2025年はどんな1年になる?
2025年が始まりましたが、今年の世界情勢はどうなっていくのでしょうか。
ウクライナや中東では戦争が続き、台湾を巡っては軍事的緊張が続いています。トランプ政権が再び発足しましたが、トランプ大統領は現在進行形の戦争を終わらせるべく、紛争当事国に戦闘の停止を強く求めていく1年になることは間違いないでしょう。
そして、トランプ大統領はアメリカファーストのもと、諸外国から利益や譲歩を引き出すため、関税という武器を積極的に活用することが予想され、世界経済は大きく不安定化する可能性があります。ここでは「分断」という視点から今年の世界を考えてみたいと思います。
大統領選挙で色濃くなった米国内の二分化
まず、注目するべきは米国内の分断です。秋の大統領選挙ではトランプ氏が激戦7州を制して勝利し、同時に行われた連邦議会選挙でも上院下院で共和党が多数派となったことから、トランプ圧勝という言葉が先行しています。
しかし、獲得票数ではトランプ氏が約7,730万票、ハリス氏が約7,500万票と僅差で、それだけ米国内は二分化という分断が進んでいるのです。
言うまでもなく、トランプ大統領は不法移民の排除、国益優先主義などに徹している一方、バイデン前大統領は自由や民主主義、法の支配といったリベラルな価値観を基本とし、国際協調主義を重視していました。双方の支持者たちは互いに相手を認めず、トランプ大統領は認めない、バイデン政権は存在しなかったなど過激な発言も見られます。
世界全体では、民主主義陣営と権威主義陣営の分断が顕著に
そして、トランプ政権の誕生によって、世界はいっそう分断の度合いを深めています。バイデン政権の4年の間に、ウクライナや中東では激しい紛争が勃発しましたが、そこには米国や欧州、日本や韓国などの民主主義陣営(現状維持派)と中国やロシアなどによる権威主義陣営(現状打破派)の分断が顕著になりました。
ロシアがウクライナへ侵攻して以降、民主主義陣営に属する国々は一斉にロシアへの経済制裁を強化しましたが、それは「国際秩序を揺るがす国家による侵略などは許さない」「現状打破派に負けない」という姿勢の表れであり、バイデン時代に世界の分断が鮮明になったことは間違いありません。
トランプアメリカの誕生で、民主主義陣営の中も分断が…
しかし、それにさらなる分断が加わろうとしています。周知のとおり、トランプ大統領は国際協調路線を否定し、自国第一主義を突き進む方針。同盟国や友好国であっても同大統領にとっては”外国”なのです。
要は、上述の民主主義陣営と権威主義陣営という分断に照らせば、トランプアメリカの誕生によって民主主陣営の中で新たな分断が生じるようになっており、米国、民主主義陣営、権威主義陣営それぞれが1つの陣営のような様相に変化しているのです。
これは民主主義陣営の分裂とも表現できるかもしれませんが、世界を主導してきた米国の姿は今日の米国にはありません。みんなで共に世界の問題を解決していこうというような風潮は後退の一途を辿っており、自らの国益は自らで維持・強化する、そういった分裂した世界を我々は見ることになるでしょう。
この記事のポイント
①2024年のアメリカ大統領選挙によって、米国内の分断が強まった
②世界を見ると、トランプ政権の誕生によって民主主義陣営と権威主義陣営の分断がますます顕著に
③アメリカ第一主義のトランプにより、民主主義陣営の中でも分断が生まれようとしている
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
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