元気な子どもでも、あっという間に命を失う
心臓震盪(しんぞうしんとう)ってご存知ですか。脳震盪(のうしんとう)と違ってあまり知られていません。
「心臓震盪」とは
公益財団法人 日本AED財団の田村秀雄理事長(Webサイト「子どもと医療」)によると、野球やサッカーなどのボールが、勢いよく胸の中央かやや左側にあたったときに、運悪く心室細動という不整脈が出現することがあり、これを心臓震盪と呼びます。なかには空手や喧嘩でも強い衝撃が胸に加わると起きるとのこと。
野球やサッカーなどのボールが、勢いよく胸の中央かやや左側にあたったときに、運悪く心室細動という不整脈が出現することがあります。いきなり心臓がけいれんしたように小刻みに震えだし、血液を送り出せなくなってしまい、10分も続くと死を迎えることになります。脳震盪(のうしんとう)になぞらえて心臓震盪(しんぞうしんとう)と呼びますが、心臓の場合は頭がボーッとなるだけでなく、突然死に至るので深刻です。(参考:子どもと医療)
起こりやすい年齢は?
心臓震盪は、正常な心臓でも起こります。大人よりも胸の骨が柔らかい子どもの方が、衝撃が心臓に伝わりやすいため、小中高生に起こりやすいそうです。この心臓震盪が起きると、血液を送り出せなくなり、10分続くと死に至るとか。
「心臓震盪」が起きたとき、すべきこと
「心臓震盪」が起きたら、どうしたら良いのでしょうか。
実は心臓震盪はそれが起きてしまってからでも治すことができます。その気になれば助けることができるのです。
その場に医者はいません。倒れて意識も反応もなければ、すぐに119番に通報しますが、救急車がやってくるのは8,9分後と言われます。その間、心臓がほとんど止まったままだと、脳の機能はさらに低下し、心臓もどんどん弱ってしまうので救命は極めて困難です。(参考:子どもと医療)
心臓マッサージでは心室細動は治せない
心臓震盪が起きていたら、助ける方法は、心臓マッサージとAEDが必要とのこと。
心臓マッサージは有用ですが、それだけでは救命率が1割強にアップするものの、心室細動は治せません。というのも、電気系統の故障で起こっている心室細動は、AEDという器械で心臓に電気ショックを与えて除細動を行うことが不可欠だからだそうです。
AEDを誤って使うのでは?
その場にいる人達だけですぐにAEDによる電気ショックを行えば、5割以上の命を救うことができるようなのですが、医療の素人が心室細動かどうか判断できず、AEDを誤って使うのが怖いと思う人が多いでしょう。私も子どもと医療の記事を読むまではそうでした。
しかし、AEDは心室細動かどうか自動診断して電気ショックが不要であれば教えてくれますし、間違ってショックボタンを押してもショックがかかりません。AEDは賢いのですね。
AEDには、「小児用」「成人用」がある
機種にもよりますが、電極パッドやそのスイッチに「小児用」「成人用」と記載されていることがあります。その場合、小学生であれば「成人用」を使ってください。「小児用」はあくまで小学校前の未就学児用という意味だそうです。「未就学児用」「小学生以上用」のように表示を変えてほしいと思いつつも、現状ではこの記載が残っているので、注意してください。
AEDが見つからないとき
AEDを使用する場面に遭遇したとき、そもそもAEDが見つからないと焦るはず……。実はAEDの設置場所を教えてくれる「AED N@VI」というサイトがあるそうですよ!
ご自身の行動範囲にAEDがあるかどうか、ぜひ確認してみてください。どこにAEDがあるのか、予め知っておくと安心できますよね。
小学4年生以上は救命に貢献できる
子どもは守られるものというイメージが強いかもしれませんが、小学4年生以上は救命の大きな力になるとのこと。
子どもが救命に貢献した事例が複数あります。その子ども達の判断力と行動力に頭が下がります。より多くの人が一大事に力を合わせて動けると心強いですよね。私の子どもが大きくなったら、一緒に救命法を学びたいと思います。
前回の「ステロイド」の記事に引き続き、Webサイト「子どもと医療」を立ち上げた、医療のかかり方の専門家である阿真京子さんにもお話を伺ってみました。
―かかりつけ医と合わないと思ったら、どうすればよいでしょうか?
阿真さん「まずは、これまで以上に一歩踏み込んだコミュニケーションをとるよう心がけて何度かチャレンジしてみてください。お互いの立場が異なることによる、思い違いがあるかもしれません。それでも合わないと思ったら、相性の問題と割り切って、かかりつけ医の変更を検討してみてください。人と人との問題は仕方ないことなので、変更したときは罪悪感を持たないでくださいね。皆さんには、この人の言うことなら守れるといった、信頼できる医師を見つけてほしいです」
と教えてくれました。私も医師と話していると、違和感を覚えるときがあります。かかりつけ医を変更した方がいいかなとすぐに思ってしまいますが、まずは自分からコミュニケーションを変えてみたいです。
記事監修
阿真 京子さん
「子どもと医療」プロジェクト 代表。2007年4月、保護者に向けた小児医療の知識の普及によって、小児医療の現状をより良くしたいと『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会を発足させ、2012年7月に一般社団法人知ろう小児医療守ろう子ども達の会となる。同会による講座は160回を数え、6000人以上の乳幼児の保護者へ知識の普及を行う。2018年からは企業でのセミナー、産婦人科の母親学級を実施(2020年4月末日同会解散)。東京立正短期大学 専攻科 幼児教育専攻(『医療と子育て』)非常勤講師。三児の母。
厚生労働省 上手な医療のかかり方を広めるための懇談会 構成員、厚生労働省 救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会 委員、総務省消防庁 救急業務のあり方に関する検討会 委員、東京消防庁 救急業務懇話会 委員、東京都 小児医療協議会 委員、内閣官房 薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議 委員、その他、多くの委員を歴任。
Webサイト「子どもと医療」は必要な情報がまとまっていて、イラストや文章が柔らかいので読みやすく、おすすめです。子育て中のママやパパへのエールにも思えます。
私自身、医療業界に長年携わっており、少しは医療に詳しいと自負していたのですが、目からウロコのことが多く、学びがありました。子どもと医療は切っても切れない関係です。この機会にぜひ、医療について考えてみませんか。
「子どもと医療」に関する、過去記事はこちら▼
取材・文/峯 あきら