雷から身を守る方法は?
雷から身を守るための基礎知識として、まずは正しい避難方法を説明します。比較的安全な場所とそうでない場所の見分け方、安全と思われる建物の中にいても注意すべき点を見ていきます。
外にいたときは建物内に避難する
外にいるときに雷から身を守るには、建物内に避難するのが原則です。安全性の高い場所は、金属に囲まれた建物や乗り物の中です。鉄筋コンクリートの建物、車や電車の中、ゴルフ場の避雷小屋が代表的で、木造家屋も外にいるよりは安全といえます。
あまり安全でない場所は、屋根のない車、あずまやのように壁のない建物、避雷設備のない建物、テントなどです。
雷は高いものに落ちやすい性質があるため、ゴルフ場・グラウンド・プール・砂浜などでは雷に打たれる危険性が高くなります。近くに高いものがない開けた場所にいるときは、早めに屋内へ避難しましょう。
近くに建物がなければ5m以上の高いものを探す
周囲に避難できるような建物や乗り物がなければ、5m以上の高いもの(電柱・煙突・鉄塔・建築物など)や配電線・送電線の「保護範囲」に入る方法があります。高いものや配電線・送電線が雷を引き付けてくれるので、比較的安全といえます。

保護範囲とは、高いものから4m以上離れ、かつその頂点を45度以上の角度で見上げる場所といわれています。高いものが金属でできている場合は、約2m離れれば十分です。高い木のすぐ下や軒下は、そこに雷が落ちた場合、巻き込まれる危険があるので避ける必要があります。
安全な場所に逃げられないなら「しゃがむ」
外にいるときに、避難できる安全な場所も5m以上の高いものもない場合は、自分の高さをできるだけ低くする「雷しゃがみ」と呼ばれる体勢で身を守りましょう。
しゃがんで姿勢をできるだけ低くし、地面に触れる面積を小さくするのがポイントです。膝をつかずにつま先立ちになり、鼓膜を守るために耳をふさぎます。

腹ばいはしゃがむより低い姿勢ですが、近くに落雷した場合、心臓に電気ショックを受ける可能性が高くなるので避けるべきです。
家の中では電気器具から離れる
建物の中は落雷から身を守るのに適していますが、気を付けなければならない点もあります。
雷が建物に落ちた場合、電話線や電源コード、それにつながる電気器具、壁や柱、水道管などの金属部分に雷の電気が流れる可能性があるからです。落雷に備えて上記のものから1m程度離れるとより安全です。
パソコンや電話などが強力な電流で壊れないように、雷が鳴ったら電源・通信線を抜いておく必要もあります。冷蔵庫などの電気機器にはアース線を取り付けておきましょう。
雷の危険を予測するには?
避難の仕方は分かっても、雷が鳴ってから避難するタイミングはどのくらいが目安なのでしょうか? 雷の危険に備えてできる対策や、雷に関わる誤解、豆知識も紹介します。

積乱雲が見えたら雷を警戒する
雷がよく落ちる季節には、外出前に天気予報をチェックすることが大切です。「雷を伴う」「大気の状態が不安定」「竜巻などの激しい突風」という表現があったら雷の可能性に注意しましょう。
6~8月の午後から夕方の間は、関東・中部・近畿を中心に広い地域で雷がよく落ちます。12~2月は日本海沿岸で雷の危険が高くなります。
できる対策として、外にいるときは空の様子に注意し、積乱雲が近づく気配があったら屋内に避難するのが基本です。雷や雨の詳しい予報には、気象庁のナウキャスト(分布図)が便利です。
出典:雨雲の動き・雷活動度・竜巻発生確度(ナウキャスト)|気象庁
雷に関する豆知識
「雷が光ってから音が鳴るまで間があれば安心」といわれますが、そうとは言い切れません。音の速さは約340m/秒のため、光ってから音までの間が10秒なら、雷は約3.4km先で発生したことになります。
積乱雲の大きさは数十kmなので、雷の音が聞こえるということは「すでに積乱雲の下にいて危険」と考えたほうが適切です。
雷は高いものやとがったものに落ちやすいため、雷が鳴っているときに傘や釣りざお、ゴルフクラブなどを立てて持つのは危険です。
誤解されやすい点として、金属製のものを付けているかどうかは、落雷の確率にはあまり影響ありません。また、ゴムは電気を通さない絶縁体ですが、雷の電気パワーは膨大なのでゴム製のレインコートや長靴を身に着けていても身は守れないと覚えておきましょう。
雷に打たれたときの対処法も覚えておこう

一般に、雷に打たれた人の死亡原因は強力な電流による心肺停止です。しかし、心肺停止への応急処置とAEDで息を吹き返す可能性もあります。以前は専門家しかAEDを使えませんでしたが、2004年7月から一般の人も使えるようになりました。
呼吸がない人への応急処置
雷に打たれて呼吸がない人への応急処置として、心肺蘇生法を説明します。心肺蘇生を行うのは、相手が大声で呼びかけたり肩をたたいても反応がない、または反応があるか判断に迷ったり分からなかったりした場合です。
【心肺蘇生法】
1.先に救急車やAEDの手配を周囲に頼んでおく
2.お腹と胸を10秒間観察し、呼吸が普通か確かめる
3.呼吸が普通でない、または普通か分からない場合、心肺蘇生を始める
4.胸の真ん中に手を当て、胸が約5cm沈むくらいの力で胸骨を圧迫する(1分間に100~120回のテンポ)
コロナ感染を防ぐため、救助者はマスクを着けて相手の顔に近づきすぎないこと、胸骨圧迫のときには相手の口や鼻に布などを被せることが重要です。最新の心肺蘇生法ガイドラインでは胸骨圧迫がメインで、人工呼吸は技術と意思がなければ省略できます。
AEDの使い方
AED(自動体外式除細動器)は、心臓に電気ショックを与えてポンプのリズムを整える医療機器です。AEDを使う条件は、上記の心肺蘇生法と同じです。
【AEDの使い方】
1.AEDの電源を入れる
2.電極パッドのイラストに従って、パッドを相手の胸に貼る
(小学生未満の相手には、未就学児用モードや未就学児用パッドを使う)
3.AEDを付けた人から少し離れ、AEDが電気ショックの必要性を判断するのを待つ
4.AEDを付けた人に触れている人間がいないのを確認する
5.点滅しているショックボタンを押す
6.AEDの指示に従う
倒れているのが女性の場合、必要な部分だけ服をめくってAEDをセットします。ただし、ネックレスやブラジャーなどのワイヤーや金具部分が、パッドに触れないように注意しましょう。
しっかり学びたい人は、日本赤十字社の各都道府県支部などで、AEDの使い方を含めた救急法の講習を受けられます。
参考:講習リンク先一覧|講習に参加する|講習について|日本赤十字社
雷から身を守るためには正しい知識を身に付けよう
雷がよく落ちる6~8月は、海水浴場やプールに出かけたり、グラウンドでスポーツしたりする人が多い季節です。花火を見に河原へ行く人もいるかもしれません。
周りに5m以上の高いものがない開けた場所では、落雷の危険性が高まります。雷の危険は、出かける前に天気予報をチェックして、空の様子に気を配ることで予測できます。雷の音が聞こえたら、まずは屋内に避難しましょう。避難できるような場所が近くにない場合には、5m以上の高いものや電線の保護範囲に入ります。
親子で雷から身を守る方法を普段から話し合ったり、救急法の講習を受けたりするのもおすすめです。
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構成・文/HugKum編集部