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代表に質問をしてみた
世界銀行(正式名称:国際復興開発銀行)は、貧困削減や持続的成長を目的として、途上国政府に対し融資、技術協力、政策助言を提供する国際機関。世界189カ国(2025年7月現在)が共同で運営しています。
今回、世界銀行 駐日特別代表 高見博さんにお話を伺いました。
Q:世界銀行ってそもそもどんな銀行? 日本とのかかわりは?
A:世銀には「お金を貸す」だけではなく、世界の持続可能な発展を支える役割があります
高見さん:そもそも世界銀行(以下:世銀)が設立されたのは1944年、第二次世界大戦が終結する1年前のこと。当時の名前は「国際復興開発銀行」といいました。
設立のきっかけはその名の通り、第二次世界大戦で戦災被害に遭ったフランスなどのヨーロッパの国々を立て直すためだったんです。
――戦災国への融資ということは、日本もお世話になったのでしょうか?
高見さん:もちろんです。日本は1952年、支援を受ける「借入国」の立場で世銀に加盟しました。
日本政府が世銀から借りたお金を使い、経済復興にかかわる31件の重要なプロジェクトを完成させていきました。
戦災被害が大きかった日本は、借入額・件数ともに戦災国の中でトップの数字だったんですよ。
日本が世界に誇る新幹線や高速道路も、世銀の融資を受けて完成しました

高見さん:31件のプロジェクトの中には、みなさんが一度は目や耳にしたことがあるものがたくさんあります。
たとえば東海道新幹線、名神高速や首都高速などの交通インフラ、安全な水を供給するための愛知用水、電力を供給するための黒部ダムや関西電力の火力発電所建設などですね。
これらは以前は小学校でも学習していた内容なのですが、最近は高校の政治経済の授業でしか触れられていないので、残念ながら世銀とのかかわりを知らない方も増えています。
現在でも稼働している設備もあるので、興味があればぜひ調べてみてください。
参考:日本が世界銀行から貸し出しを受けた31件のプロジェクト
Q:日本は今でも世銀からお金を借りているの? それとも出資しているの?
A:現在は借入国を「卒業」し、途上国に出資する側です。
高見さん: 日本のプロジェクトは1966年に最後の融資契約を結び、1967年、日本は借入国を「卒業」しました。
その後日本は経済発展を遂げ、今では途上国に向けて融資する側の「出資国」です。

高見さん: 1970年には私が代表を務めている東京事務所が設置されました。
現在の日本は出資国なので、資金調達のため国会に出向くこともあります。他には日本国内での広報、日本人採用支援などの活動が主な役割です。
日本の出資額はアメリカに次ぐ世界第2位
高見さん:現在の日本の出資額はアメリカに次ぐ世界第2位。今や日本は世界の持続可能な開発を支える重要なパートナーなんですよ。
――日本が出資しているものは、お金だけですか?
高見さん:いいえ、そうではないんです。「出資」というと、どうしてもお金や金額のことに注目されがちですが、出資国には途上国に対し、経験や知恵を共有するという役割もあります。
たとえば地震大国である日本には、地震に対する経験やデータやノウハウがたくさんあります。震災や洪水などの自然災害からどのように日本が復興したのか、日頃から災害に対してどんな備えをしているのか、そのような経験や知識を共有することも、途上国には大切な資産となるんですね。
そのため海外から技術者を招待し、日本の震災からの復興事例を実際に見てもらう機会なども作っています。
また特にアフリカでは稲作をしている国も多いので、時には日本の農業技術を紹介することもあるんです。
世銀には防災や教育の専門家もたくさん在籍しているんですよ。

[画像提供:https://www.worldbank.org/ja/news/video/2025/06/23/kenya-jsdf]
Q:現在の世銀の融資先はどんな国で、どんなことに使われているの?
A:主にアフリカの貧しい国々で、人々の生活を豊かにするために使われています
高見さん:現在の融資先はアフリカの国が多いです。
アフリカでは今でも6億人以上の人々が電気のない暮らしをしているんです。日本では信じられませんよね。
人口もどんどん増えているので、食料だけでなく病院・学校などの施設や先生の数も足りません。
また、日本が借入国だった頃と大きく違う点は、「デジタル支援」が必要であることです。現在は食料や電気、教育以外にも、インターネット環境は必須とも言える時代です。やはり国の発展のためにはデジタル面の整備も欠かせないんです。
ですから高い技術を持つ日本の民間企業や大学、NGOやJICAと連携して活動することもあります。
融資の用途は、戦争にかかわるもの、たとえば兵器やミサイルの製造などを除いては特に制限はないんです。そのためコロナ禍には、ワクチンを運ぶための物流網の整備に使われたこともありましたね。
これらを踏まえた上で、何を優先すべきか、どこから着手するかを含め、融資先の政府と一緒に考え、最適なプロジェクトを作っていくのも世銀の役割です。
Q:日常生活の中で、国際協力や世界を感じられるおすすめの取り組みを教えてください!
A:外国産の製品を見かけたら、自給率と原産地に思いをはせてみて
高見さん:これは実際にわが子も関心を持ったできごとですが、たとえば四方を海に囲まれた日本では、海辺に見たこともない言葉が書かれたものが打ち上げられていることもあります。それだけでも海の向こうには知らない国があること、そして海は世界につながっていることも感じられますよね。
もっと身近なことでは、スーパーに並んでいる商品も、原産地をよく見ると知らない国があるかもしれない。その国がどこにあるか調べてみるだけでも世界を感じられると思います。海外製のお菓子やチョコレートなどもたくさんスーパーにありますから、好きなお菓子の原産国を調べてみるのも楽しいと思います。

