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大阪・関西万博にも採用された土に還るポリエステル

近年、注目を集める環境を考慮したサスティナブルファッション。2025年の春に東京ビッグサイトで開催された「ファッションワールド東京」でも「サスティナブルファッション EXPO」のブース数は増え、盛り上がりを見せていました。
その中でも特に注目を集めているのが、「V&A Japan」による特定条件の堆肥に埋めると、約1年で、水と二酸化炭素、バイオマスに分解する特殊な「特定堆肥中生分解ポリエステル Craftevo® ReTE」です。
ゴミがほぼ出ない驚きのポリエステル

使用後は回収し、堆肥化。そうすることでゴミを削減焼却する必要がなく、二酸化炭素の40%削減につながります。しかも、土に還元されたあとは、大部分が気化されるため容量はほとんど変わらず、ほぼゴミにならないとのことです。
担当者によると、リサイクルはすばらしい取り組みではあるが、リサイクル自体が環境問題を生み出してしまう矛盾もあるとのこと。長く使い、最後は土に還るポリエステル「Craftevo® ReTE」は、環境負担をより一層抑えられます。
大阪・関西万博ではユニフォーム2万着が土に還るポリエステル製!

なんと、大阪・関西万博のユニフォームとして採用され、2万着が用意されているとのことです。実際に筆者も触ってみましたが、通常のポリエステルの肌触りとまったく変わリませんでした。耐久性も一般のポリエステルと同等とのことです。
「ReTE」使用製品には製品識別タグをつけることで回収を可能に。お買い物の際に、環境問題に取り組んでいる製品のタグを確認するなど、消費者としても意識することができると感じました。
キノコからバッグや財布ができる?!

次は、こちらも驚きのキノコの菌糸から作られた韓国の「Heri Farm’s Inc.」による「キノコ菌糸体ファブリック(マッシュルームレザー)」をご紹介します。
とはいえ、スーパーに並ぶような食用のキノコがそのまま使われているわけではありません。キノコの下の地中に広がる菌糸体が用いられ、生地に加工されるのです。
「キノコ菌糸体ファブリック」はどんな手触り?

キノコの菌糸を思わせるユニークな模様なので、おそるおそる触ってみると…手触りはまるでレザー! むしろ、本革より柔らかく、手触りもよく、本革特有の動物的なニオイがせず、好ましく感じました。担当者は、焼くとキノコのいいニオイがすると話していました。
「キノコ菌糸体ファブリック」は、革を作るために動物を殺す必要がなく、なめし作業による環境負荷がありません。また、使用したあとは土へ還り、生産にも使われる循環型の素材です。
日本での販売は未定とのことですが、これからの活躍に期待したいです。
>>>「Heri Farm’s Inc.」についてはこちらから
バナナで作るやさしい生地の「BANANA CLOTH」

キノコの次は、「MNインターファッション株式会社」による廃棄されたバナナの茎から採取した天然繊維でつくられた生地の「BANANA CLOTH」です。伝統的な天然繊維である綿や麻の作付け面積が減少している中、バナナクロスは新たな天然素材として注目されています。
バナナの茎の排気量は年間約10億トン!

世界中で食べられている身近な果物・バナナは、フィリピンやエクアドルなどの熱帯・亜熱帯地域で栽培されています。新芽だけを残し、収穫を終えた茎は伐採されるため、世界129の国と地域で廃棄されているバナナ の茎部は年間約10億トンにものぼります。
廃棄材から天然繊維
一般消費者が購入できる商品ラインナップはトートバッグや靴下などまだ少ないですが、要注目です。
バナナから紙も作れる!?バナナペーパー

もう一つ、バナナの茎からできた「バナナペーパー」を使ったエシカルハンガーをご紹介したいと思います。「バナナペーパー」は、先出の「BANANA CLOTH」と同様、バナナの茎から取った「バナナ繊維」を原料としています。その「バナナ繊維」を使い、日本の和紙の技術を用いて作られた「フェアトレード」の紙です。
「エシカルハンガー」を使えば現地の雇用にも貢献できる!

