目次
ソーシャルスキルトレーニング(SST)って何?
ソーシャルスキルが低いと、対人関係で困難を抱えることになります。ソーシャルスキルとソーシャルスキルトレーニングについて、意味や特徴などを確認します。
ソーシャルスキルとは社会技能
ソーシャルスキル(社会技能)とは、対人関係や社会ルールを守るために必要な力です。例えば「知り合いにあいさつする」「アイコンタクトを上手に取る」「話すスピードを相手が聞き取れるように調節する」といったスキルがソーシャルスキルになります。
また、相手に不快感を与える言葉を避けようという思考面もソーシャルスキルに入ります。ソーシャルスキルは、成人した大人でも高いスキルを持っているとは限りません。個人の性格や特性の影響が大きく、育った環境や受けた教育にも左右されます。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは
ソーシャルスキルトレーニングは、「Social Skills Training」の和訳で「SST(エスエスティ)」とも略されます。主にコミュニケーションスキルで悩む大人や子ども向けに行われるトレーニングです。
ソーシャルスキルの習得によって問題を解決する方法を学び、社会生活を過ごしやすくするのが目的です。
ソーシャルスキルトレーニングは、1940年ごろの行動療法から発展したといわれています。今日では、精神科医療におけるリハビリ、教育機関や職場のメンタルヘルス、就労支援の領域などで広く行われています。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の効果
ソーシャルスキルトレーニングはどのような問題を解決するのでしょうか?大人と子どもそれぞれに役立つ、ソーシャルスキルトレーニングの効果を説明します。
大人にとってどのように役立つか
ソーシャルスキルトレーニングは、社会生活を送る上で自分が困っていることを解決するためのものです。主に、以下のような知識・スキルです。
●人間関係を構築するための基礎知識
●相手の反応から思考や感情を読むスキル
●トラブルにならない自己主張の仕方
●対人関係で問題が起きたときの対処方法
例えば、友人や上司などの関係性に合わせた対応ができるようになったり、無理な残業を断るなど、対人関係でうまく自分を主張できるようになったりするのに役立ちます。
自分に必要なソーシャルスキルトレーニングを身に付ければ、社会生活を送る上での悩みが減りストレスが軽くなります。
子どもにとってどのように役立つか
ソーシャルスキルトレーニングでは、正しく学べば誰でも対人スキルが向上すると考えます。もともとは発達障害の子ども向けの社会訓練など、精神科医療の分野で使われていましたが、現在は一般的な教育現場にも導入されています。
子どもの場合、まだソーシャルスキルがうまく覚えられていないせいで友達とトラブルになるケースが少なくないでしょう。
ソーシャルスキルトレーニングは、「自分のことばかり話して友達に嫌がられる」「友達のつくり方が分からない」といった子どもの悩みに役立ちます。
人と関わる力を育て、または改善することで、人間関係や社会生活をスムーズにするにはどうすればよいのか具体的に分かるようになります。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の方法
ソーシャルスキルトレーニングには、有名な「ロールプレイ」以外にも、ゲームやディスカッションなどいくつかの方法があります。どのようなことをするのか、ソーシャルスキルトレーニングの具体的な内容を解説します。
ロールプレイ
ソーシャルスキルトレーニングの基本的な方法は、「教示・モデリング・リハーサル・フィードバック・般化(はんか)」です。
まず、ソーシャルスキルトレーニングが必要な理由を理解してもらい、次にモデルを見て適切なやり方を学びトラブルの原因を探ります。
リハーサルでよく行われるのがロールプレイです。実際の生活場面を再現して演じることで、知識だけでなく経験を通して練習します。フィードバックでは、リハーサルのどこが良かったか、修正したほうがよいポイントはどこか伝えます。
般化は、学んだスキルを生活の中で実践してもらい、問題があればまた一緒に考え、繰り返すことで使えるようにしていくことです。
ゲーム
ゲームの中で、ルールを守る・他の人と協力する・負けを認めるといったソーシャルスキルを身に付ける方法です。
例えば、特定のテーマに従って並ぶ「整列ゲーム」、動物や道具などのまねをして正体を当てる「私は誰でしょう?ゲーム」は子どものトレーニングに使われます。
大人向けにも、表情や声の調子だけでさまざまな「はぁ」を言い分けて、どんなお題か当ててもらう「はぁって言うゲーム」などがあります。特に子どもにとっては、訓練と堅苦しくならずに楽しみながら学べるのがメリットです。
ディスカッションや共同行動
ディスカッションやディベートは、相手の意見をしっかり聞き、それを踏まえて自分の意見を言うというスキルが必要になります。
ディスカッションは個々に議論することで、ディベートは賛成派と反対派に分かれて意見を言い合うことです。
共同行動は、料理や工作を通して「他の人と一緒に同じ目的に向かって協力すること」がテーマです。生活に近い感覚で、おしゃべりのような会話や役割分担などが行えます。どちらも、より複雑で実践的なコミュニケーションを学べます。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)はどこで学べるか
ソーシャルスキルトレーニングを実施している場所を紹介します。専門の施設に行くのはハードルが高いと思うかもしれません。併せて家庭で行えるソーシャルスキルトレーニングのコツも見ていきます。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)を実施している場所
ソーシャルスキルトレーニングを行っている場所は以下の通りです。
【大人向け】
●精神科のデイケア・ナイトケア
●地域若者サポートステーション
●障害者就労・生活支援センター
●就労移行支援事業所、就労継続支援A型・B型事業所
●自立訓練事業所
●地域活動支援センター など
【子ども向け】
●病院
●学校
●児童発達支援事業所
●放課後等デイサービス
どのような条件で体験できるか確認してみましょう。また、SSTトレーナーや心理学系の専門家などに、ソーシャルスキルトレーニングを受ける方法もあります。
工夫すれば自分でも実践できる
ソーシャルスキルトレーニングは、特別な場所に行って訓練したり専門家にコーチしてもらったりしなくても、自分で実践することが可能です。あいさつや普段の会話など、社会生活の中でソーシャルスキルを意識してみます。
あいさつの仕方なら、適切な声の大きさや声を掛けるタイミング、表情になっているかチェックしてみましょう。お手本になるようなモデルのまねをするのも効果があります。
自分一人で実践していると分からないことが出てくるかもしれません。そんなときは、専門の書籍・ワークブックなどを参考にするのもおすすめです。
子どもと一緒にソーシャルスキルトレーニング(SST)を行う方法
子どもの教育にソーシャルスキルトレーニングを取り入れてみたい人もいるかもしれません。家で子どもと一緒にトレーニングするときも、身近なシチュエーションで行うことがポイントです。
例えば、「ごっこ遊び」は場面と役割を意識しながら、社会マナーや言葉遣いを学べます。ゲームや会話の順番を待つことも、自然に「順番待ち」の練習になります。
子どもが課題をクリアしたらほめて伸ばすことが大事です。すぐできなくてもあまり焦らず、少しずつステップを踏ませることを意識しましょう。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)を取り入れよう
ソーシャルスキルをうまく身に付ければ、対人関係や社会生活における悩みがだいぶ軽くなります。ソーシャルスキルトレーニングには、ロールプレイやゲーム、ディスカッションや共同行動といったバリエーションがあります。
大人でも子どもでも、専門の施設や専門家のところに通う場合は、先に受講条件を調べて問い合わせてみましょう。
ソーシャルスキルは、日常生活で実践しながら覚えることもできます。家庭や職場のコミュニケーションにソーシャルスキルトレーニングを取り入れれば、個々が抱える生きづらさを軽減することが期待できるでしょう。
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構成・文/HugKum編集部