育児中に「眠れない」のはなぜ? 原因と対策4選
(以下、宮川先生談:)
1.身体は疲れているのに気が張っていて眠れない
ストレスや育児による生活の変化で自律神経のバランスが乱れると、脳が活性化して眠れなくなることがあります
●おすすめの対策
夕方から夜にかけては副交感神経が優位になるように、リラックスできる環境作りを心がけしましょう。また、自律神経を整えるために、ご自身に合ったストレスの発散方法をいくつか知っておくことも大切です。
日中の散歩やYouTube動画を見ながらのちょっとしたエクササイズといった軽めの運動や、寝る1~2時間前の入浴、お風呂上がりのストレッチ、寝る前のホットミルクやハーブティー(カモミール)、リラックス効果のあるアロマや音楽も効果的です。
これらを試してみても不眠が続く場合は、精神科を受診して一時的に睡眠薬の力を借りるのもおすすめです。育児は長距離走であり、体力が必要です。慢性的に睡眠不足が続くと心身ともに不調をきたす可能性があるため、つらいと感じた際にはぜひ早めに専門家に相談してみてください。
2.夜中や早朝に目が覚めてしまう
不眠症には、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4つのタイプがあり、夜中に目が覚めてしまうことを中途覚醒、早朝に目が覚めてしまうことを早朝覚醒といいます。
●おすすめの対策
目が覚めてしまった後、目安として30分以内に再度入眠できる場合はあまり気にしなくても大丈夫です。目が覚めた際にスマホを見てしまうと眠れなくなるため、なるべく見ないようにしましょう。
もし30分以上眠れなくなるなら、一度医療機関に相談してみましょう。
3.子どもと一緒にお昼寝をするので、夜眠れない
長時間のお昼寝は体内のリズムが崩れてしまうため、20分程度に留めることで夜に眠りやすくなります。
●おすすめの対策
原則は短時間のお昼寝が推奨されますが、お子さんが2~3時間おきに夜泣きをして夜に十分な睡眠がとれない時期は、少し長めのお昼寝で体力を回復してもよいでしょう。
また、適切な時期が来た際に「ネントレ*」などでお子さんの睡眠リズムを整えることは、ママ・パパの夜間の睡眠時間の確保につながります。
*ネントレ:ねんねトレーニングの略。子どもが一人で眠れるように練習すること。
4.夜泣きで睡眠時間が少ないのに、なぜか夜眠れない
「眠れない」「寝ないといけない」と焦る気持ちが強くなってしまうとさらに眠れなくなってしまうこともあります。
●おすすめの対策
暗いところで目をつむって横になっているだけで、ある程度、身体の疲れは取れるといわれています。ゆったりとした気持ちで目を閉じて横になってみてください。アイマスクも有効です。
育児中のママ・パパが快眠を継続するためのコツ

(宮川先生:)育児中にしっかりと睡眠を確保し、睡眠の質も高い状態を継続して、毎日を健康に過ごしたい。そう思われている方は「睡眠衛生」を整えることを意識してみてください。具体的には、次のことを実践します。
・自分に合った寝具(マットレス、枕)を使用する
・寝室の室温を冬は20度、夏は25~27度に調整する
・寝室の湿度を50~60%に保つ
・寝るときは暗くする
・入浴は寝る1~2時間前に行う
・寝る前にブルーライト(スマホ、パソコン)を見るのは避ける
・眠くなってからベッドに入る(眠くないうちから入らない)
・朝起きる時間は毎日固定する
・起床後に日光を浴びる
・適度な運動とバランスの良い食事を心がける
わかってはいても、なかなかできないこともあるでしょう。それでもできるだけ実践することを心がけることで、快眠につながりやすくなります。
また、睡眠の質を上げるためには、日頃の食生活も大切です。
入眠しやすく、睡眠の質を上げるのにおすすめの食事
(宮川先生:)眠りやすく、睡眠の質を上げるためにおすすめの食事をご紹介します。
バランスのよい食事
基本は、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂ることが大切です。
毎日一生懸命育児をしていると、お子さんのお世話を優先して、自分のことは後回しになってしまう方が多いです。しかし、バランスの偏った食事は体力や免疫力の低下につながります。しっかりと3食摂ることで1日を通して血糖値が安定し、良質な睡眠を得ることができます。

●夜間の糖質の過剰摂取・カフェインやアルコールの摂取は避ける
夕食や夜食で糖質を過剰に摂取すると、睡眠中に血糖値の乱高下が起き、睡眠の質が下がるため注意が必要です。また、夕方以降のカフェインの摂取やアルコールも睡眠に影響します。
●睡眠の質を上げる栄養素を取り入れる
タウリン、グリシン、GABA、トリプトファン、ビタミンB6、ビタミンB12などは睡眠の質を上げる可能性があるといわれています。これらは一般的な食材にも含まれる栄養素です。
・タウリン
タコやイカ、牡蠣などの魚介類に多く含まれ、深部体温を低下させるなど、睡眠を安定させる可能性があります。
・グリシン
魚の皮や牛スジや鶏の軟骨などに多く含まれ、脳や脊髄において精神を安定させる抑制性の神経伝達物質で、体温の調整や睡眠の質の向上に寄与するといわれています。
・GABA
キムチなどの発酵食品、かぼちゃやトマトなどの緑黄色野菜に多く含まれ、副交感神経を優位にする働きがあります。
・トリプトファン
納豆や味噌などの発酵食品やヨーグルトやチーズなどの乳製品、タンパク質に多く含まれます。睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となるセロトニンを作り出すのに必要です。
・ビタミンB6
かつおやマグロなどの赤身の魚やヒレ肉やささみ、バナナや赤パプリカなどに多く含まれ、セロトニンを合成します。
・ビタミンB12
魚類や貝類などに多く含まれ、睡眠を安定させる効果が期待できるといわれています。
また、サプリメントも用法を守って使用していただければ問題はありません。
[まとめ]睡眠を良くすることで育児がより楽しくなる
育児中に眠れない、睡眠の質が低い場合の対策をご紹介しました。とはいえ、忙しい育児中に、一度に完璧に行うのはむずかしいものです。一つずつ実践して、焦らず、前向きに対処しましょう。ママ・パパが健康で幸せな状態に過ごすことが、子どもにとっての幸せにつながります。
もし、対策を試してもなかなか改善しない場合には、ためらわず精神科などに相談しましょう。
こちらの記事もおすすめ
お話を伺ったのは

東京医科大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院で初期研修・後期臨床研修を修了。現在はスタートアップから一部上場企業までの産業医を務め、「働く人のメンタルヘルス」を専門とする。プライベートでは4歳の男の子ママ。
構成・文/石原亜香利