世界から見ても長寿の国、日本
日本人の平均寿命が、世界の中でトップクラスということをご存じですか? 厚生労働省が発表している令和6年の簡易生命表というデータによると、女性は87.13歳、男性が81.09歳となっています。特に女性の平均寿命は40年連続で世界1位という驚異的な記録を保持しています。
日本の寿命を支える柱は、和食や高い医療技術
日本の平均寿命がなぜこんなに長いのか、少し触れておきましょう。日本の長寿を支える要因には、医療技術の進歩や国民の健康意識の高さ、そして充実した社会保障制度があります。
特に戦後、抗生物質の開発や外科手術の進化により、感染症やがんの治療成績が向上しました。また、定期健診や早期発見・早期治療を重視する医療システムも大きく貢献しています。

そして、なんと言っても和食を中心とした低脂肪で栄養価の高い食事が、肥満や心疾患のリスクを抑えているとされています。これらの要素が重なり、日本は世界一の長寿国としての地位を確立しました。
世界を見るとアジアが上位を占め、男性のみでは北欧が上位に
では、他の国々の状況はどうでしょうか。世界保健機関(WHO)の2024年版世界保健統計によると、男女合わせた平均寿命の1位は日本が84.5歳、2位はシンガポールで83.9歳、3位は韓国で83.8歳と、アジアの国々が上位を占めています。

男女別に見ると、女性の平均寿命は日本が87.14歳(厚生労働省のデータでは87.13歳)で第1位。2位のスイス(85.9歳)や3位のフランス(85.75歳)を大きく引き離しています。
一方、男性の平均寿命ではスイスが82.3歳で1位、日本は81.09歳で6位となっています。男性では、スウェーデン(81.58歳)やノルウェー(81.39歳)、オーストラリアなどが日本を上回っています。

欧米の先進国も平均寿命は長い傾向にありますが、日本やアジア諸国に比べるとやや劣ります。例えば、イタリアやスペインは全体で82歳前後、米国は78歳程度です。
米国の平均寿命が相対的に短い理由は、肥満率の高さや医療アクセスの不平等が影響していると考えられています。一方で、北欧諸国は社会福祉の充実や健康的な生活習慣により、平均寿命が長いです。特にスイスは男性の長寿で際立っており、医療の質の高さや生活環境の良さが背景にあります。
平均寿命が短い国はアフリカのレソト
対照的に、平均寿命が短い国々も存在します。WHOのデータによると、最も短いのはアフリカ南部のレソトで51.5歳です。コンゴ民主共和国も男性56.5歳、女性59.7歳と非常に低く、医療インフラの不足や貧困、感染症の蔓延が主な原因です。
世界全体でみると、平均寿命は71.4歳。男性が68.9歳、女性が74.0歳となっており、女性が男性より約5歳長生きする傾向は世界共通です。この男女差は、生物学的な要因に加え、男性の喫煙率や労働環境の違いなどが影響しているとされます。
平均寿命と健康寿命の差が大きな課題
2023年に、日本の平均寿命が3年ぶりに前年を上回った背景には、新型コロナウイルスによる死亡者数が減少し、がんや心疾患の死亡率も低下した背景がありました。
一方、老衰による死亡は増加し、これは高齢化が進む日本ならではの特徴です。実際、2023年のデータでは、65歳以上の死因の中で「老衰」が女性の20.77%、男性の8.85%を占めるなど、特に女性で顕著です。
国際比較で見ると、日本の長寿は際立っていますが、課題もあります。例えば、平均寿命と「健康寿命」の差が注目されています。
健康寿命とは、介護や支援を必要とせず自立して生活できる期間のこと。日本の健康寿命は、2023年時点で男性が72.6歳、女性が75.5歳と世界1位ですが、平均寿命との差を見ると、男性は約8.5歳、女性は約11.6歳と大きく、その間に介護や医療の負担が増えることを意味します。この差を縮めるため、国は健康増進や予防医療に力を入れています。

世界の平均寿命を見渡すと、経済力や医療制度の違いが大きく影響していることが分かります。日本の長寿は、優れた医療と健康意識の賜物ですが、今後は健康寿命の延伸がますます重要になるでしょう。
他国と比べても、日本の女性の長寿は特に際立っており、文化的・社会的な要因がその背景にあるといえます。これからも日本が長寿国のトップを走り続けるのか、注目していきたいですね。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
