会話においては、このように使うことができます。あまりに露骨な発言をしたり、風情のないことを言うと、こうして非難されるかもしれません。
3:【身も蓋もない】話ではありますが、前の勤め先よりも給与面の条件が良かったため、今の勤め先へと転職しました。
なにか味わいのある発言を求められている、と感じていながらもそのようなことが発せられない場合などに、「身も蓋もない話ではありますが…」と前置きすることがあります。経済的・金銭的な話題をはじめる際に、このような前置きがよく使われます。
類語や言い換え表現は?
では、『身も蓋もない』を他の言葉で言い換えたい場合、どのような表現が使えるのでしょうか。ここでは『身も蓋もない』の言い換えに使える類語をご紹介します。
1:歯に衣着せぬ(はにきぬきせぬ)
『歯に衣着せぬ』とは、「思ったことを率直にずけずけと言う」という意味を持つ言葉です。「表現が露骨すぎること・率直すぎること」を意味する『身も蓋もない』の類語と言えます。
ただし、「風情・情緒が感じられない」といったニュアンスは、『身も蓋もない』より薄まる点に注意しましょう。
2:無味乾燥(むみかんそう)
『無味乾燥』とは「なんの味わいもなく、趣のないこと」を意味する四字熟語です。『身も蓋もない』が持つ「風情も情緒も感じられない」のニュアンスを言い表せる言葉ですが、「表現が率直すぎる」といった意味はもちません。
3:味も素っ気もない(あじもそっけもない)
『味も素っ気もない』もまた、『無味乾燥』と同じく「味わいがなく、つまらないこと」を意味する言葉です。
こちらもまた、「表現が率直」であることを非難する意味は持ちません。『身も蓋もない』の言い換え表現として使う場合には、「味も素っ気もない率直な言い方をされた」というように、別の言葉で補う必要があります。
対義語は?
『身も蓋もない』の反対の意味を言い表したい場合に使えそうな表現も押さえておきましょう。明確に対となる言葉は存在しないため、反対に近い意味を持つ言葉を集めました。
1:オブラートに包む(おぶらーとにつつむ)
『オブラートに包む』とは、「柔らかい言い回しをする」という意味の言葉です。「オブラート」とは、薬を飲みやすくするために包む、上の画像のような澱粉でできたフィルムのこと。
「相手を刺激しない遠回しな言い方をする」ことの喩えとして、これを用いた『オブラートに包む』という言葉が使われます。「表現が露骨なこと」を意味する『身も蓋もない』の反対の言葉として覚えておきましょう。
2:嘘も方便(うそもほうべん)
『嘘も方便』とは、「良い結果を生むためには時には嘘も必要だ」という意味を持つ言葉です。思ったままを露骨に発言するわけではなく、時には嘘も必要としている点において、『身も蓋もない』の反対に近い言葉と言えるのではないでしょうか。
ただし、『身も蓋もない』が持つ「情緒がない」といった意味に対応するニュアンスはありません。
3:趣深い(おもむきぶかい)
『趣深い』は、「しみじみとした味わいがよく感じられること」を意味します。『身も蓋もない』が持つ「情緒がない、味わいがない」といったニュアンスとは反対に近い言葉と言えます。
英語表現は?
最後に、『身も蓋もない』を英語で伝えたい場合に使える英語表現を押さえておきましょう。
1:outspoken
“outspoken”とは、英語で「露骨な言い方」という意味を持つ形容詞。類語としてご紹介した「歯に衣を着せない」の英語表現としても用いられます。
“He is an outspoken critic.(彼は露骨な言い方をする批評家だ)”のように使うことができます。
2:brutally frank(honest)
“brutally frank(honest)”もまた、『身も蓋もない』の英語訳として用いられやすい形容詞的表現です。
“brutally”とは「容赦ない」という意味で、これと“frank(率直な)”や“honest(正直な)”を組み合わせて、「露骨な=身も蓋もない」のニュアンスを表現することができます。
“He is brutally frank.”で「彼は身も蓋もないやつだ」といった意味となります。
時には、オブラートに包んで発言することも大切
今回は『身も蓋もない』の意味や語源、使い方から関連語までをご紹介してきました。
正直に発言することはもちろん大切ですが、時にはオブラートに包んだほうが良い場合もあります。身も蓋もないことばかり言わず、「相手がどう感じるか」「どんな気持ちになるか」を想像しながらコミュニケーションをとっていきたいものですね。
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文・構成/羽吹理美