「バナナペーパー」原料のバナナの茎は、アフリカ南部にある国ザンビアのエンフエ村で採取されています。エンフエ村の女性たちに雇用が生まれ、結果、子どもたちが学校に通えるようになったそうです。
ちょうど4月は衣替えの季節ということで、我が家もこの機会に「エシカルハンガー」に切り替えようと思っています。脱プラスチックの取り組みやサスティナブルとは何かを考えるきっかけになる商品だと感じました。
>>>バナナペーパーについてこちらから
廃棄される革ジャンがおしゃれなバッグに!

タイの「The ReMaker」のバッグや革製品の小物は、使われなくなった高級かつ上質な革ジャケットから作られます。
革製品のなめし工程には二酸化炭素を多く排出し、さらに化学物質を使用するため、水質汚染の問題も抱えています。「The ReMaker」では革製品を再利用しているので、これらの問題が起きません。
さまざまな革生地を使って作られるため、縫い目や質感が異なり、世界で一つだけのバッグが手に入ります。「The ReMaker」は多数のデザイン賞を受賞。日本でも2014年にGOOD DESIGN賞を受賞しています。
本革のバッグなのにリーズナブル

また、本革を再利用しているので、高級感があるのにリーズナブル。実際、筆者も手に取ってみましたが、デパートで見かける数十万以上するバッグと同品質と感じました。「The ReMaker」は1万円から2万円台のため驚きです。
デザイン性も高く、上質で、シックで落ち着いた雰囲気。ビジネスシーンにもカジュアルシーンにも合うため、夫婦でおそろい使いも素敵だと思いました。また、はじめから柔らかく手になじむというのもアップサイクルならではのよさですね。
>>>「The ReMaker」はこちらから
着物をおしゃれなシャツにアップサイクル「シャナリシャツ」

一点もののオリジナル

また、着物にあしらわれる柄や色、そして生地の素材には強い個性があります。「シャナリシャツ」は、着物を1着ずつ分解し、絶妙なバランスを取りながら異なる2、3着の生地を縫い合わせて新たなシャツを仕立てています。
製造工程では、地域や福祉への貢献も
地域の福祉作業所に通う若い世代の方々や、デイケアセンターに通う高齢者、そして親の介護や子育てでフルタイム勤務が難しいお母さんたちが仕事としてシャツづくりに参加。地域から掘り起こされた上等な素材を、地域の方々と一緒につくり上げる素敵な製品です。
「シャナリシャツ」に興味がある方、おうちのタンスに眠っている着物を寄付したい方(シャナリシャツ購入時のクーポン付き)はウェブサイトをチェックしてみてくださいね。
米袋がバッグに!? エシカルな「Kometai」

アパレルメーカーの「 GSI ABROS」による「Kometai」は、生産管理をしても毎年出てしまう米袋の製造ロス品から、新しい循環を作るために生まれたブランドです。
ロスを最小限に抑えることで、米袋を処分する際に発生するCO2を削減し、地球環境の改善にもつながります。

日本の職人技による丁寧な縫製。米袋のデザインはレトロで味わい深く、ひとつひとつ異なる風合いが楽しめます。
もともと数十キロある米の重みに耐えられる米袋。3層構造の加工で、強くて丈夫のため、普段使いだけでなくアウトドアのシーンでも大活躍すると思います。米袋の和レトロなテイストを活かしたアイテムは海外の方にも人気とのことで、お土産にも最適ですね。
今年立ち上がったばかりのプロジェクトで、一般の店舗販売はこれからとのこと。ウェブサイトでは購入できるので興味のある方はのぞいてみてください。
身近なファッションだからこそ、無理せず社会貢献ができる!

数年前まではファッション関連の展示会でも小さなブースだったサスティナブルファッション部門も、これほど大規模に展開するようになっていて驚きでした。
SDGsやサスティナブルと聞くと、気にはなるけど何をしたらいいかわからないという方も多いと思います。服は普段から身につけるものなので、環境に考慮した製品を普段使いすることで、自然と社会貢献につながります。
今回の取材では、すばらしい取り組みをしている企業に出合えたのが何よりの収穫でした。いきなり全てをエシカルな商品に変えることは難しいかもしれませんが、自分の身の回りのものから少しずつ切り替えて、いつかそんな商品が当たり前になる世の中になるとよいと感じました。
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文・取材/Rina Ota