過度に不器用…発達障害の一種「DCD(発達性協調運動症)」。姿勢、指先の使い方など家庭でできるサポートのコツとは?【専門家に訊く・後編】

発達障害の一種であるDCD(発達性協調運動症)。主な特性は、日々の生活に困るほど過度に不器用だったり、運動などが苦手なことです。DCDの有病率は5~11歳の約5~6%といわれて、とくに男の子に多く見られます。作業療法士・東恩納拓也先生に、後編では家庭でできるDCDのサポートについて教えてもらいました。

前編ではDCDの特徴や気になったときの対応法を伺いました

35人クラスの1~2人はDCD(発達性協調運動症)!? 日々の生活に困るほど不器用な発達障害の一種。就学後、影響が出ることも【専門家に訊く・前編】
男の子に多く、5~11歳の約5~6%といわれるDCD  DCDの有病率は、5~11歳の約5~6%といわれています。男女比は2:1~7:1で...

DCDは、日々の生活が困るほど不器用だったり、運動が苦手なことが特徴

改めて説明しますと、DCDは「Developmental Coordination Disorder」の略で、日々の生活が困るほど不器用だったり、運動などが苦手なことが特徴です。たとえば同じ年齢の子と比較して

「ボタンやファスナーが苦手で、着替えが遅い」
「運動が苦手で、体育の授業についていけない」
「箸が上手に使えず、食べこぼしが多い」
「姿勢が悪い」
「字を書くのが苦手で、マスから字がはみ出す」
「転んだり、ぶつかったりすることが多い」
「コンパス、じょうぎなどの学習用具やリコーダーなどの楽器が上手に使えない」

などの様子が見られます。

DCDは、脳のシステムがうまく働かないために起こる

DCDの明確な要因は明らかになっていませんが、自分の体を思い通りに動かしたり、新しい運動を学習する脳のシステムがうまく働かないために起こると考えられています。

DCDは、発達障害の一種なので完治することはありません。しかし療育に通ったり、ママ・パパがサポートすることで苦手なことが少しずつできるようになっていきます。

家庭でできるDCDの子どもへのサポート

家庭でできるDCDのサポートの一例を紹介します。

①姿勢の改善

DCDのある子どもは、筋力のコントロールが苦手で姿勢が悪い子がいます。

姿勢が悪い子は、ママ・パパと押し相撲をしたり、ボルダリングなど登る遊びをすると姿勢を保つ筋力がアップしていきます。

また椅子の座面に100均で売っている滑り止めマットを敷いたり、膝の裏に当たるように座面にタオルを巻いて、おしりが前滑りしないようにするのもおすすめです。

『運動の不器用さがある子どもへのアプローチ 作業療法士が考えるDCD(発達性協調運動症)』より

②「ボタンを留める」練習

ボタンを留めるのが苦手な理由は、指先をうまく使えなかったり、見えにくい部分の操作が苦手なことが考えられます。

家庭では、まずはママ・パパがボタンホールを広げてあげて、子どもがボタンを通す練習をしましょう。慣れてきたら、子ども自身でボタンホールの穴を広げて、ボタンを通すようにします。ポイントは、スモールステップで1つずつ教えていくことです。焦りは禁物なので注意しましょう。

『運動の不器用さがある子どもへのアプローチ 作業療法士が考えるDCD(発達性協調運動症)』より

③箸使いの練習

箸を上手に使うには、細かい指の動きができるようになることが必要です。洗濯ばさみをはさんで遊んだり、お手伝いでトマトのヘタをとったり、玉ねぎをむくなど、日ごろから積極的に指先を使うように促しましょう。

『運動の不器用さがある子どもへのアプローチ 作業療法士が考えるDCD(発達性協調運動症)』より

習い事は、スキル向上重視より、楽しく通えるところへ

DCDは、経験を積むことで苦手なことが少しずつできるようになります。たとえば子どもが「サッカーを習いたい」「ピアノを習いたい」などと言うときは、できるだけチャレンジさせてあげましょう。

ただし注意点はひとつ。スキル向上を目的とした教室ではなく、楽しく通える教室を選んであげて! スキル向上が目的だと、子ども自身「できない…」「ついていけない…」とつらくなってしまうこともあります。またママ・パパも、ほかの子と比べたりするのはNGです。楽しんでいたら、それでOKと思ってください。

特性を理解すると、子どもとの向き合い方が変わる

ママ・パパが、子どもの特性を理解して家庭でサポートするようになると、子どもとの向き合い方が変わり、親子関係もよくなります。たとえば、これまでは「お友だちはできるよ!」「早くしなさい!」と注意していたことも、「難しい? 一緒にやろう」と誘ったり、時間に余裕をもってできるように早めに声をかけるなど、工夫するようになるでしょう。

姿勢を長時間保つのがキツいのかな?と寄り添えるように

子ども時代のサポートが、将来役立つ

DCDと診断された子のうち5070%は、大人になっても症状が続くといわれています。そのため大切なことは、苦手なこととどのように向き合っていくかです。ママ・パパがサポートすることで、子どもは苦手なことに向き合う術を学んでいきます。

自己肯定感を下げることなく、苦手だけれどゆっくりやれば大丈夫、道具を工夫すれば大丈夫、など自信をもって行動できるように導けるといいですね。

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お話をうかがったのは

東恩納拓也先生|作業療法士
作業療法士、博士(医学)、特別支援教育士。東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科助教。作業療法士として臨床、研究、教育に従事するとともに、幼稚園、保育園、学校などへの訪問支援や地域支援事業者との連携などを行う。著書に『運動の不器用さがある子どもへのアプローチ 作業療法士が考えるDCD<発達性協調運動症>』(クリエイツかもがわ)がある。
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東恩納先生の著書はこちら

2,200円(税込/クリエイツかもがわ)

取材・構成/麻生珠恵

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