子どもへの性教育を意識したきっかけは自身の後悔から
――なおたろーさんがお子さんの性教育が必要だと感じた理由を教えてください。
なおたろーさん:子どもの性被害などのニュースを見るたびに、「これはちゃんと話しておかないといけない」と思うようになりました。我が子が被害者になることは考えたくもないですが、加害者にも傍観者にもなってほしくない。だから親がしっかり伝えていかなくてはいけないと感じましたね。
とはいえ、自分のことを振り返ると、学生時代は生理のことを「あれ」と言って隠したり、保健の授業も「今日は避妊の話らしいよ〜」とちょっと冷やかしてしまうようなこともありました。性教育についての話は、ちゃんと聞かなきゃいけない大切なことという意識があまりなかったと思います。
だから、いざ子どもに性教育を、と考えても何をどう教えたらよいかわからず、本やネットで気になるものを調べて勉強するところからでした。

――なおたろーさん自身も、もっと早く知っておきたかったということはありますか?
なおたろーさん:私はPMDD(月経前不快気分障害)の症状があって、生理の2週間くらい前から情緒不安定だったり、不安感や焦燥感、うつ症状が続いたりするんです。そしてそこから生理が始まると生理痛や体の不調があるので、1か月の半分くらいはずっと体調が悪いという状態なんです。
でもPMDDという言葉を知ったのは、子どもが生まれた後のことで、それまで10年近くはこの症状が生理と関係あるとも思わなかったですし、生理について婦人科で相談しようという発想すらありませんでした。
あんなにつらかったのに低用量ピルを処方されてすぐに症状がよくなり、もっと早くこのことを知っていれば人生が変わっていたんじゃないかなと思いましたね。

――性教育はどんなふうに始めましたか?
なおたろーさん:はっきりと「よし! 性教育するぞ」という感じではなく、ブログに書いているようにあくまで「ゆるっと性教育」なんですが……。
例えば子どもがちょっとふざけて「お尻〜」とか言いながらお尻をたたいてきたときなどに、「それは楽しいけど、お尻はママの大事なところだから、お遊びで使っちゃいけないんだよ。君のお尻も大事だからね」というような感じで、子どもが小さいときからプライベートゾーンの大切さについて伝えていましたね。

自分の体も、お友達の体も大切だということは伝え続けていきたいと思っています。
小学生くらいになると、ふざけて体を触ったり、デリケートな話を大声でしたりという子もいるのですが、それはよくないことだし、頭の中で思っても口に出してはいけないという線引きができるようになってほしいです。そのためには、子どもが性に対して先入観を持たないうちにちゃんと伝えておくことが大切なのかなと思います。
――なるほど。自分や周りの人を大切にすることも性教育の一部なんですね。
なおたろーさん:そうだと思います。だから「自分の体はかけがえのないものだから、大切にするんだよ」と伝え続け、「どんなことでも話を聞くからね」という姿勢を見せ続けたいです。子どもがいつでも「助けて」を言えるような関係でいたいと思います。
もちろん、いつも100%子どもと向き合うというのは難しいこともありますが、子どもをないがしろにすることだけは絶対やりたくないとは思っています。
「私だったらこういうふうに教えられたかった」という気持ちを大切に
――長男のそらじろーくんは生理についても小1くらいで理解していたと書かれていましたが、この辺りはどのように伝えていましたか?
なおたろーさん:私はPMDDの治療のためにピルを飲んでいるのですが、休薬期間があり、その時期はやっぱりしんどいんです。それで、子どもにも「女の人は、おまたから血が出る期間があるんだよ。それでママはその期間になるとお薬を飲んでいるんだけど、今はお休みしているからしんどいんだ」と伝えました。

あとはナプキンを買うときに、「これはこの前にお話しした、血が出る期間のときに使うものなんだよ」と伝えたりもしましたね。生理の仕組みを教えるというよりは、まずは女の人には体調が悪くなる時期があるんだよということを伝えた感じです。
――お子さんはどのような反応でしたか?
なおたろーさん:「女の人はそういう期間があるんだ」「お腹や頭が痛くなったりして大変なんだ」ということはわかってくれましたね。男性は生理や妊娠、出産を経験することはできないけど、正しい知識があるのとないのとでは想像力はきっと違ってくると思います。
――性教育に関することは、淡々と伝えるように気をつけていると書かれていましたね。
なおたろーさん:笑ったり、ふざけたりするのがいちばんよくないかなと思っていて、できるだけお医者さんのように淡々と伝えるようにしています。そのほうが子どもも「そうなんだ」と受け止めてくれる感じがしますね。
私の両親は離婚しているのですが、小さいころ父親に「生理って何?」と聞いたときに、「大きくなったらわかるよ」と笑いながら言われてすごく嫌だったことを覚えていて……。
自分としては体の仕組みを全部知りたかったというより、もっと向き合って話してもらいたかったという気持ちが強かったんですよね。子どもだからといって軽く扱わないで、「そっか。気になるよね」「よく知ってるね」とか共感してくれるだけでもよかったし、わかることだけでも教えてほしかった。
だから「私だったらこうされたかったな」というやり方をいつも考えているような気がします。

