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そもそも「103万円の壁」って何?
「103万円の壁」とは、パートやアルバイトなどで働く人の年収が103万円を超えると、所得税が発生する境界線のことです。
給与収入が基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)を合わせた103万円を超えると所得税がかかり、手取り収入が減ってしまいます。
上記に加えて、19歳〜22歳の大学生世代が「103万円の壁」を超えて働いた場合、「特定扶養控除」が使えなくなり、親の税負担が増えます。
家庭における「103万円の壁」のおもな問題点
・給与収入が103万円を超えると所得税が発生する【本人の手取りが減る】
・大学生世代の子が年収103万円を超えると「特定扶養控除」を受けられなくなる【親の手取りが減る】
・「103万円の壁」を超えないように、あえてシフトを減らす【働き控え】
「103万円の壁」はいくらまで引き上げられる?
2024年12月時点で「103万円の壁」がいくらまで引き上げられるかは決まっていません。
国民民主党は103万円の壁を178万円まで引き上げようとしていますが、与党(自民・公明党)は123万円に調整しようとしている状況です。どちらの案が通るかで、私たちの手取り収入が大きく変わります。
まずは、国民民主党と与党のそれぞれの言い分について解説しますね。
【178万円】国民民主党の主張
国民民主党は「103万円の壁」を178万円まで引き上げることを目標にしています。
「103万円の壁」ができた1995年と比べて、最低賃金は1.73倍に増えているのに、年収の壁は約30年間変わっていません。
「30年前と比べて時給が増えているのに、年収の壁が変わらないのはおかしいですよね?『103万円の壁』も今の時代に合わせて178万円に引き上げましょう!」というのが国民民主党の言い分です。
1995年の最低賃金の平均値は611円でした。時給611円であれば、103万円稼ぐために1685時間働けます。
それに対し、2024年の最低賃金の平均値は1,054円です。時給1,054円であれば、103万円稼ぐために977時間しか働けません。
1995年と同じように1685時間働いても非課税にするには、時給1,054円×1685時間=約178万円が必要というわけですね。
【123万円】与党(自民・公明党)の主張
与党(自民・公明党)は「令和7年度税制改正大綱」にて、103万円の壁について123万円への引き上げを明記しています。
「178万円じゃなかったの?」
「103万円から123万円の引き上げで決定ってこと?」
このような疑問を感じている方も多いと思いますが、決定したわけではありません。与党(123万円)と国民民主党(178万円)の協議はまだ続いています。
与党が123万円と主張する理由は、ざっくりいうとこんな感じです。
国民民主党:「国民の手取りを増やすために、『103万円の壁』は178万円への引き上げが必要です!」
与党:「わかりました!103万円の壁を引き上げましょう! でも、財源確保が難しいから123万円でどうですか? 物価上昇率で見ると123万円が妥当な数字ですよ」
国民民主党が、最低賃金の上昇率に合わせて178万円を主張しているのに対し、与党は物価上昇率を引き合いに出したわけですね。
【シミュレーション】「103万円の壁」が123万円、178万円に引き上がるとどうなる?
「103万円の壁」が引き上がることによって、私たちの手取り収入がいくら増えるのか気になりますよね。
ここでは、従来の「103万円の壁」が123万円、178万円に引き上げされることで、どのような効果が得られるのか解説します。
「103万円」を意識していない会社員の場合も…
「103万円の壁」というと、それ以上稼ぎのある会社員には関係ないと思っていませんか?
実は「103万円の壁」に含まれる基礎控除と給与所得控除が引き上げられることで、会社員の手取りが増える可能性があるんです。
「103万円の壁」が123万円に引き上げられた場合、178万円に引き上げられた場合、それぞれどの程度の減税効果が期待できるのか解説します。
【与党案】103万円→123万円のシミュレーション
与党は基礎控除、給与所得控除それぞれ10万円ずつ引き上げることを提示しています。
年収ごとに、どれくらい減税効果が期待できるのかシミュレーション結果は下記の通りです。
年収300万円で5,000円、年収500万円で1万円の減税(=手取りアップ)です。確かに手取りは増えますが、金額的には微妙ですよね。
【国民民主党案】103万円→178万円のシミュレーション
続いて、国民民主党が提案する178万円に引き上げた場合のシミュレーションです。
国民民主党案の場合、給与所得控除は現行と同じ55万円で、基礎控除を48万円→123万円へ引き上げる提案をしています。
国民民主党案が通れば、178万円の壁を超えて年収200万円になったとしても税負担は5,000円程度で、8.6万円の減税が期待できます。
年収が増えるほど減税効果が増え、年収800万円では、22.8万円の減税が期待できる計算です。
【学生向け】パート・アルバイトの場合
「令和7年度税制改正大綱」によると、与党は「特定親族特別控除(仮称)」の新設を予定しています。
これにより、19歳〜22歳の大学生世代は、年収150万円まで非課税でアルバイトができるようになります。また、親は63万円の所得控除(=減税)が可能です。
「計算ミスで年収150万を超えちゃったら、控除はなくなるの?」との不安の声には朗報も。その場合は、控除額がいきなり0になるわけではなく、段階的に控除額が減る仕組みが導入される予定です。
【まとめ】「103万円の壁」は引き上げ額によって減税効果が大きく異なる
今回は与党案の123万円、国民民主党案の178万円のケースで「103万円の壁」引き上げシミュレーションを行いました。引き上げ額により減税効果が大きく異なることがご理解いただけたかと思います。
与党は「令和7年度税制改正大綱」にて123万円への引き上げを明記しましたが、この法案はまだ成立していません。国民民主党は引き続き178万円への引き上げの協議を行っているので、今後の動向に注目しましょう。
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記事執筆
独立系ファイナンシャルプランナー(FP)として執筆業を中心に活動中。2児の父親でもあり、家計や資産形成に関する執筆が得意。また、マンションの売買も経験しており、実体験に基づいたライティングを強みとしている。各種金融メディアでの執筆・監修業のほか、自身のメディアとして「もにゅら親子の節約ブログ」「もにゅらのクリプト部屋」を運営中。