「ガスライティング」とは? アメリカで注目を集めた心理的虐待の一種。モラハラやDVとはどう異なる?

ガスライティングという言葉を聞いたことがある人は、少ないかもしれません。しかし、最近アメリカで注目を集めたこともあり、日本でも話題になっています。ガスライティングの意味や主な加害行為、対処法について確認していきましょう。

ガスライティングとは

「ガスライティング」という言葉は、モラハラやDVなどと並び、近年注目を集めている心理的虐待の1つです。まずは、言葉の概念や由来について確認していきましょう。

出典:ガスライティングという支配

心理的虐待の一種として知られる

ガスライティングは、心理的虐待の一種として知られます。特に、加害者が被害者に対して、「あなたは間違っている」と強く訴え、被害者に「自分は正気を失ってしまったのではないか」と思い込ませることが特徴です。

例えば、加害者は被害者の発言や行動を否定し、いかにも加害者側が正しいかのような振る舞いをします。

もともとの由来である映画・舞台が夫婦間の心理操作を題材としているため、女性が被害者として描かれることが中心です。アメリカでは、2022年にメリアム・ウェブスターの今年の言葉に選ばれ、注目を集めています。

外国映画・演劇のタイトルが由来

ガスライティングという言葉が心理的虐待を表すようになった由来は、欧米の映画・演劇です。

該当の作品は1938年にイギリスで「Gas Light」というタイトルの舞台劇として上演されています。1940年にはイギリスで映画化され、1944年にはアメリカでイングリッド・バーグマンを主演として映画化されました。

この作品内で、夫が妻を心理的に追い込む様子が描かれていたことから、「ガスライティング」は心理的虐待を意味する言葉として使われるようになりました。

ガスライティングの主な例

ガスライティングという加害行為には、具体的にどのような行動が含まれるのでしょうか? 加害者側のよくある行動と特徴を紹介します。

否定や疑念を突きつける

ガスライティングでは加害者が被害者に対して、何らかの否定や疑念を突きつける場面がよくあります。例えば、被害者の訴えに対して、明らかな事実が存在していたとしても「そんなことは自分はしていない」「言ったことはない」などと否定するのです。

また、「お前の記憶が間違っているのではないか」「考え方がおかしいのではないか」といったように、疑念を突きつけ、被害者側に「自分が間違っている」と思わせるように仕向けます。

常に否定や疑念を突きつけられることによって、被害者側は自信を喪失し、自分が間違っているのではないかと悩むようになるのです。

相手の価値を下げ論点をすり替える

ガスライティングの加害者は被害者の価値を下げ、話している内容の論点を頻繁にすり替えます。

価値下げの主な手法は、相手が信じている情報源を疑うことです。例えば、「SNSでこのような話を見た」という話題の場合、「SNSの情報を信じるのはおかしい」「その情報は明らかに間違っている」のように、情報源を根本から否定します。

また、論点のすり替えは、加害者側にとって都合が悪い証拠を、被害者が突きつけたときによく起きるものです。自分が間違っていることや、悪いことをしたという事実は無視して、被害者の性格や話し方など、無関係な部分を責め立てて反論しようとします。

ガスライティングを受けたときの対処法

ガスライティングの由来となった描写は夫婦間のものですが、実際にはさまざまな場面で被害を受ける可能性があります。もし身近な場所で心理的虐待とも取れる行為があった場合、どうすればよいのでしょうか? 主な対処法を解説します。

被害を受けている場所から離れる

ガスライティングが起きたときは、できるだけ早くその場から離れることが大切です。「自分の考えや行動はおかしいのではないか」と思い込まされてしまうと、行動が難しくなります。

職場の場合、該当の人物とはなるべく関わらないようにするのが無難です。難しい場合には、配置換えや異動を申し出るという手段もあります。恋人や夫婦の場合、一時的に距離を置くか家を出るということも考えられるでしょう。

一時的に距離を置くだけで対応が難しい場合には、最終的に退職や離婚などの手段も検討することになります。

第三者やしかるべき機関に相談する

ガスライティングの被害を受けている場合、相手のコントロール下に置かれる前に第三者に相談することが大切です。早いうちに相談することで、自分の考えが間違っていないことを再確認できます。

職場であればハラスメント対応の窓口や、労働基準監督署などが該当するでしょう。恋人や夫婦の場合、味方になってくれそうな身内や友人に相談するほか、離婚相談や暴力といった別の問題が含まれるときには弁護士への相談も有効です。

外部への相談によって、加害者側の言い分や行動が不自然であることが判明する可能性もあり、気になったときには周囲の意見を聞いてみることが大切です。

ガスライティングの類語との違い

「モラハラ」や「ドメスティックバイオレンス」はガスライティングとも関わりの深い言葉です。それぞれの特徴や、ガスライティングとの違いについて確認しましょう。

相手に嫌がらせを行う「モラハラ」

モラハラは「モラルハラスメント」の略で、精神的な嫌がらせを指します。あくまでも言動や態度で相手に精神的・肉体的な苦痛を与えることが中心で、基本的には暴力行為などは含まれません。

ガスライティングもモラハラも、心理的虐待の一種であることは同じです。ガスライティングは、相手を巧妙に支配下に置き、正気を失わせるように仕向ける点が特徴ですが、状況によってはモラハラの一種であると考えられるでしょう。

さまざまな精神的嫌がらせを表現するのであればモラハラ、特定の心理的虐待について説明するのであればガスライティングと使い分けができます。

出典:職場のいじめ・嫌がらせに関する諸外国の取組|厚生労働省

暴力行為を表す「ドメスティックバイオレンス」

ドメスティックバイオレンスは「DV」とも略され、日本では多くの場合恋人・夫婦など親密な関係にある相手からの暴力行為を表します。直接的な暴力が含まれない場合には、「精神的DV」という表現が一般的です。

ガスライティングは、ドメスティックバイオレンスのように肉体的な暴力行為を表現するわけではありませんが、精神的DVとはよく似ています。精神的DVには怒鳴りつける行為や暴言など、幅広い問題が含まれているため、ガスライティングは精神的DVの一種と考えられるでしょう。

恋人や夫婦間で何らかのDV被害を受けている場合には、「配偶者暴力相談支援センター」や「DV相談プラス」のように公的な相談窓口も用意されています。

出典:ドメスティック・バイオレンス(DV)とは | 内閣府男女共同参画局

ガスライティングの例や対処法を把握しよう

ガスライティングは欧米を発祥とした言葉で、もともとの由来は「Gas Light」というタイトルの映画・演劇です。作品内での夫の操作的な行動から、「ガスライティング」は心理的虐待を指す言葉として使われるようになりました。

モラハラやドメスティックバイオレンスとも似ていますが、特に相手の言動や考え方を否定し、まるで被害者がおかしいかのような態度を取って支配下に置くことがガスライティングです。もしガスライティングを受けていると感じる場合には、早めに外部へ相談することも検討しましょう。

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文・構成/HugKum編集部

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