息子から「赤ちゃんはどうやってできるの?」の問いが来たときは、「ついに来た……!」とドキドキしましたが、絵本『ぼくのはなし(童心社)』を読みながら説明しました。
親が恥ずかしがると「これは恥ずかしいことなんだ」「聞いたらいけないことなんだ」と思ってしまうかもしれないので、やはり淡々と説明したのを覚えています。私は内心ドキドキでしたが、息子は命の仕組みをすごいと感じたようで、終始うれしそうに聞いてくれました。
――兄弟で伝え方の違いはありますか?
なおたろーさん:うちは兄弟の性格が全然違うんですよね。長男は2歳くらいからとにかく質問攻めで、その問いに答えるような感じで話すことが多かったのですが、次男は全然そういうタイプではないんです。なので、こちらからクイズにしたりすることもありますし、テレビのニュースをきっかけに「これってどう思う?」とか話したりもします。
性格や成長スピード、考えていることは子どもによってそれぞれなので、その子に合ったスピードで向き合っていくのがいちばんなのかなと思います。
「パンツはお風呂場で洗っていいよ」思春期男子と性教育のバランスの取り方
――そらじろーくんが思春期に差し掛かって、何か変化はありますか?
なおたろーさん:長男は6年生なので、どこまで友達と会話したり、どういう動画を見たりしているのかはわからないのですが、節目で大事なことは話していきたいですし、何かあったらいつでも話してもらえるような雰囲気は出しておきたいですね。

最近は私が悪かったなと思ったら、「ちょっとあれはママがよくなかった。ごめんね」と謝るようにしています。子どもが大きくなるにつれ、お互いに言うことがキツくなったりということも出てくるのですが、一方的にこちらの意見を押し付けて「ママは話を聞いてくれない」と思われるのは嫌なので、こちらも素直になるように気をつけています。
お互いが言いたいことを言い合えて、理解できるような関係でいたいですね。もちろん、親に話したくないとか、隠したいとか、うざったいって思うのも成長ではあるとは思うんです。私もそうでしたから。
でも、私はつらいことを親にずっと言えなかったんですよね。だからやっぱり我が子には「助けて」って言ってもらいたいし、助けてあげたいんです。
――「パンツをお風呂場で洗っていいよ」と伝えるのもすごくいいなと思いました。

なおたろーさん:私は3姉妹で、母から「パンツはお風呂場で洗ってね」と言われていたんです。男の子なのでこれから夢精することもあると思いますし、そんなときに自分で対処できればいいかなって。もしそういうときがきたら、騒ぎ立てずにそっと見守ろうと思います。
――最後にHugKum読者にメッセージをお願いします。

なおたろーさん:性教育というと、「体のしくみ」や「性行為」を教えると考えがちですが、危険な人から心と体を守ること、自分の生まれた起源を知ること、自分が愛されている存在だと確認すること、それらすべてが性教育なのだと思います。
だから、子どもたちには「大好きだよ」「愛してるよ」「生まれてきてくれてありがとう」をたくさん伝えていきたいです。私もしくじることは多々ありますが、現在進行形で育児中なので、皆さん戦友です! 共に生き抜きましょう!
お話を伺ったのは

山口県出身。ライブドア公式ブロガー・コミックエッセイ作家。2024年に「生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞くPMS•PMDD攻略法」発売。第16回新コミックエッセイプチ大賞「うつだと思ったら生理が原因でした」受賞。

イライラ、急な落ち込み、情緒不安定でモンスターのようになっていた生理前の私。「仕方ない」と諦めていませんか?
諦めるのはまだ早い! 実はそれ「PMS」「PMDD」と呼ばれ、対策ができるんです!!
PMDDに苦しんだ経験を持つコミックエッセイ作家・なおたろーが、当時知りたかったことを産婦人科医の高橋怜奈先生に”全部”聞きます。
「PMS・PMDDの判断基準は?」「具体的な症状は?」「セルフケアはどんなことができるの?」「病院は何科に行けばよい?」「生理は病気じゃないのに病院に行っていいの?」「診察はどんなことするの?」「治療はどんな方法があるの?」「費用はいくらかかるの?」「ピルって体に悪くないの?」etc…
初歩的な質問から実用的な内容まで、自身の体験を織り交ぜながらコミックで分かりやすく説明します。
月経のある女性の約7~8割が「PMS(月経前症候群)」、PMSの中でも特に精神症状が強い「PMDD」は1.8~5.8%の方が該当すると言われている現代。
これを読めば、あなたにピッタリの攻略法が見つかります!
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取材・文/平丸真梨子