高見さん:ファッションや雑貨が好きなら、商品タグを見るのもいいですね。ファッションブランドでは多言語表示の長いタグがついていることもありますから、「これは何語だろう?」と思って見るだけでも面白いですよ。タグだけで数カ国語が一気に覚えられるチャンスでもあります。
さらに踏み込んで、なぜこの言語が選ばれたのか? 日本でも作れる製品がなぜこの国で作られているのか? と考えていくと、さまざまなことが見えてきます。
――自由研究のテーマに選んでも学びが多そうですね
高見さん:原産国から自分の元に届くまでのルートを調べてみると、素晴らしい自由研究にもなりそうですね。
海外製品の多さは日本の自給率の低さを表しているということになります。
たとえば他の国が戦争をしていると、毎日何気なく食べている物や資源が入ってこなくなるかもしれない、という気付きにもなると思います
Q:世銀ではどのぐらい日本人が働いていますか? どうしたら世銀で働けますか?
A:出資額は世界第2位、でも日本人スタッフは3%
高見さん:日本は出資額ではアメリカに次ぐ第2位、出資金額に占める割合も約7%と、世銀の中でも重要なパートナー。その割に世銀に占める日本人スタッフの割合はわずか3%程度ととても少ないんです。
――日本人スタッフが少ないのは、何か理由があるんですか?
高見さん:世銀に日本人が少ないのは、心理的なハードルが高いのも一因なのかなと思っています。
まず公用語が英語なので、読み・書きともにビジネスレベルの英語力が必要になります。さらに「銀行」ということもあり、継続して仕事をするためには、大学院を卒業して得られる修士の資格も必要です。
さらに現在の日本は借入国ではないので、国内で進行中のプロジェクトはゼロ。そのため世銀の活動を身近で目にする機会が少なく、知名度が低いのも日本人が少ない理由なのかもしれません。
とは言え、国内の高校生も日本ではなく海外の大学に進学する方も年々増えている印象です。
世界を視野に入れている高校生たちに、世銀を将来の選択肢のひとつとして考えてもらえるよう、広報にももっと力を入れていきたいと思っています。
世銀にはさまざまなバックグラウンドを持つスタッフが在籍しています。
得意なものを活かして、世界から貧困やい争いをなくすという、素晴らしいミッションに興味を持ってもらえるとうれしいですね。
世銀で働く日本人スタッフのインタビューはこちら≪
Q:世銀に関する国内のイベントがあればぜひ教えてください
A:2025年8月20日~22日、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が横浜で開催されます
高見さん:今年の8月、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が横浜で開催されます。世界銀行も共催者として、主要テーマの策定や実施に深く関わっている会議です。
期間内はアフリカ各国の首脳が横浜に集結。こんなにアフリカの国が集まる機会は滅多にありません。
興味があれば前後に開催されるイベントにぜひ参加してみてください。
外務省のTICAD9特設サイトはこちら≪
8月8日(金)にはJICA主催「SDGsこども祭り」も開催
8月8日(金)11:00−16:00、会場 JICA市ヶ谷 国際会議場
▼昨年の様子はこちら
また、今後は全国で下記のイベントも開催されます。
グローバルフェスタ(東京) 9月27日(土)~28日(日)
ワールドコラボフェスティバル(名古屋) 10月25日(土)~26日(日)
ワンワールドフェスティバル for youth (大阪) 12月21日(日) ※高校生向け
ワンワールドフェスティバル(大阪) 2026年2月7日(土)~8日(日)
お近くの会場にぜひ足を運んでみてくださいね!
お話を伺ったのは
貧困削減と持続的成長の実現に向けて、途上国政府に対し融資・技術協力・政策助言を提供する世界銀行の東京事務所で、駐日特別代表を務める。世界銀行 東京事務所の多岐にわたる活動については、オフィシャルサイトやSNSで紹介されている。
世界銀行|日本 オフィシャルサイト
世界銀行 東京事務所 公式X
世界銀行 東京事務所 公式Instagram
世界銀行 東京事務所 公式Facebook
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文・構成/kidamaiko
