ユースクリニックとは
「ユースクリニック」は若者が利用できる施設として知られています。まずは、ユースクリニックで何ができるのか、受け付けている相談内容など基本的な仕組みを確認しましょう。
医療の専門家に相談ができる若者向けの施設
ユースクリニックとは、北欧発祥の医療関連施設です。若者が無料または低額で医療の専門家に相談でき、利用には原則保険証も不要です。
スウェーデンの場合、13歳から25歳の若者が対象ですが、日本では施設によって対象年齢にばらつきがあります。
主に10〜20代の若者が利用できるため、思春期に気になっている悩みがある場合はユースクリニックの利用を検討してみましょう。
若者特有の心や体の悩みを相談できる
ユースクリニックで相談できる内容は、幅広く設定されています。若者の不安を解決するために、性に関する悩み・体の悩み・精神的な悩みなど、さまざまな相談が可能です。
例えば、性感染症についての医療相談、避妊方法などの性教育分野が該当します。また、生理痛や思春期の体の変化など若者特有の悩みや、健康や医療について気になることの相談も可能です。
そのほか、人間関係やメンタルヘルスなど、精神的な悩みも相談できます。なお、日本のユースクリニックは施設によって専門分野が設けられているケースもあるため、あらかじめ施設に対応している相談内容を確認しておくとスムーズです。
日本でのユースクリニックの現状と動向

ユースクリニックは北欧発祥の施設で、日本では若者の医療サポートが可能な施設として注目を集めています。日本国内のユースクリニックの現状や、動向について確認していきましょう。
各都道府県で運営・開催が増えている
ここ数年、ユースクリニックの運営や開催数は増加しています。各都道府県でさまざまな施設の運営やイベント開催が行われており、目にする機会も多いでしょう。
例えば、東京都では「とうきょう若者ヘルスサポート(わかさぽ)」が電話相談や対面相談を受け付けています。2023年5月にはウエルシア坂戸若葉駅東口店で埼玉県初のユースクリニックが開催されました。
また、2025年1月からは東京都品川区が区内在住の中学生以上の10代を対象に、「ユースヘルスケアしながわほけんしつ」を開設しています。ユースクリニックを利用したいと考えている場合は、住んでいる自治体での運営・開催状況を確認してみましょう。
出典:とうきょう若者ヘルスサポート(わかさぽ)|東京都福祉局
:ユースヘルスケアしながわほけんしつ
:女性用コンドームなど展示 埼玉初のユースクリニック、ウエルシアで開催 100人来場、若者が性の相談|埼玉新聞
さまざまなタイプのユースクリニックがある
日本では、さまざまなタイプのユースクリニックが運営・開催されています。
例えば、婦人科などの医療機関に併設されている「産婦人科クリニック併設型」では専門的な医療相談や医療機関との連携が可能です。自治体が資金や場所を提供する「自治体運営型」のユースクリニックも増えています。
そのほか、NPO法人がボランティアで運営する「NPO法人運営型」のユースクリニックも各地にあり、悩みに合う施設を選択できるでしょう。なお、婦人科併設の場合は女性のみなど、対象者が制限されているケースもあります。
出典:ユースクリニック事業の発展に向けて提言書|こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業
ユースクリニック運営の課題

日本でのユースクリニック運営には、いくつかの課題が残されています。主な課題と、今後の展望について確認してみましょう。
日本では数が少なく認知度が低い
ユースクリニックが日本で注目を集めるようになったのは、ここ数年のことです。運営や開催は増えているものの、十分な認知度や数があるとはいえません。
2024~2025年に初めてユースクリニックの運営・開催が始まった都道府県もあり、まだユースクリニックが身近に存在しない自治体もあります。
利用したいと考えている若者がいたとしても近くにユースクリニックがなければ活用は難しく、認知度が低ければニーズの有無も判断できません。今後は運営や開催をさらに増やし、認知度を上げていく努力が求められるでしょう。
出典:若者の性の悩み、気軽に 県立看護大が相談の場 金沢市内にユースクリニック開設へ|社会|石川のニュース|北國新聞
相談員の確保や医療機関との連携が難しい
ユースクリニックは無料または低額での相談を受け付けているため、資金不足が起きやすく専門家である医療従事者の確保が難しくなっています。
ボランティアでの活動や、自治体の補助がなければ長期間の運営は困難です。ユースクリニックの発展のためには、今後資金面や人材確保をどのように進めるかが課題といえるでしょう。
また、医療機関との連携をしている施設の数も多くありません。深刻な悩みを持つ若者に対しては医療機関への紹介が望まれますが、子どもや若年層への対応ができる医療機関は限られており、連携不足も課題です。
ユースクリニックが必要とされる理由

日本ではまだ認知度の低いユースクリニックですが、必要性は議論されています。なぜ若者が気軽に相談できる施設が求められているのか、理由を探ってみましょう。
若者が正しい知識を身に付ける機会を設ける
日本では、学校や家庭での体の発達や性に対する教育が十分とはいえません。正しい知識を身に付けるには知る機会が必要ですが、気軽に相談できる場は限られています。
インターネットや周囲の若者から得る情報だけでは間違った知識が混ざっている可能性があるため、専門家に相談できるユースクリニックが必要ではないかと議論されているのです。
若者が気軽に相談できる場を設けるには、ユースクリニックの認知度を高めていく必要があります。
親や学校に話せない悩みも相談できる
恋愛・性・自分の体・精神的な悩みなどは、親や学校に相談するハードルが高くなります。
一方、ユースクリニックでは保険証が不要なことに加えて、予約や相談の際も原則親や学校に連絡がいくことはありません。
プライバシーを守ってくれるため、話しにくい相談でも安心して利用できます。施設によってはオンラインや電話相談に対応しているところもあり、さらに相談しやすいでしょう。
若者のためのユースクリニックは増えつつある

北欧で生まれたユースクリニックは、最近日本でも注目を集めています。今後は若者をサポートするため、増加していくことが考えられるでしょう。
現状では認知度や人材確保などの面で課題が残っていますが、若者への認知度が増し需要が増えれば、自治体の補助も得られるでしょう。ユースクリニックをうまく活用することで、若者特有の悩みを解決し、専門家による正しい知識を得る機会にもなります。
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構成・文/HugKum編集部