【令和の運動会】午前でサクッと終了、リレーも応援合戦もダンスも消えた?! 変わりゆく学校事情を現役教師が解説

学習雑誌『小学一年生』(小学館発行)では、最新教育事情を現役の先生が教えるコラムを連載中です。今回は、最近の運動会事情について! パパママの時代とはひと味ちがった令和の学校事情をのぞいてみてください。

普段の「学習発表」として運動会が行われるように

かつて、運動会はどの小学校でも、盛大に行われていました。先生たちは運動会に向けて、子どもたちを指導しましたし、保護者たちはわが子の活躍する姿に一喜一憂しながらビデオやカメラに収めていました。子どもの競技のほかにも、PTAによる綱引きや未就学児が参加する競技などもありましたね。

ところが学校現場では、コロナ禍を機に「省けるものは省く」といった考えが広まったことで、児童の教育に関わらないものは省く学校が増えてきました。

地域や学校によりますが、ほとんどの小学校では現在、「学習発表」を目的として運動会が行われています。子どもたちが普段、授業のなかで取り組んでいることを保護者に見てもらうのが目的です。そのため、以前は行われていた PTAや未就学児が参加する競技はなくなりつつあるのです。

さらに、子どもたちによる競技も見直されています。例えば、リレーは体育でやりますが、全学年の混合リレーは授業でやらないので、運動会でも行いません。ただ一方で、私が勤めている学校でも、全学年混合リレーをプログラムから外していたのですが、保護者からの強い要望を受け、競技として復活することになりました。確かに、リレーは親も子どもも、そして先生たちもみんなが盛り上がる競技です。

ただ、学校としては、「子どもたちが授業で取り組んでいるものを保護者に見てもらう」というスタンスは変わらないので、以前のように盛大に楽しんでもらうようなものではなくなってしまいました。

ダンスも以前のように流行している曲を踊るだけではやりませんが、そこに例えば、授業で取り組んでいる縄跳びが組み込まれたらOK。玉入れも授業ではやりませんが、子どもたちの投げる力とチームワークを保護者に見てもらう目的があるので行います。

ちなみに、私の勤める小学校では高学年でソーラン節をやりますが、もともと民舞として授業で組まれているので今後も行います。

騎馬戦や応援合戦などは無しの方向に

一方、高学年の競技として盛り上がる騎馬戦や応援合戦などは、授業枠では行わないので運動会でもやりません。

このように、競技内容を見直し、授業で行っているものに特化していった結果、午前中で終わる運動会になりました。ですから、親御さんは弁当を作る必要はないのです。

競技が減ったことで、運動会の練習時間はスリム化しています。1週間程度の練習でできることを学校側から求められるので、1週間でできることを先生たちは考えます。そこは先生の腕の見せどころ。アイデア次第なのです。

保護者からは賛否両論! 楽になった反面、物足りないという意見も

午前中で終わる運動会に、保護者からは「物足りない」とか、「子どもと一緒に弁当を食べたかった」といった声が寄せられます。ただ、学校行事の一環として文部科学省の学習指導要領に沿って行っていることなので、全国的には今後もますますこうした流れになってくると思います。

私たち教師の立場としては、保護者のみなさんに「子どもたちの学習の成果を見せるのが主旨である」ということと、「学校の発表の場であって、そもそもお祭りではない」ということをご理解いただけるようにしていくしかありません。

ただ、保護者にとっては、運動会がご自身の楽しかった思い出となって残っているでしょうから、余計に物足りなさや寂しさを感じるのかもしれませんね。

運動会を行うのは日本特有の文化

じつは、海外の学校では全員が参加する運動会はありません。学校の授業のなかから時間を割いてまで、運動会を行うのは日本くらいです。それが今のような流れになったのは、やはりコロナ禍がきっかけです。

当時は、多くの学校が行事を取りやめました。いったん無くして、それから少しずつ復活してきたところで、学校における本来の学習の意義を考えた結果、今の運動会に落ち着いた感じでしょうか。

親御さんが「早起きして作るのが大変」と言いながら作った弁当をわが子と楽しく食べる。そのような光景は、これからも減っていくのではないかと思います。寂しさもあるかと思いますが、どのような形になろうとも、子どもたちが日々頑張っている姿を見てもらうことには変わりありません。ぜひ、大きな声で応援してあげてくださいね。そして、帰宅したお子さんを「学校で頑張っているんだね」と、褒めていただけるといいですね。

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私がお答えしました

佐々木陽子先生 公立小学校教諭

低学年の担任経験が豊富で、現在は主幹教諭として教鞭をとる傍ら、先生が読む教育情報サイト『みんなの教育技術』に執筆も行う。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子どもたち各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

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イラスト/メイボランチ 構成/天辰陽子

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