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小栗旬が13年ぶりのロマンティックコメディ出演!
主人公の藤原壮亮を演じるのは『リッチマン、プアウーマン』以来、なんと13年ぶりのロマンティックコメディに出演の小栗旬。「まさか40歳を過ぎてラブロマンスをやるとは思わなかった」と本人も戸惑うほど、久しぶりのロマンスもの。最近はシリアスな作品に出演するイメージが強かったので、今回の役どころに驚きの方も多いのでは。
今回「日本にもこんなチャーミングな大人の男性がいると世界中に教えたい!」というNetflix制作陣のあふれる熱意を受け、小栗さんも「これがラブロマンス作品の出演は最後になるかもしれない」という覚悟で出演を承諾したのだそうです。
一人の主人公の設定の裏側が意外!
そしてもう一人の主人公である“匿名のショコラティエ”イ・ハナを演じるのは、韓国を代表する演技派俳優のハン・ヒョジュ。壮亮の相手役となるハナですが、実は最初は日本人設定で話が進んでいました。それを韓国の映画制作・配給会社YONG FILMのイム・スンヨン代表が、たまたま制作打ち合わせの最中に、旅行中だったヒョジュさんにTV電話をしてみたのです。そのとき完全オフの状態で電話に出たヒョジュさんの透明感と天性の明るさに、その場にいた全員が「ハナがいた!」と心をつかまれたというエピソードがあります。
そこで、日本人設定だったハナを、韓国人のキャラクターに脚本を一から書き直し、そうして生まれた奇跡のカップリングで紡がれたこの『匿名の恋人たち』。大人の甘いロマンティックコメディに仕上がっています。
大人なのにピュアなのがたまらない! 二人の特性は、やはり恋の障害となってしまうのか?
主人公は日本屈指の製菓メーカーの御曹司・藤原壮亮。華やかな表舞台の裏で、彼は「人に触れられない」という深刻な潔癖症状に苦しんでいます。友達と盛り上がってもハイタッチすらできない、好きな人ができても触れることさえできないという壮亮は、プライベートやビジネスシーンでの人間関係に極力距離を置くように生きてきました。だから彼の周囲には彼をきちんと理解している人は少なく、冷たい人だと思われていました。

一方ハナは、ル・ソベールという名のチョコレートショップのホールスタッフとして働きますが、実はル・ソベールの大人気商品を作っている“匿名のショコラティエ”だったのです。そんなハナも人と目を合わせることができないという視線恐怖症を抱えています。今までは母親とだけ目線を合わせることができましたが、その母も亡くなった今、世界中の誰とも目を合わせることができず、深い孤独の中で生きてきました。
周りの人に理解されにくい苦悩や悩みを抱えた二人が、チョコレートショップで出会い、物語がスタートします。

ストーリー
ル・ソベールの新代表に就任した藤原壮亮は、有能ではあるのに社交やスキンシップが苦手なために大事な商談で失敗をしてしまったりと、不遇な想いをこれまで多くしてきました。そんな壮亮を陰で支えるのが、顔を見られないこと、自分が匿名のショコラティエであることを仲間たちに隠し続けるという悩みを抱えつつも、卓越した技術でハイセンスなショコラを生み出すイ・ハナ。
偶然の出会いから次第に互いが気になる存在に。表面的には正反対の性格が衝突しながらも、チョコレートへの純粋な情熱と仕事を成功させようとする共通した想いが、二人の心の溝を少しずつ埋めていきます。やがて友人たちの悩みや葛藤も交差し、一つ一つの出来事が二人を成長させていく物語へと発展します。
魅力的なキャストが勢ぞろい、ストーリーや映像の美しさが観る人を引き込む
脇を固めるキャストの配役も巧みで、ここも本作の見逃せないポイントです。壮亮の友人であるバーのオーナー高田寛役に赤西仁、そして壮亮のカウンセラーを務めるアイリーン役には中村ゆりが出演し物語を支えます。

この友人たちが抱える悩みや恋の機微もストーリーに厚みを与え、ただ壮亮とハナだけではない人間ドラマとしての深みを生んでおり、そこも大いに注目したいところです。脚本はユーモアと切なさのバランスが良く、時折ふっと笑ってしまう軽やかな瞬間と、胸を締め付けられるような繊細な瞬間が交互に訪れ、心地よい視聴体験を味わうことができます。
ストーリーは全体的にゆったりしたテンポで流れていくため、ハイテンポなラブコメに慣れてしまった人にはもどかしく感じるところもあるかもしれません。しかしそのゆったりしたテンポこそが本作の美点です。一つ一つの会話、一つ一つの仕草、とろけるショコラが形となり出来上がる過程をじっくり味わうように楽しめば、観終わった後はしっとりとした余韻が残りそうです。

本作の最大の魅力は「不器用さ」を肯定する優しさと、それを彩る映像美です。ハナが目を合わせられない瞬間や、壮亮が握手をためらう描写は、単なる設定以上にキャラクターの内面を視覚的に伝える仕掛けになっているようです。エピソードごとに“チョコレートの名前”が付けられた演出や、ショコラが形作られる滑らかな映像は、観る人の五感を刺激し、一つ一つが物語の感情を後押しします。
恋愛の最初の一歩である“見つめ合うこと”、そして最終地点である親密さや好意を表す“触れ合うこと”――この二つのテーマを丁寧に掘り下げることで、誰もが抱える孤独や怖れに寄り添いながら、変わる勇気をそっと促してくれます。映像の美しさ、俳優陣の魅力、脚本の誠実さが三位一体となって、多くの視聴者の心をつかむはずです。恋に臆病になってしまった人や、恋愛を忘れてしまった人にもぜひ観てもらいたい作品です。
Netflixシリーズ「匿名の恋人たち」
Netflixにて世界独占配信中
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文・構成/HugKum編集部