「三行半」とは?
読み方と意味
まずは読み方と意味を確認しておきましょう。この言葉は『三行半』と書いて「みくだりはん」と読みます。離婚することを意味する言葉です。
「三行半」の由来・語源
江戸時代、一般庶民が夫婦関係を解消する際には、離縁状の交付が必要でした。その内容が3行半で書かれていたことが多かったため、離縁状の俗称を『三行半』と呼ばれるようになりました。
それが転じて、現在は離婚だけでなく、恋人が別れる際や会社を辞める際など、別れを伴う機会に『三行半』が使われるようになっています。
江戸時代の離婚事情
江戸時代の日本は、実は今よりも多数の夫婦が離婚する離婚大国でした。※1 今では考えられないことですが、離縁状のない再婚は処罰の対象となることもあったそうです。
当時は離縁状の受け渡しがあって初めて夫婦ともに再婚することができたため、『三行半』を書くことは離婚に際しての義務とされていました。そのため離縁状を渡した妻から「返り一札」という受取書を取った夫もいたそうです。
かつては夫が自分勝手に妻を離縁できたとして、夫から妻へ『三行半』を突きつけることが女性の地位の低さを示すと考えられてきましたが、最近の研究では、夫に落ち度がある場合も同様の文書が書かれていたことがわかっています。※2
※1 参議院立法と調査2006 p94
※2 福井県文書館 学校向けアーカイブズガイド
気になる「三行半」の文面は

「三行半」は「我勝手につき」という書き出しで始まることが多かったそうです。現在の「一身上の都合により」のようですね。
中には浮気性の夫の性格を見越して、「先渡し三行半」を受け取っておく妻もいたとか。現代であれば離婚届を先に用意しているようなものでしょうか。
使い方を例文でチェック!
では、『三行半』の使い方を例文でチェックしていきましょう。
1:彼が浮気している証拠を見つけ、迷わず三行半を突きつけた。
現代では結婚していなくても、別れたいときには『三行半』を使うこともあります。
2:夫が何度言っても家事や育児をしようとしない。もう三行半を突きつけるしかない。
妻から夫への最終通告にも『三行半』は使えます。
3:ハラスメントを注意してくれない今の会社には、もう三行半を突きつけるつもりだ。
待遇がひどい会社にうんざりした場合、退職届を『三行半』に例えることもできます。
類語や言い換え表現は?

では、『三行半』を別の言葉で言い換えたい場合、どのような表現を使うことができるのでしょう。『三行半』に似た表現を探してみました。
1:愛想を尽かす(あいそをつかす)
あきれて好意や親愛の情をなくす、見限るという意味の「愛想を尽かす」。『三行半』を書きたくなる心境です。
2:離縁状(りえんじょう)
夫婦や養親子の関係を絶つ際に作成する「離縁状」。『三行半』と同じく、縁を切る際の証拠書類です。
3:暇文(いとまぶみ)
「暇(いとま)」とは職務を離れるという意味があり、古典では休暇または辞職を願う文書を「暇文」と言いました。『三行半』と同じく、職場から離れたい場合に提出する書類です。
4:引導を渡す(いんどうをわたす)
あきらめるよう最終宣告をする場合などに使う「引導を渡す」。『三行半』と同じく、歩み寄れる見込みがない場合に使う言葉です。
対義語は?
『三行半』にはどんな対義語があるのでしょうか。よく使われる「三行半を突きつける」の反対の意味に当たる言葉をいくつかご紹介します。
1:首っ丈(くびったけ)
異性に心をひかれ夢中になる様子の「首っ丈」。『三行半』とは逆の心境と言えそうです。
2:婚姻届(こんいんとどけ)
『三行半』が書かれる状況とは逆に、現代の日本で結婚したときに届け出る書類です。
3:人別送り状※3
『三行半』が使われていた時代、他の領地に嫁ぐ場合は妻となる女性の詳細を書いた「人別送り状」が必要でした。『三行半』とは逆の手続きに必要だった書類です。
※3 新潟県立文書館解説
英語表現は?
では、『三行半』は英語ではどのように言い表すことができるのでしょうか。最後に『三行半』と言えそうな英語表現をご紹介します。

1: Letter of divorce
現代の『三行半』とも言える「離婚届」という意味の英語です。
2:Dissolution
「解消」や「終了」という意味の単語で、特に法的な契約や関係が終わることを表現する際に使われます。職場に『三行半』を突きつける際はこちらを使います。
3:Breakup letter
直訳すると「別れの手紙」。恋愛関係や友情が終わるときに使われます。こちらも『三行半』に近い意味になります。
「三行半」の意味と由来を知って、正しく使ってみましょう。
今でも使われている『三行半』と言う言葉。『三行半』は全国の博物館などで現物を見ることができます。機会があれば見に行ってみてください。
あなたにはこちらもおすすめ

構成・文/kidamaiko