イスラエルとパレスチナの対立がなくならないわけとは? 迫害された歴史と建国後の事情【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、イスラエルがパレスチナを攻撃する理由について学びます。

迫害されてきたユダヤ人のために建国したイスラエル

イスラエルがたびたび軍事行動を取る背景には、複雑な歴史的経緯と地域の地政学的緊張があります。1948年の建国以来、イスラエルは生存と安全保障をめぐる課題に直面し続け、現在の攻撃的な姿勢もその文脈で理解する必要があります。

1948年5月、イスラエルはパレスチナ地域にユダヤ人国家として建国されました。これは、19世紀末から始まったシオニズム運動(迫害を受けてきたユダヤ人に安全な故郷を提供することを目指したもの)の成果でした。しかし、この地域にはすでにパレスチナ人が住んでおり、彼らにとってユダヤ人の入植は、土地と権利の喪失を意味しました。

建国直後、周辺のアラブ諸国(エジプト、ヨルダン、シリアなど)はイスラエルを認めず、第1次中東戦争が勃発。イスラエルはこの戦争で勝利し、領土を拡大しましたが、約70万人のパレスチナ人が難民となり、「ナクバ(大惨事)」と呼ばれる悲劇が生まれました。この出来事は、今日に至るパレスチナとイスラエルの対立の原点です。

繰り返される戦争と安全保障の課題

その後もイスラエルは、1967年の第3次中東戦争や1973年の第4次中東戦争など、周辺アラブ諸国との戦争を経験しました。特に、第3次中東戦争ではイスラエルがガザ地区、ヨルダン川西岸、ゴラン高原などを占領。これらの地域の占領は国際社会で議論の的となり、パレスチナ人の抵抗運動を激化させました。

イスラエルにとって、周辺諸国やパレスチナの武装組織(例:ハマス、ヒズボラ)からの攻撃は、建国以来の生存の脅威です。特に、2000年代以降のガザ地区からのロケット攻撃やテロは、イスラエルが強硬な軍事対応を取る理由となっています。イスラエル政府は、国民の安全を守るため、予防的攻撃や報復攻撃が必要だと主張します。

国内の政治と国際社会の影響

イスラエルの攻撃的な姿勢は、国内の政治状況にも影響されています。右派政権が強い影響力を持つイスラエルでは、強硬な安全保障政策が国民の支持を集めやすい傾向があります。特に、ベンヤミン・ネタニヤフ首相のような指導者は、軍事力の行使を国の生存戦略として重視してきました。

イスラエルのマサダ国立公園

国際社会からの批判は多くあります。国連や人権団体は、ガザ地区などでの民間人の犠牲や占領政策を問題視し、イスラエルに自制を求めています。しかし、米国の支援により、イスラエルは軍事行動を継続できる立場にあり、2025年現在、ガザやレバノンでの軍事作戦は、こうした国際的な力関係の中で行われています。

パレスチナとの和平の難しさ

パレスチナとの和平交渉の試みは、1993年のオスロ合意など過去に何度かありましたが、成功には至っていません。双方の不信感、領土問題、難民の帰還権、エルサレムの地位など、解決すべき課題が山積しています。

パレスチナ側はイスラエルの占領政策を、イスラエル側はパレスチナの武装組織の攻撃を、和平の障害と見なしています。

「なぜ攻撃するのか」を知ることが和平の一歩へ

イスラエルがやり過ぎとも言えるような攻撃を続ける理由は、歴史的な生存への不安、周辺国や武装組織からの脅威、国内の政治的圧力、そして米国からの支援に集約されます。建国以来、イスラエルは「ユダヤ人の安全な故郷」を守るため、軍事力を重視してきました。しかし、この姿勢はパレスチナとの対立を深め、さらなる暴力の連鎖を生んでいます。

イスラエルとパレスチナの和平には、双方の信頼構築と国際社会の仲介が不可欠です。2025年現在、ガザやヨルダン川西岸での緊張は続いており、解決の道は遠いままです。しかし、歴史を振り返ると、対話の可能性が全くないわけではありません。イスラエルが攻撃を続ける背景を理解することは、和平への第一歩となるでしょう。

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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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