フードドライブとは?
家庭で余っている未利用の食品を集め、フードバンクなどへ提供する仕組みです。集められた食品はフードバンクを通じて、こども食堂や福祉団体などの食料支援を必要としている人たちに届きます。
フードドライブは多くの人・団体の協力で成り立っていますね。
バナナや生魚の寄贈品も・・・? 寄贈されて喜ばれる食品は
イトーヨーカドーは、2020年より常設窓口となるフードドライブ回収ボックスを横浜市の店舗に設置し、現在は南関東を中心にヨークマート、ヨークフーズを含む94店舗(2024年11月時点)で実施中。新型コロナウイルス感染拡大により食の支援の必要性が高まったとのことです。
今回、イトーヨーカドー サステナビリティ推進部 総括マネージャーの小山遊子さんにフードドライブについて伺いました。
――フードドライブではどの食品の需要が高いですか?
小山さん:いちばん需要があるのはお米ですね。こども食堂や他の施設でもいちばん消費されるので、非常に喜ばれています。なかでもこども食堂は、お金が不足するとお米が買えなくなるとのこと。袋に入ったお米の寄贈が多いのですが、パックご飯もお持ち込みいただけます。
ほかには、ひとり親家庭や親が忙しい家庭ではすぐ食べられるレトルト食品の人気があると聞いています。ただ、まだまだ食品が不足していますので、回収可能な食品は品目問わず寄贈していただけるとうれしく思います。
――寄贈されてとまどった食品はありますか?
小山さん:フードドライブ導入当初は、周知ができていなかったためか、回収不可のバナナや生魚が寄贈されたことがありました。栄養をつけてほしい、というお気持ちからだったと思うのですが。今では、回収不可の食品が寄贈されることはほぼありません。
また、すぐ食べられるパンや冷蔵・冷凍食品もニーズがあるのですが、届けるまでに時間がかかってしまうので、現状は物流・保管を考慮して受け取れません。これは、当社のフードドライブの課題のひとつで今後検討してきたいと考えています。
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イトーヨーカドーやヨークマート、ヨークフーズで回収しているのは、お米や小麦粉などの穀類、インスタント・レトルト食品、缶詰、乾物、お菓子、調味料、飲み物(アルコール類除く)。ただし、下記のような条件付きです。
・未開封のもの(外装が破損していないもの)
・賞味期限が明示されていて2か月以上残っているもの
・常温保存できるもの
一方、回収できないのは、生鮮食品、冷凍・冷蔵保存食品、アルコール類、お弁当・手づくり品、賞味期限の記載のないもの。
筆者が寄贈するとしたら野菜を手軽に食べてほしいので、乾燥野菜かな。フードドライブで回収できないものは廃棄されてしまうので、寄贈前にチェックしないと。・・・取材を通して、具体的にそんなプランが浮かんできました。
運営側の方のお話を伺っていると、「自分だったら」と、寄贈する側・される側両方の気持ちになって想像力がふくらみます。こういった当事者としての「想像力」こそがアクションを起こすうえで大事なのかもしれません。
店舗で買い物したものをそのまま寄贈・・・という例も
――うれしかったエピソードはありますか?
小山さん:こども食堂を利用した子どもからの「ありがとう」と手書きされた手紙はうれしかったですね。私たちのやっているフードドライブの社会貢献性が高いことをあらためて認識でき、充実感があります。
また、当社の従業員が学生時代に、友人がフードドライブの支援を受けるのを間近で見ていました。自分が入社したイトーヨーカドーでフードドライブの運営に関わるとは思わなかったが、やってみると共感でき、誇りを持てるとのこと。
さらに、店舗で買い物したものをそのまま寄贈してくださるお客様もいて意外でした。本当にありがたいです。
――寄贈される食品は増えていますか?
小山さん:私たちの活動がお客様に浸透してきましたので、寄贈される食品は年々増えています。2020年の開始から4年で合計15万5千トンの食品が寄贈され、大変ありがたく思っています。各店舗に寄贈量を掲示することでお客様にフィードバックしています。
また、よくお世話になっているフードバンクかながわさんからは、「イトーヨーカドーさんの寄贈量がいちばん多い」と言っていただき、従業員のモチベーションアップにつながっています。
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小山さんのお話を聞いて、フードドライブはただの施しではなく、そこに関わる人たちの心を豊かにしていることに気付きました。筆者が日常的に利用するイトーヨーカドーがスーパーマーケットを超えた存在に思えてきたかも。
課題は「食の安全」と「需要」の両立
――今後やりたいことを教えてください。
小山さん:フードドライブを設置する店舗を増やしていきたいですね。そのためには、当社とマッチするフードバンクを見つけることや寄贈された食品をどう運ぶか(物流)が課題になります。
寄贈された食品がいつどこにあるのかをトレースする必要もあります。食品の安全は慎重に考えなければならないので、簡単ではないです。しかし、供給が需要に追い付いていない状況なので、お客様からのご協力ももっと得られるよう努めていきます。
――最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
小山さん:買い物ついでに、このような社会貢献活動ができることを知ってほしいです。買い物に出かける前に、家に寄贈できる食品がないかを賞味期限を見つつチェックし、あれば寄贈にご協力頂けるとありがたいですね。
こども食堂は世の中にだいぶ浸透したのですが、まだまだ食品が足りていません。寄贈品が多くても回収できるので、遠慮なく寄贈していただければと思います。
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今回、小山さんのお話を聞いて、フードドライブが子どもたちの成長を支えていることがわかりました。企業・お客さん・団体など多くの人たちが協力しあった結果ではないでしょうか。
ちょっとした行動が多くの人の役に立つのがこの活動の特徴。筆者もフードドライブに寄贈してみようと思います。皆さんもできる範囲で寄贈してみてはいかがでしょうか。
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取材・文/峯あきら