あのトランプ大統領が「ノーベル平和賞」の可能性って本当?【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は世界の紛争解決に意欲を示すトランプ大統領の思惑について学びます。
 
[上画像:就任演説を行うトランプ大統領 Wikimedia Commons(PD)]

米国を再び偉大な国家に

トランプ政権が発足しましたが、執筆時点でトランプ関税に世界の懸念が広がっています。

トランプ大統領は中国に対する10%の追加関税を発動。カナダとメキシコへの関税25%も余談を許さない状況が続いており、それらによって世界経済がいっそう不安定化する恐れがあります。

一方、トランプ大統領は米国を再び偉大な国家にするため、関税を示唆、発動することで外国から米国向けの利益を引き出し、外国の紛争に関与しないことで、米国の安全と経済的繁栄を追求しようとします。

また、強い米国を取り戻すため、米軍を積極的に紛争地に送り込むことはしないものの、紛争を米国が仲裁して解決することで、強い米国のイメージを諸外国に印象付けようとします。

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中東やウクライナの紛争解決に意欲

トランプ大統領は中東やウクライナなど現在も続く紛争を解決することに強い意欲を示しており、今後これらの問題に積極的に関与していくことになるでしょう。

まず、中東では一昨年10月以降激しい攻撃が続いていますが、トランプ大統領が選挙に勝利した2024年11月、紛争の当事国であるイスラエルは、レバノン南部を拠点とする親イラン系の武装勢力ヒズボラとの間で停戦を発表。今年に入ると、パレスチナ・ガザ地区を拠点とするイスラム主義組織ハマスとの間でも停戦を発表し、中東での紛争が緩和されつつあります。

イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ大統領と旧友の仲であり、これらの停戦では紛争解決を目指すトランプ大統領の意向を受け入れたことが考えられます。

おそらく、トランプ大統領は適切な時期を選び、自らが中東の紛争を終わらせたと内外に強くアピールするでしょう。

2019年、ゴラン高原におけるイスラエル主権を認める宣言書に署名する一期目のトランプ大統領(中央着座)。椅子の背に手をかける男性がイスラエルのネタニヤフ首相 Wikimedia Commons(PD)

また、ウクライナ戦争も終わらせることにも意欲があり、トランプ大統領はプーチン大統領とゼレンスキー大統領を交渉のテーブルに付かせるため、プーチン大統領には「交渉に応じなければウクライナへの支援を強化する」などの条件を、ゼレンスキー大統領には「交渉に応じなければウクライナへの支援を削減する」などの条件を、それぞれに突き付けることが考えられます。

しかし、トランプ大統領が目指しているのは、ロシア軍がウクライナ領土を実効支配する現状での終戦であり、欧州諸国や日本などはこれに懐疑的なのが現状です。

トランプ大統領は内容ではなく、終戦という結果重視の政策であり、自分が大統領の在任中にウクライナ戦争を終結させ、それを自らが実現したことをアピールしたい狙いがあるはずです。

朝鮮半島の緊張も解決し、レガシーを残したい

トランプ大統領は政権1期目の時、北朝鮮の金正恩氏と3回も対面し、結果的に双方の望む結果にはならなかったものの、北朝鮮の指導者と初めて対面した米国大統領だということ強調しました。

今回も金正恩氏と対面する意欲を示していますが、トランプ大統領の脳裏には朝鮮半島をめぐる緊張を解決し、ここでも自分のレガシーを残したい狙いが見え隠れします。

以上のようなことを評価すれば、トランプ大統領がノーベル平和賞を狙っていることは十分に考えられます。

現在のところ、中東問題ではトランプ大統領が描くような結果が実現するかもしれませんが、ウクライナや北朝鮮では多くの難題が存在します。

この記事のポイント

①世界の紛争を米国が仲裁して解決することで、強い米国のイメージを印象付けるだけでなく、自身のノーベル平和賞受賞も視野に入れていると見られている

②中東の紛争に関しては、トランプ大統領就任後から緩和されつつある

③ウクライナ侵攻に関しては、ロシア軍がウクライナ領土を実効支配する現状での終戦を目指しているため、欧米諸国や日本は懐疑的

記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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