ノーベル賞の基礎知識
ノーベル賞の日程を紹介する前に、社会人であれば教養として知っておきたい、ノーベル賞の基礎知識を紹介します。ノーベル賞とはどのような賞なのか、簡単に説明できるようになりましょう。
アルフレッド・ノーベルの遺言によって創設された賞
ノーベル賞は、スウェーデンの発明家であるアルフレッド・ノーベル氏の遺言に基づき、1901年に創設された賞です。人類に絶大なる貢献をもたらした個人や団体に贈られる賞で、あまたある賞の中でも最も権威のあるものとして知られています。

Wikimedia Commons(PD)
ノーベル氏の遺言には「前年に人類に最大の貢献をもたらした人々」に賞を贈ると記されているものの、実際には長年にわたる研究成果が評価対象となる場合が多いのが特徴です。受賞者には、ノーベル氏の遺産を基に作られた基金の運用益から賞金が授与されます。
アルフレッド・ノーベルとはどんな人?
アルフレッド・ノーベル氏は、「ダイナマイト」を開発した発明家として知られています。
ダイナマイトは発明当初、鉱山開発やトンネル建設などで利用されていました。しかしヨーロッパ各地で戦争が勃発すると、兵器として使用されるようになったのです。
ダイナマイトの軍事利用で巨額の富を得たノーベル氏は、やがて「死の商人」と呼ばれるようになりました。この事実にショックを受けたノーベル氏は、自身の財産を人類のために使いたいと基金を立ち上げ、人類に貢献する発見をした人に配分するとの遺言を残したと伝えられています。

ノーベル賞には6つの部門がある
ノーベル賞には、「物理学賞」「化学賞」「生理学・医学賞」「文学賞」「平和賞」「経済学賞」の6部門があります。
物理学賞は、物理学において重大な発見をした人に贈られる賞です。化学賞は、新しい物質や化学反応を発見した人に贈られます。生理学・医学賞は、病気の予防法や新たな治療法を生み出した人に贈られます。
文学賞は、理想主義的な世界観を持ち、非凡な作品を生み出した人に贈られる賞です。平和賞は、世界の平和に寄与した個人や団体に贈られます。
スウェーデン国立銀行の創立300周年を祝して設立されたのが経済学賞です。経済学賞は、経済学において優れた理論を構築した人に贈られます。
選考は約1年前から始まる
ノーベル賞の選考は、前年の9月に行われる「推薦状の発送」から始まります。各分野の専門家や過去の受賞者により、受賞候補者となる科学者たちが推薦されるのです。推薦状の締め切りは1月末です。
2月からは、推薦された候補者の絞り込みがスタートします。当初は数百人規模の候補者が推薦されますが、数段階の選考を経て最終的に数人に絞られるといわれています。10月には、最終候補者の中から多数決により受賞者が決定される流れです。
なお、どのような基準で候補者を選考しているかは、50年間公表されません。
2025年のノーベル賞の発表日程

ノーベル賞は毎年10月頃に発表されます。2025年のノーベル賞発表のスケジュールを紹介します。受賞の瞬間を見逃さないようにしっかりチェックしておきましょう。
2025年は10月6日から13日にかけて発表される
ノーベル賞の公式サイトによると、2025年のノーベル賞は下記のスケジュールで発表されるとしています。
・生理学・医学賞:10月6日
・物理学賞:10月7日
・化学賞:10月8日
・文学賞:10月9日
・平和賞:10月10日
・経済学賞:10月13日
ノーベル賞の授賞式は毎年、アルフレッド・ノーベル氏の命日である12月10日に行われます。2025年についても同様です。
出典:Prize announcement dates – NobelPrize.org
過去の日本人受賞者
日本からは数多くのノーベル賞受賞者が誕生しています。代表的な日本人受賞者を紹介します。
湯川秀樹
湯川秀樹氏は日本人初のノーベル賞受賞者として知られる物理学者です。1949年にノーベル物理学賞を受賞しています。

湯川氏は、大阪帝国大学(現大阪大学)理学部の講師ならびに助教授として研究に取り組んでいた時代に、陽子と中性子の相互作用を論じる「中間子論」を発表しました。
国内で「中間子論」が発表された翌年には、日本数学物理学会の欧文誌にも当該の論文が掲載されています。しかし、掲載当初はまったく評価されていませんでした。その後、実験で中間子の存在が証明されたことで、湯川氏が発表した論文が評価されるに至ったのです。
出典:湯川秀樹とは – 大阪大学 大学院理学研究科・理学部 湯川記念室
山中伸弥
「iPS細胞」の作製に成功した山中伸弥氏は、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
iPS細胞とは、さまざまな組織や臓器の細胞になることができる能力を持った幹細胞を指します。iPS細胞に関する研究は、難病のメカニズムの解明や新薬の開発などにつながるとされています。

山中氏は、マウスの皮膚細胞からのiPS細胞作製に成功したことを手始めに、ヒトの皮膚細胞からもiPS細胞作製に成功したことが評価され、ノーベル賞の受賞へとつながりました。
佐藤栄作
核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」を掲げた「非核三原則」を提唱した佐藤栄作元総理は、1974年に日本人で初めてノーベル平和賞を受賞しています。
しかし、佐藤元総理への平和賞授与に関しては後に批判が集まっています。非核三原則を提唱していた裏で、沖縄への核持ち込みを容認する合意文書をアメリカと結んでいたことが明らかになったためです。

琉球新報社によると、ノーベル平和賞の選考を行うノーベル委員会は、佐藤元総理のノーベル平和賞受賞に対して下記のようなコメントを残しています。
「佐藤氏を選んだのは、ノーベル賞委員会が犯した最大の誤り」
【島人の目】ノーベル平和賞 – 琉球新報デジタル
2025年のノーベル賞をチェックしよう
ノーベル賞の発表は、自然科学や社会科学などに興味があるすべての人から注目を集めるイベントです。2025年のノーベル賞は、10月6日から13日にかけて発表されます。発表当日は、ノーベル賞の公式デジタルチャンネルで生中継されるので、発表の瞬間をしっかりと見届けましょう。
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構成・文/HugKum編集部